インタビュー

不思議な縁が紡いだラスト、「宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち」羽原信義監督&シリーズ構成・福井晴敏さんインタビュー


1978年に劇場公開されて大ヒットを博した「さらば宇宙戦艦ヤマト」、およびその後に放送されたTVシリーズ「宇宙戦艦ヤマト2」を、完全新作シリーズとして新解釈で再構築し、2017年2月から順次劇場上映が行われてきた『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』が2019年3月1日(金)から上映がスタートした第七章「新星篇」<最終章>でとうとう完結を迎えました。

プロジェクト始動から数えると足かけ3年以上にもわたる一大プロジェクトがこうして無事終わりを迎えたタイミングだからこそ聞けるであろういろいろなお話を、監督の羽原信義さんとシリーズ構成を担当した福井晴敏さんにうかがってきました。

『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』第七章「新星篇」<最終章> 劇場予告編(60秒) - YouTube


・目次
◆結末はどのようにして決まったのか?
◆「愛」をテーマに作ることで変化した人々
◆「力の論理」のぶつかり合いを描いた戦争・メカ描写

◆結末はどのようにして決まったのか?
GIGAZINE(以下、G):
第七章「新星篇」<最終章>がついに劇場上映を迎えました。最後の最後まで「さらば宇宙戦艦ヤマト」(以下、さらば)と「宇宙戦艦ヤマト2」(以下、ヤマト2)に重なるシーンがいろいろと出てきて、見ていて苦しくなる最終章でした。この第七章では、キャッチコピーとして「『さらば宇宙戦艦ヤマト』から40年 あらゆる予想を覆し、真実の“ラスト”へ」というものが使われていて、最初に見た時には「とはいえ、『さらば』か『ヤマト2』か、どちらかの形でしょう?」と思っていたら、あの「さらば」でもあり「ヤマト2」でもあり、そしてどちらでもないものとなりました。福井さんは、あの結末をどう生み出したのですか?

シリーズ構成・脚本 福井晴敏さん(以下、福井):
最初は「どうしようか」と思いましたが、古代と雪が、何もかも辛いことが全部終わって彼岸に旅立ち笑顔を浮かべている「さらば」のポスターの話が出てきたんです。あの顔で終わりたいと、そういう話が羽原さんの方からあったんです。

第一章前売券には特典として、この「さらば」のポスターの絵柄をオマージュした『2202』ポスターが付属しました。


羽原信義監督(以下、羽原):
そうでしたね。福井さんが書いた企画書の時点で『2202』の「0」は「φ」になっていて、「『さらば』でも『ヤマト2』でもないよ」ということをあらかじめ言われていたので、「知っててやっているんだな」と思うぐらいに繋がっていきました。

福井:
実は、意外とノープランでした(笑)

羽原:
きっと、これも「縁」ですね。

G:
ここで着地点をきっちりと定めて、作業を進めていったと。

福井:
あとはこの着地に向けてどうするかという航路図を描いていくだけでした。

G:
その航路が、古代からすると本当に辛いものになりました。波動砲を封印されたヤマトを受け継いで出航したけれど、結局は旅の中で撃たざるを得なくなり……。


福井:
森雪にも忘れられちゃって。

G:
もう、ひどすぎる(笑)

福井:
人が生きていく中で、誰もがどこかで経験すること以上のものは入れていないです。若いうちに持っていた情熱や、信念を曲げなければいけないというのは、程度の差こそあれ、社会に出れば2~3年で出会うことです。古代はまさに端境期で、でも立場としては我々の年齢ぐらいのことをやってみせなければいけないところに追い込まれています。青春から大人へ一気に駆け上がり、子どもの仮面を引き剥がされて。「恋人が自分のことを全部忘れてしまう」というのはそうそうない経験だとは思いますが、我々ぐらいの年になってくると、今後、親がそうなるかもしれませんし、ヤマトを見ている人の中にはすでに経験しているという人もいると思います。

G:
確かに……。

福井:
かつては「それが人間だよな、人生だよな。生きていこうよ」と、肩を組んで共に目指せるものもの、あるいは寄りかかれる道徳観、足場というのがありました。昭和が懐かしがられるのは、まさにそこだと思います。すでに過ぎ去ってしまった今、いろんなことに目をつぶった上でできている美徳じゃないかという話もありますが、頑張っていれば生活がよくなり、周りも発展していく、というのが昔はありました。ところが今の時代は、生きていくのが精一杯です。そこへ「生きていく上でこんなに辛いことがあります。耐えていってください」って言われたら、何を(よすが)に生きていけばいいのか。「そういうことを言わないのが大人である」というなら、せめてこの作品の中でだけでもぶちまけて共有して頑張ろうねというお話が作れれば、若いときの純粋な気持ちのまま死んでいった40年前の古代進に対して面目が立つのではないかと。

