ドローンが自機めがけて飛んでくるボールを瞬時に自動回避できる新技術が開発される
技術の進歩と共にめざましい進化を遂げているドローンですが、飛んでくる鳥やボールなど、高速で自機めがけて飛んでくる物体をとっさに回避することは非常に困難です。チューリッヒ大学の研究チームは、カメラによって飛んでくる物体を認識して自動で回避する技術を開発、実際にこの技術を用いたドローンによる実験ムービーを公開しています。
How Fast is Too Fast? The Role of Perception Latency in High-Speed Sense and Avoid
(PDFファイル)http://rpg.ifi.uzh.ch/docs/RAL19_Falanga.pdf
Watch an autonomous drone dodge, duck, dip, dive, and dodge a football - The Verge
https://www.theverge.com/2019/5/16/18627479/autonomous-drone-navigation-dodging-thrown-objects
実際にドローンがどんな感じでボールをよけるのか、以下のムービーを見ると一発でわかります。
Rapid, Dynamic Obstacle Avoidance with an Event-based Camera - YouTube
男性が黄色いサッカーボールをドローンに向かって……
投げます。
しかし、ヒョイッと軌道を変え、ドローンは見事にボールを回避します。
ドローンに搭載されているカメラの映像では、ドローンに向かって飛んでくるボールだけが認識されている状態。
固定したドローンに向かってボールを投げると……
ものすごい速度で迫り来るボールをしっかり認識しているのがわかります。
チューリッヒ大学の研究者であるDavide Falanga氏によると、動いている対象物をとっさに回避する機能を商業用ドローンに搭載するのはまだほとんど不可能だとのこと。例えば、以下のムービーはロシアで開かれたイベントをドローンで撮影しているものですが、参加者の1人が何を思ったのか、突如ドローンに向かって槍を投げてくる瞬間が映っています。もちろん、ドローンは槍をよけることすらできず、そのまま打ち落とされてしまいます。
Clash of epochs: Drone speared at history festival in central Russia - YouTube
このようにドローンが動いているものを自動で回避できない理由は、ドローンに搭載されているモーターの応答速度とセンサーの待ち時間などでボトルネックが引き起こされるためだと研究チームは述べています。飛んでくるボールをよけることは、人間には簡単なことですが、電子機器にとっては難度の高いスキルです。
チューリッヒ大学が実験に用いたドローンには「イベントカメラ」という、生物の網膜から発想を得たセンサーを搭載しています。普通のカメラは1秒間に30~60枚の画像を連続的に撮影しますが、イベントカメラは対象物の輝度の変化のみを捉えるので、データをより少なくすることができ、ボトルネックを解決できたというわけ。
開発途上であるイベントカメラはまだ一般的ではなく、それなりに高価でコストがかかります。そのため、イベントカメラによる自動回避機能を搭載したドローンはまだ研究室段階ですが、実現すれば飛んでくるボールや槍もドローンが自律的に回避できるようになると期待できます。Falanga氏は「いずれこのイベントカメラによる自動回避機能は、商業ドローンの標準装備として採用されるようになるでしょう」と述べました。
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