生き物

新型コロナワクチンがオランウータンとボノボに投与される、人間以外の霊長類としては世界初


各国で人を対象にした新型コロナウイルスワクチンの接種が進められる中、アメリカのサンディエゴ動物園では3頭のオランウータンと5頭のボノボに対し、人間以外の霊長類として初めて新型コロナウイルスワクチンが投与されました。

First great apes at U.S. zoo receive COVID-19 vaccine made for animals
https://www.nationalgeographic.com/animals/article/first-great-apes-at-us-zoo-receive-coronavirus-vaccine-made-for-animals

Great apes at San Diego Zoo become first non-humans to receive COVID-19 vaccine - CBS News
https://www.cbsnews.com/news/great-apes-san-diego-zoo-receive-covid-19-vaccine/

サンディエゴ動物園では2021年1月にゴリラが新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に感染し、複数頭が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の症状を呈しました。中でも、ゴリラの群れをまとめる49歳の「ウィンストン」という個体は重度の不整脈や肺炎を発症したそうですが、モノクローナル抗体を用いた治療によって回復したとのこと。記事作成時点では、COVID-19を発症したゴリラはいずれも回復しているそうです。

ゴリラが新型コロナウイルスに感染 - GIGAZINE


世界的にはイヌネコトラミンクといった動物がSARS-CoV-2に感染することがわかっていますが、比較的人類に近いDNAを持つ大型類人猿は特にSARS-CoV-2に感染しやすいとのこと。ゴリラやオランウータン、ボノボといった大型類人猿は個体数が少ないため、COVID-19が貴重な個体群を危険にさらすことが懸念されています。

サンディエゴ動物園野生生物同盟で保護および野生生物の健康管理責任者を務めるナディーン・ランバースキー氏は、当初は動物園で飼育する類人猿にワクチンを接種させる考えは持っていなかったとのこと。しかし、実際にゴリラたちがCOVID-19を発症する様子を見て、ワクチンを投与することを決定したと説明しています。


ランバースキー氏は動物園のゴリラがCOVID-19を発症した時点で、動物用医薬品やワクチンの製造を手がけるZoetis(ゾエティス)に連絡を取りました。ゾエティスは2020年10月までにイヌやネコ向けの新型コロナウイルスワクチンを開発しており、既にイヌやネコに対して安全かつ効果的だと自信を持っていたそうです。

動物用新型コロナウイルスワクチンはイヌやネコでしか実験されていなかったものの、ランバースキー氏は「リスクに見合う価値がある」と判断して、ゾエティスから動物用の新型コロナウイルスワクチンを調達。2021年2月に4頭のオランウータンと5頭のボノボに対し、おやつで気をそらしている隙にワクチンを投与したとのこと。これら9頭は、人間以外の霊長類として初めて新型コロナウイルスワクチンを接種した個体となりました。


ランバースキー氏によると、ワクチンの接種を受けた個体に副作用などは見られておらず、今後は血液を採取して抗体が産生されたかどうかをチェックする段階に入る予定。動物園にはまだワクチンを接種していない大型類人猿もいますが、それらの個体にも近いうちにワクチンを投与するとのこと。なお、今回オランウータンやボノボに投与された新型コロナウイルスワクチンは、実際のウイルスの代わりに合成スパイクタンパク質を使用して、ウイルスへの免疫を付けさせるでした。

オランウータンたちに新型コロナウイルスワクチンを投与すると決めた時点では、類人猿にもワクチンが有効なのかどうかは不明であり、有害な免疫反応が起きない確信もありませんでした。しかしランバースキー氏は、「私たちはランダムにワクチンを入手して、それを新しい種に与えているわけではありません。ワクチン投与のリスクは何か、投与しないことのリスクは何かといった、多くの考えと研究が行われています。私たちの最重要モットーは、害を及ぼさないことです」と述べました。

動物園などでは、他の動物種のために作られたワクチンを別の動物に投与することは珍しくないとのこと。イヌやネコ向けに設計されたワクチンをライオンやトラに投与することもあるほか、人間向けに作られたインフルエンザワクチンやはしかワクチンを類人猿に投与することもあるそうです。

ゾエティスの広報担当者によると、サンディエゴ動物園以外のアメリカの動物園も、類人猿にワクチンを投与することを計画している模様。ゾエティスは2021年6月までに、さらに多くの動物用ワクチンを提供できるようになると見込んでいます。

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in サイエンス,   生き物, Posted by log1h_ik

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