エベレストの頂上が大量の登山者で「渋滞」して死亡者が続出する事態に
by Moving Mountains Trust
世界最高峰の山であるエベレストには、年間数百人もの登山家が登頂を目指してアタックしています。しかし登山技術や装備の進化にもかかわらず、2019年の登山シーズンでは犠牲者が増加傾向にあるそうで、その理由は「大量の登山者によってエベレスト山頂が渋滞しているため」と報じられています。
Congestion on Everest leads to backlog of climbers in 'death zone' | World news | The Guardian
https://www.theguardian.com/world/2019/may/23/congestion-mount-everest-backlog-climbers-death-zone
British, Irish climbers become Everest victims
https://news.yahoo.com/deaths-british-irish-climbers-add-everest-toll-082626296.html
2019年5月22日、エベレストの登頂にチャレンジしていたアメリカ人男性のDonald Lynn Cash氏が、山頂で写真を撮影している最中に倒れ、シェルパによって山を下ろされている間に死亡しました。Cash氏は54歳で、妻と4人の子どもを残していたとのこと。
また、Cash氏の前にもAnjali Kulkarni氏とKalpana Das氏という2人の登山家が似た状況で死亡していたほか、25日にはイギリス人登山家のRobin Fisher氏が登頂後150mほど下山したところで死亡しました。これらの死は、いずれも標高8000mを超える「デス・ゾーン」と呼ばれる地点で発生している「渋滞」が、主な原因となっていると考えられています。
by Mário Simoes
エベレストにアタックする登山者はいずれも酸素の少ない状況に体を慣らすため、高地順応と呼ばれる特殊な訓練を行って血中の赤血球を増やすなどの対策を取ります。しかし、それでもデス・ゾーンの酸素量があまりにも低いために、人間はデス・ゾーンにとどまっているだけで徐々に死へと近づいてしまうそうです。
登山者もできるだけ早くデス・ゾーンを離れたいところですが、エベレストの山頂付近は天候が不安定で、登山シーズンであっても毎日アタックが可能というわけではありません。そこで、わずかな晴れ間を狙って多くの登山者がキャンプで待機し、晴れ間がのぞくと一気に大量の登山者が山頂へ向かって歩き始めます。これによって登山者の列ができ、「渋滞」が発生しているとのこと。
5月22日に登頂を成功させたインド人登山家のAnuja Vaidya氏は、登山者が渋滞しているせいで下山中に1時間ほど待たなければならなかったと述べています。「私は怖くて心配でした。非常に寒くて風も強かったのですが、みんなが長い列で並んでいたので待つしかありませんでした」と、Vaidya氏は当時の状況を語っています。Vaidya氏はケガをすることなくベースキャンプまで戻ることができましたが、ベースキャンプでは多くの人々が凍傷を負っているのを見たそうです。
by Guillaume Baviere
近年、エベレストでは登山者の増加によって山頂付近の渋滞が問題となっています。エベレストに7回も登頂し、13人の外国人登山者とともに22日もアタックしていたLam Babu Sherpa氏は、予備の酸素を運んでいない登山者にとって渋滞は致命的だと指摘。
「200人以上の登山者が列をなしている状況では、列を追い越すこともできません。私は2時間も下山まで待機しているチームを見ました」「多くの登山者は疲労して動きが遅くなっており、自分自身だけでなく周囲の人々もリスクにさらします」と、Sherpa氏は述べています。
ネパールでは4月下旬から5月末までの登山シーズン中に、登山費用1万1000ドル(約120万円)を支払った381人の登山者にエベレストの登頂許可証を発行。これに加えてシェルパが同行するため、24日までにネパール側から推定600人ほどが登頂へアタックしたそうです。また、少なくとも140人がチベット側からの登頂許可を得ているため、2018年の807人登頂という記録を塗り替える可能性もあると推定されています。
by Mário Simoes
なお、ネパール観光当局のDandu Raj Ghimire事務局長は、渋滞だけでなく悪天候を含む他の要因も登山者の死亡の原因となっていると主張。確かに今年の混雑は予想以上だったとしつつも、「ヒマラヤへの登山はそれ自体が冒険的で複雑かつ繊細なものであり、悲劇的な事故は避けられません」と述べました。
・関連記事
「金を出すほど死ににくい」、エベレスト登頂を支える経済学とは? - GIGAZINE
死傷者が多数出てもなおエベレストに登り続ける「シェルパ」というビジネスの実態 - GIGAZINE
エベレストで雪崩に遭遇したまさにその瞬間の動画がYouTubeで公開中 - GIGAZINE
標高8850mのエベレスト山頂からベースジャンプする様子をライブ中継へ - GIGAZINE
自宅で美しくも過酷なエベレスト登頂を体験できる「EVEREST VR」プレイレビュー - GIGAZINE
・関連コンテンツ
in メモ, Posted by log1h_ik
You can read the machine translated English article At the top of Everest, there will be a l….