羽原:
「宇宙戦艦ヤマト2199」(以下、『2199』)から育ってきた、「小野大輔が演じる古代進」がまたこの『2202』にピッタリなんです。


福井:
一本気で、天然で。

羽原:
そう、真面目で、でもどうしようもないところもある、愛すべきキャラクターなんです。

◆「愛」をテーマに作ることで変化した人々
G:
本作では、福井さんが「愛」をテーマに掲げたことで方向付けができたと、実際さまざまな愛が描かれました。古代と雪のような恋人の愛はもちろん、加藤一家の家族の愛、親子の愛も出てきました。今回、この「愛」ということでいうと、「だから『愛』が必要だ」と語ったズォーダー大帝、そしてガトランティスのキャラクターが大きく影響を受けたのではないかと思います。


福井:
旧作では周辺に何もなかったですからね。ズォーダーに関しては、企画書の時点で「『もう一度やり直す』ということが人にとって最大の慈愛であると考えている人が、テレサを使ってどうにかしようとしている」と書いていました。

羽原:
ぶれなかったですね。

G:
サーベラーも、大きく様変わりしましたね。


福井:
サーベラーに関しては「イメージがない」に等しいぐらいでしたから。

羽原:
ちょこちょこは出てくるんですが、ほぼ「報告している人」でしたね。

福井:
「デスラーに対して偉そうにしている人」以上の印象がほとんどないぐらいです。

G:
「さらば」では実際、後半になると出番がなくなりますもんね。まさか、そういったキャラクターが、ここまで重要な位置を得ることになろうとは。

福井:
当時、不思議に思ったのは「なんでこの人だけ緑じゃないんだろう」って。

羽原:
そうですよね。

福井:
サーベラーだけが人間で、他がみんな人造人間だというのは、その「肌の色の違い」を生かしての発想です。

羽原:
「ヤマト2」のサーベラーは黒髪でまた印象がかなり違うんですが、サーベラーは「さらば」のイメージのキャラクター造型で、「ヤマト2」のサーベラーのイメージは桂木透子に受け継いでもらっています。


G:
両方取り込んだ形ですね。

羽原:
ガミラス人は青い肌をしているのに、序盤に登場したキャラクターはそうではなかったという点を、『2199』で「あれはガミラスに併合されたザルツ人だった」と設定に取り込んだ例がありますので……。

G:
そして、そのサーベラーが実はズォーダーとは浅からぬ縁の人間であったという大きな変更が加わっています。キャストに関して、ズォーダー大帝を演じた手塚秀彰さんは「機動戦士ガンダムUC」でジンネマン役を、サーベラーを演じた甲斐田裕子さんはマリーダ・クルス役を演じており、疑似的家族の繋がりを感じたのですが……。

福井:
偶然なんですよ。

羽原:
偶然です。

G:
最終章で、内山昂輝さん演じるミルがズォーダーの幼生体であったことも明かされたので、意味を込めたものだったのかと。


福井:
しかも、バナージだった内山くんが「それでも……!」と言われる側だという。

(一同笑)

羽原:
順番でいうと、最初に「星巡る方舟」でサーベラーが出てきたので甲斐田さんに演じてもらうことになり、その後でズォーダーを決めることになりました。音響監督の吉田さんから2名の候補者名をいただき「どうやって選ぼう……」と悩んでいたとき、手塚秀彰さんが出ているバラエティ番組を見たんです。そこで手塚さんがすごく楽しそうに大笑いしていて「この人と仕事をしたいな」と思って手塚さんを選びました。

G:
おおー、そういう経緯が。

福井:
そしてミルに関しては提案させていただきました。

羽原:
ミルには市川治さんの高い声の印象があったので、どうしようかと考えていたときに、内山くんで想像したときに今回のセリフがぴったりしっくりと来て「これだっ!」と思いました。

G:
福井さんが内山さんを推した理由というのはどういった点だったのですか?

福井:
じとっとした感情がないようなしゃべり方をしたときに「地の内山昂輝に近い声」が出ていたからですね。陰に落としたとき、ピタッとハマるだろうなと思いました。

羽原:
見事でした。

福井:
たとえば、バナージと同じようなキャラクターがいたとしたら、絶対に当てませんけれど、まったく逆なら良いかなと思いました。

G:
ミルもかなりバックグラウンドが膨らんだキャラクターですね。

羽原:
まさか最期、ああなってしまうとは。

福井:
デスラーの隣に中性的なキャラクターがいるというのは、当時の女性ファンは盛り上がったのかな?

