デカフェのコーヒーはどのように作られているのか？

by Burst

コーヒーに含まれるカフェインは覚醒作用や解熱鎮痛作用などを示し、目を覚ましたい時などには役立つものです。一方でカフェインの摂り過ぎは不眠や中毒の症状を引き起こすため、近年ではカフェインを摂取しないように気を付ける人も現れており、コーヒーでありながらカフェインを含まないデカフェのコーヒーが人気を集めています。コーヒーの味を保ちつつカフェインを含まないデカフェコーヒーはどのように作られているのかという秘密を、その歴史と共に科学系メディアのLive Scienceがひもといています。

How Is Decaf Coffee Made?
https://www.livescience.com/65278-how-decaf-coffee-is-made.html

カフェインがはじめて抽出されたのは1819年のことと考えられており、抽出に成功したのはドイツの化学者であるフリードリープ・フェルディナント・ルンゲでした。一説によると、ルンゲにカフェインの抽出を試みるよう勧めたのは、「ファウスト」の著者であるヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテであったともいわれています。

世界で初めて商業的に成功を収めたカフェイン除去方法は、1905年にドイツのコーヒー商であるLudwig Roselius氏が発見したものです。伝えられるところによれば、Roselius氏は運搬中に海水へつかってしまったコーヒー豆を受け取った際、そのまま捨ててしまわずに海水につかったコーヒー豆がどのように変化したのかを確かめたとのこと。

成分および味を確かめたRoselius氏は、海水につかったコーヒー豆からは通常含まれるカフェインが抜けていたものの、コーヒー自体の味は塩気を感じるだけで大きな変化がないことに気づいたそうです。そこで「コーヒーの味を保ったままカフェインだけを抜いたコーヒー豆を製造できるのではないか」と考えたRoselius氏は、当時はペンキ剥がしなどに使われていた化学物質のベンゼンを用いて、焙煎前のコーヒー豆からカフェインが除去できることを発見しました。

by Chevanon Photography

やがてRoselius氏が経営するKaffee HAGは、世界で初めてデカフェインスタントコーヒーの販売を開始し、20世紀半ばのアメリカで「Sanka」という名称で流通させました。なお、記事作成時点ではベンゼンに発がん性があると知られているため、化学溶媒を利用するデカフェメーカーはジクロロメタンなどの化学溶媒に切り替えています。

焙煎前のコーヒー豆からカフェインを除去する方法はほかにも存在します。ドイツの化学者でありマックス・プランク石炭化学研究所で研究を行っていたKurt Zosel氏は、高温度・圧力下にある超臨界状態の二酸化炭素が、さまざまな化学物質を分離するのに有用であることを発見しました。この超臨界二酸化炭素を使ってカフェインを分離する製法は広く用いられており、分離されたカフェインはエナジードリンクやソーダなどに添加されているそうです。

また、1970年代にはスイス式水抽出法というカフェイン抽出方法が商業的に使用されるようになりました。このスイス式水抽出法では焙煎前のコーヒー豆を水に浸し、コーヒー豆に含まれるクロロゲン酸、アミノ酸、スクロース、そしてカフェインなどの水溶性成分を水に溶かします。このコーヒー抽出物で飽和した水からカフェインを除去した「グリーンコーヒー豆抽出物」を、再水和処理によって再びコーヒー豆に戻すことで、コーヒー豆からカフェインだけを抜き取ることができるとのこと。

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近年ではデカフェコーヒーが人気を集めていますが、自社の工場でデカフェ処理を行っている大企業を除いて、ほとんどのメーカーはデカフェ処理を行う専門の企業と契約するか、別の企業からデカフェコーヒーを仕入れているとのこと。なお、デカフェコーヒーも完全にカフェインがゼロというわけではなく、「通常のコーヒーが1杯80～100mgのカフェインを含んでいるのに対し、デカフェコーヒーは2～15mgのカフェインを含んでいる」とアメリカ食品医薬品局(FDA)は説明しています。

by samer daboul