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「ネコが獲物を捕らえてきた時だけ」ネコ用のドアをロックするシステムを開発した男性


世界中でペットとして愛されているイエネコは、そもそもネズミを捕まえる目的で家畜化されたことがきっかけで人間と親しい存在となりました。のんびりとしたイメージのあるネコですが、時には野生の本能を思い出して鳥や虫、ネズミなどを捕まえてくることもあります。ネコを飼っているベン・ハムさんは、ネコが夜中に捕まえた獲物を部屋に運んでくることに困り果てていたそうで、機械学習を使って「獲物を捕らえてきた時だけネコが専用のドアから部屋の中に入れないようにする」システムを開発したそうです。

Cats, Rats, A.I., Oh My! - Ben Hamm - YouTube


ステージの右端に立っている男性がハムさんです。


そして、これがハムさんの愛猫であるメトリック。


メトリックは非常に可愛らしいものの、ハムさんが住むアパートメントの周辺にネズミが出没するようになってしまったため……


野生の本能からネズミを捕まえずにはいられない、「冷酷なシリアルキラー」と化してしまったとのこと。なお、この写真でメトリックがくわえているのは、ハムさんが用意したダミーのネズミです。


シリアルキラーと化したメトリックは、およそ10日に1回の割合でネズミを捕まえて、深夜の3時に外のネコ専用通路からハムさんの部屋を訪れていました。大抵の場合、メトリックが捕まえたネズミはすでに死んでいたものの、時にはネズミが傷を負いながらもまだ死んでいないことがあるそうで、そういう時にはハムさんがネズミを安楽死させてあげる必要があったとのこと。


そんな日々に悩まされていたハムさんですが、どうにかしてこの状況を改善したいと考えるようになりました。


考えられる対策としては、メトリックにスズを付けたり首当てを付けたりしてネズミ狩りをできなくしたり、夜中は完全に締め出してしまうという策があります。


ネズミを持ち込ませないためには締め出すことが最も手っ取り早いものの、メトリックが部屋を訪れるのはネズミを捕まえた時の他に、ネコ用トイレを使いたい時もあります。そのため、完全に締め出してしまうと翌朝にうんちの始末をしなければならず面倒です。


そこでハムさんは、メトリックがネズミを捕まえてきた時だけ、選択的にドアをロックするシステムを開発したいと考えるようになったそうです。


システムの概要はこんな感じ。マイクロコンピューターボードのArduinoを使ってロック機構を操作します。


問題となったのは、どのようにしてメトリックがネズミを捕まえてきた時だけドアをロックするかという点。左がネズミを捕まえていないメトリックで、右がネズミを捕まえてきた時のメトリックです。右のシリアルキラーと化したメトリックは目が鋭い印象で、野生の本能を呼び起こされているような雰囲気があります。


ハムさんはこのプロセスに機械学習を用いることにしました。機械学習ではコンピューターに「ラマはこういう動物だ」と教え込ませて……


さまざまな動物のうちからラマを判別できるようにすることができます。これを「通常時のメトリック」と「獲物を捕まえてきたメトリック」で行うことに、ハムさんは挑戦しました。


ハムさんはAmazonでカメラを買って窓のそばに設置し、ネコ専用通路を登ってくるメトリックの姿を撮影し始めたとのこと。メトリックが通路を移動するのはわずか2秒間で、システムはその間にメトリックがネズミを捕らえたのかどうかを判別しなくてはなりません。


設置したカメラは2、3カ月で2万3000枚もの画像を撮影します。ハムさんはそれぞれの画像を「メトリックがいない」「メトリックはこちらに向かって来ていない」「メトリックがこちらに来ているがネズミをくわえていない」「メトリックがネズミをくわえてこちらに来ている」という4種類のタグ付けを行いました。全画像中、メトリックがネズミをくわえていたのは260枚だったそうです。


そしてハムさんはタグ付けされた画像を使い、3段階の機械学習モデルを訓練し始めました。


まず第1のモデルでは、「メトリックがいるかどうか」を判別できるようにして、続いて第2のモデルで「メトリックがこちらに向かってきているかどうか」を判別できるようにします。


そして最後に第3のモデルで、「メトリックがネズミをくわえているかどうか」を判別できるように訓練を行ったとのこと。


「もしもメトリックがネズミをくわえていた場合、3つのアクションが発生します」と語るハムさん。


まず第1にネコ専用通路がロックされ、第2にスマートフォンにメッセージが届きます。そして第3に、自然・環境保護団体の全米オーデュボン協会に寄付をするというもの。最後のアクションは、メトリックに捕らえられたネズミの命にハムさんなりの敬意を表している模様。


訓練した機械学習システムの運用をスタートすると、5週間で180回ほどメトリックはネズミをくわえずに通路を上ってきたそうですが、間違って締め出してしまったのはわずか1回。その一方で、ネズミを捕まえてきた場合は80%の精度でロックすることに成功したそうです。


ちなみにこれが締め出されているメトリックを、部屋の内側から撮影した画像。「何で……?」というメトリックの困惑が見てとれますが、これによってハムさんは安らかな夜を手に入れることができたと述べています。


ムービーの最後は、メトリックに対する感謝で締めくくられました。

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in ソフトウェア,   ハードウェア,   サイエンス,   生き物,   動画, Posted by log1h_ik

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