羽原:
あのころ、女性ファンの方が多かったような印象があるんですよ。いってみれば森蘭丸ですよね。

福井:
そういうところはちょっと大事にしたいなと思いました。

G:
「さらば」のミルは、黒髪で目が大きく「可愛らしい」という印象すら受ける造型でした。

福井:
姿と、ミルの「見る」という名前そのままの役割は生かしつつ、さらなる役割をどうしようかと考えたときに、ズォーダーの幼生体であるということになりました。とはいえ、どの時点でああなるんだろうか?

(一同笑)

G:
主人公は古代ですけれど、こうしてズォーダーのことがいろいろ描かれて、ズォーダーの物語でもあったという印象を受けました。


福井:
「さらば」で、古代がズォーダーとの対決にあたって「違う!断じて違う!」と言うのは価値観のぶつかり合いです。今回、一方の古代に重いものを背負わせるからには、もう一方でズォーダーにも重いものを背負ってもらわないとドラマにはならないだろうというのがありました。ただ、「さらば」当時と今で違うのは「断じて違う!」とは言えないんです。

羽原:
そうなんですよねぇ……。

福井:
特に古代はここに至るまでに波動砲を撃っていて、「いろいろな不具合も矛盾も背負って生きていくしかない」という覚悟を決め、それを支えてくれる雪がいればなんとかなると思っていたら支えもなくなってしまったという中で、「違う!」とは言えない。もし言うなら、それは完全に刺し違える覚悟のとき、そうなったらもう帰ってこないだろうなと思います。そこは、最期までゆらぎを持たせて、自分がやれることに殉じていったと。決してヒーローではないというところが大事です。古代はもともと、解決方法は何も持っていない男です。滅び去ったガミラスを見て泣くことしかできなくて、お客さんと同じ目線に立ちお客さんと同じことを感じ、自分がやれる範囲のことを、すごい能力があるわけではなく抜群の決断力やアイデアがあるわけでもないところで、ただ真面目にやるしかないという男です。当時は、そういう男がヒーローでよかったんです。間違って、ぶつかっても「明日があるさ」と。ところが、今は間違ったりぶつかったりすると「じゃああなたは終わりね」と平気で言われてしまう世の中。当時の古代進はいま現在、我々の胸の中でとても生きづらい思いをしているわけです。だから、自分たちの中の古代進と向き合って「忘れたわけじゃないよ」と意思疎通できれば、日々生きる中でも違った風景が見えてくるんじゃないかな。

羽原:
最終章まで全て見た後で、また第一話から見直すと、また違う風景があると思います。

G:
ズォーダーの背負っていたものを感じつつ見直してみたいですね。ガトランティスのお話では、ゴーランドとノルのエピソードがちょうど折り返しの第十三話だったので印象深いです。


福井:
あのあたりで「波動砲問題」について決着をつけなければという思いがあって、「みんなで背負って、みんなで撃つ」となったわけです。でも、その結果としてこんなひどいことになったということはみんな忘れないでね、ということです。そのバランスは取らなければいけないなと考えました。

羽原:
そうですね。

福井:
やっぱりそのツケは、毎回撃つたびにこういった悲劇がヤマトに積み重なっていくのだということを覚えておいてくださいと。

羽原:
さらにこのあと、ガトランティスでは新たな赤子が生まれてみんなが笑顔になるというシーンがやってきて、追い打ちをかけるという(笑) 追い打ちに次ぐ追い打ちのシナリオで、驚きました。

G:
ズォーダーやサーベラーが生まれ変わった一方で、まったく新たなキャラクターとして生み出されたのが「キーマン」です。最後まで大活躍を見せてくれましたが、キーマンは「狙って育てた」キャラクターだったという話を耳にしました。玲との縁を持つキャラクターでしたね。


福井:
何も持たない男、影があり愛を知らないという。今回、こういうキャラクターをせっかく出すなら存在理由はしっかりしておこうと考えて、「愛を知ったがために辛い」と。

G:
うんうん。

福井:
その辛さは、生きている間に失いたくない、死ぬのが惜しいと思える何かに出会えたということだから、こんなに幸せなことはない。それは、本作の全テーマといっても過言ではありません。「世の中、こんなにも辛いことがあるけれど頑張ろうね」ということを体現するキャラクターとしてきっちり育てていきました。もうちょっと時間があれば玲との絡みもやりたかったですね。ドラマCD(法人特典としてBlu-ray&DVDに付属)でやらせてもらいましたけれど。

