自分の体で人体実験を行うバイオハッカーが「ライセンスを持たずに医学実験を行った」として捜査対象に
個人や小規模なグループによって生物学や生命科学の研究を行うDIYバイオ(バイオハッキング)の世界には、自分の人体を使って実験を行うバイオハッカーも存在します。著名なバイオハッカーであるJosiah Zayner氏が、必要なライセンスを持たずに医学実験を行ったことでカリフォルニア州当局の捜査対象になったと報じられています。
Genetic self-experimenting “biohacker” under investigation by health officials | Ars Technica
https://arstechnica.com/science/2019/05/biohacker-who-tried-to-alter-his-dna-probed-for-illegally-practicing-medicine/
Zayner氏は生物物理学のバックグラウンドを持つ人物で、遺伝子組み替えのキットやその他の実験器具を販売する「The Odin」という企業のCEOを務めています。ユーザーはキットや実験器具を使い、細菌や酵母、動物、そして人間の遺伝子を編集することができるとのこと。
誰よりもThe Odinの製品を使用しているのは他ならぬZayner氏自身であり、2016年にはDIY糞便移植を実行しており、その後も肌を使った遺伝子編集なども行っています。また、2017年には遺伝子改変技術のCRISPR-Cas9を用いて筋肉の発達を抑制するミオスタチンに関連する遺伝子を阻害し、自身の筋肉を成長させようと試みてDNAを注射しましたが、この実験は失敗に終わったと認めています。
2017年10月に行われたインタビューの中で、Zayner氏は人々が酔っ払うのと同じノリで遺伝子編集を行う世界が望ましいと述べていました。しかし、他のバイオハッカーたちも同様に自分自身に対して遺伝子編集を試みるようになったことを受け、2018年2月の時点でZayner氏は自身の行いを後悔していたそうです。自分が人体への遺伝子編集実験をエスカレートさせたことにより、将来的に誰かが傷つくことになると予感したZayner氏は、「正直に言えば、私は自分を責めたいです」と述べていました。
by Daniel Frank
しかしその後もZayner氏はThe Odinの製品販売を続けており、バイオハッキング界の人々だけでなくアメリカ食品医薬品局(FDA)もZayner氏に注目を向けるようになりました。FDAは人間の遺伝子操作キットに関する通知の中で、「FDAは個人が遺伝子編集を行い自分に投与可能なキットが公開されていることを認識しています。これらの製品を販売することは違法です」と述べています。
FDAによると遺伝子治療製品は生物学的製剤評価研究センター(CBER)によって規制されており、人間における遺伝子治療の臨床試験は事前に申請を行う必要があるとのこと。また、遺伝子治療製品の販売に関しても、生物製剤承認申請(BLA)が必要だそうです。
Zayner氏が住むカリフォルニア州当局も遺伝子編集キットに目を向けており、2019年5月にはZayner氏のもとに「ライセンスなしで医学実験を行った件について面会したい」という書状が届きました。
カリフォルニア州においてライセンスなしで医学実験を行うことは、最大で1万ドル(約110万円)の罰金と3年の懲役を科される可能性があるとのこと。Zayner氏はTwitterで、「私は弁護士を見つけなければなりません」とコメントしています。
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