羽原:
だいぶ変化球でしたね(笑) 玲とキーマンの絡みで難しかったのは、当初のシナリオではもうちょっと前の段階から玲がキーマンを気にする予定だったんですが、『2199』からの流れで見ると「恋多き女」に見えてしまうんじゃないかという懸念があったんです。そこで、もうちょっとプロフェッショナルになってもらって、面には出さないけれど、プロ同士、信頼し合うところがあり惹かれていったという感じにしました。時間があれば、気持ちが触れ合うシーンはもう少しあってもよかったかなと思いました。


G:
玲がキーマンを沈みゆく戦闘機から助けるのは、いい触れ合いでした。

◆「力の論理」のぶつかり合いを描いた戦争・メカ描写
G:
本シリーズではアンドロメダの姉妹艦も多数登場し、地球艦隊は「さらば」「ヤマト2」に増して大規模な戦力を手に入れました。艦隊の大規模化は当初からの方針だったのですか?


福井:
それはもう、「時間断層」という格好のいいわけもできましたから(笑)

羽原:
「さらば」の時はアンドロメダ1隻でもびっくりしていたのに(笑) でも、同じことをしていたのでは意味がないですからね。

福井:
心というものを否定して物量だけで押してくるガトランティス、それに飲み込まれてしまう地球、という構図をきっちりやりたいなと考えました。戦後日本がこれから発展していくというのは金権主義を受け入れるということなんだと象徴するように、マンハッタンの摩天楼が乗っかった月が襲いかかってくる。「力こそ正義、従え」と。それに古代がノーを突きつけ、命がけで抵抗した。

G:
そうですね。

福井:
「さらば」はそこで終わっていますけれど、現実の我々はがっつりと併呑されて数十年です。「古き良きものが力の論理に併呑される」というのは今さらやったところでという話なので、「向こうが『力の論理』でやってきたが、こちらも対抗手段は整えているぞ」と、お互いぶつかり合った結果をガッツリやっちゃおうということになりました。絵的にもすごいことになりますし。


羽原:
やっぱり、ドカドカとワープアウトしてくるというのは燃えるじゃないですか。

G:
艦隊機動がどうこうとかそれどころではない、ワープアウトしてきた艦が正面から殴り合うという絵はまさに狙い通りの表現だったということなんですね。

福井:
そうなんです。最終的にはたぶんバカバカしくなる。あれだけのものがぶつかり合って……その中でどれだけの人が死んでいくのか、死んだ人間の生身についての実感は前半1クールで積み重ねているので、「これはダメだ」という感じをお互いに共有したところでクライマックスを迎えたいなと。

G:
とはいえ、「おおっ、アンドロメダ級が5隻同時に!?」とか、そういった喜びもあり……。

福井:
もちろんもちろん。メカの格好良さに惹かれるのはまた別腹ですから。


G:
羽原監督としては、出せてよかったメカはありますか?

羽原:
うーん……たくさんありますね。それぞれのメカの見せ方に関しては、特徴を生かすように心掛けました。そのあたりは、小林副監督からもいろいろなアイデアをいただき、うまく生かせたのではないかと思います。個人的には、死に向かってお話が壮烈になっていく中、カタルシスも必要なので、フラーケンが再び出てきたというあたりはカッコ良く、流れもうまくいけたんじゃないかと思います。

G:
フラーケンは驚きました。予告に登場した顔を見たとき「別のキャラと見間違えたかな?」と思ったぐらいです。『2199』で最後まで生き残っていたので、どうなっただろうかと思っていたら、ここで出番がやってきました。これは、羽原監督が結構推されたと聞いています。


福井:
当初それは考えていなくて、最終決戦はヤマトとガトランティスで、個と個の戦いにならないとダメだろうと思っていたんです。いざ羽原さんから言われて書き直してみたら、「奇妙な縁だな」とズォーダーが言ったことに呼応して出てくることで、むしろピッタリになりました。

G:
「縁の力」のおかげで、バーガーも再登場できてよかったです。メカのところに戻ると、本シリーズ後半ではヤマトの姉妹艦・銀河が登場しました。あの観測ドームがついた見た目や、藤堂司令長官の一人娘である藤堂早紀が艦長である点、さらに乗組員が女性ばかりである点など、異彩を放つ存在です。


福井:
当てにいってますよね。

(一同笑)

G:
プロット段階から銀河の登場は決まっていたんですか?

福井:
そうですね、プロットからありました。

羽原:
「姉妹艦と入れ替わるんじゃないか」と、そういう見え方がするぐらいの勢いでやろうと思っていました。そして、女性ばっかりというしつらえにはするけれど、存在理由はきっちりとしておこうと。

G:
「G計画」ですね。あの「滅びの方舟」がやってきたということを考えると、地球脱出というのは考えとして正しかったですね。そういえば、メカニカルデザイナーの玉盛順一朗さんからお話をうかがった際に、「波動防壁は煙突と第三艦橋を結ぶ磁力線のように放出されていて第三艦橋は強いのだ」という解釈をうかがったのですが、そういえば今回、第三艦橋が無事だったなと気付きました。

羽原:
第三艦橋に波動防壁発生装置があるということで、なくしちゃうと波動防壁が使えなくなりますからね。あえて破壊されてピンチに陥るということも考えはしたんですが……。

福井:
第三艦橋がやられると艦内の重力もなくなってしまうらしいんですよ。なので、設定上壊せなくなってしまったんです。

G:
第三艦橋といえば大破したり溶けたりするイメージだったので、玉盛さんからお話を聞いて驚きました。

福井:
壊す気満々だったんですが、そういう設定があると聞いて驚きました。

羽原:
壊したかったぁ(笑) まぁ、その代わりにイーターが思いっきりフネに突き刺さったりしましたが(笑)、あの形だったからこそ、刺さってのピンチ感が出たと思います。

福井:
やり過ぎて限度を超えると、今度はギャグになっちゃうんですよね。

G:
「出せてよかった」以上の「これを披露できてよかった」というメカや兵器はありましたか?

福井:
ドリルミサイルがたくさん出せてよかった、とか(笑)

羽原:
それもありますねえ。ほかは、なんだろうなぁ……。

福井:
やっぱり羽原さんはヤマトじゃないの?

G:
好きなキャラクターはと聞かれたら「ヤマト」と答えるという羽原監督ですもんね。

福井:
子どものころから、毎週テレビを見てはヤマトの絵を描いていた男がついに本物を動かしているわけですよ。

羽原:
そうですね、嬉しかったですね。ひょっとすると見てない角度がまだあるんじゃないかと探したり「ここから見ればカッコいいんじゃないか」とヤマトを動かしてみたり。

福井:
それは頭の中で?

羽原:
今はもうプラモがありますから、実際に動かしています。制作の点だと、最近はCGがすごくて、一昔前は爆発を3Dに合わせて描かなければいけなかったりしましたが、今はもう3Dで完結するぐらいです。作画ではできないぐらいのところまで来たので、今回、コンテで「なんとなく」だったものが3DですごいCGが上がってくるという流れがあり、3Dチェックは楽しくやらせてもらいました。

福井:
今だったら、第四話の発進シーンも、おそらく作り方は変わってますよね。


羽原:
波も3Dでやっちゃうでしょうね。最終話の波には手描きシークエンスがまったく入っていなくて、全部3Dでやってますし。

福井:
この1年2年で進歩してますよね。

G:
『2202』は足かけ3年強かけておられるとのことですが、第一話を作ったときと最終話を作ったときでそれほどまでに違いが出ましたか?

羽原:
まったく違いますね。制作スタッフにヤマト好きがいたというのも大きかったと思います。3Dスタッフにヤマト好きが入っていて、頼んでないのに、大戦艦の中身を作ってバラしてくるんです。コンテではばらけるとは描いていないけれど「爆発したら表面は吹っ飛ぶでしょう?」と(笑) そういう人たちが「次はこんなことをして驚かしてやろう」と全力で取り組んでくれたので、皆さんにも喜んでいただけるものになったのではないかと思います。

G:
では最後に……お二人は『2202』でやり残したことなどはありませんか?

羽原:
ない!もう、燃え尽きました(笑)

福井:
どんなものも「これできれいに終わったな」と思っても、確たることは言えません(笑) 言えないけれど「『さらば』のリメイク」を筆頭としたお題に関しては、100%応えたという自信はございます。

G:
お二人ともすべて出し尽くしたということで、長丁場、ありがとうございました。


「宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち」劇場上映は第3週目に突入。先着入場者プレゼントは「永倉志織」「斉藤始」複製キャラ原画と「さらば宇宙戦艦ヤマト<森雪>」設定画です。

2019年3月23日(土)・24日(日)開催のAnimeJapan 2019では、ステージイベント『愛の「宇宙戦艦ヤマト2202」アワード』が開催されることになっていて、ニコニコ生放送での中継が決定しています。

そして、シリーズ完結を記念して、新宿ピカデリーで上映最終日・2019年3月28日(木)に羽原監督と福井さんが登壇しての「最終上映日舞台挨拶」も実施されます。最後まで『2202』を楽しんでください。

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