インタビュー

ヤマトを愛する気持ちを徹底的に詰め込んだ「宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち」の羽原信義監督にインタビュー


2017年6月24日(土)から「宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち」第二章「発進篇」の劇場上映が始まります。全七章構成の本作は、映画「さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち」から副題を、テレビシリーズ「宇宙戦艦ヤマト2」から「2」を受け継ぎ作られている、2作品のリメイクともいうべき内容です。監督を務める羽原信義さんはテレビアニメ第1作の第1話からどっぷりと見ていたという「宇宙戦艦ヤマト」ど真ん中世代。その監督がこの新たな作品をどう作っているのか、いろいろな話を伺ってきました。

宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち
http://yamato2202.net/


GIGAZINE(以下、G):
いろいろなインタビューを拝見していると、羽原監督の「宇宙戦艦ヤマト」との出会いは小学5年生の時で、この時点ですでにアニメーターになろうと考えていたと答えておられました。監督をアニメの道へ引き込んだ作品は何だったのですか?

羽原信義監督(以下、羽原):
「マジンガーZ」からアニメーションというものに興味を持ち始めました。「マジンガーZ」って毎週絵が変わりますよね。それで「なんでだろ?」と思っていて、作画監督にクレジットされている方の名前が変わると絵が変わるっていうことに気づいた時に「こういう仕事があるんだ」と思いまして、それでですね。

G:
はばら研ブログ」というファンブログに2010年に羽原監督のインタビューが掲載されていて、監督にとっての「ヒロイン」とは弓さやかで、しかも芹川有吾さん演出のときが特にいいと答えられていました。「マジンガーZ」は「宇宙戦艦ヤマト」よりも2年早いので、見ていたころの羽原監督は小学3年生。その時点でアニメーターの方や演出の方の名前をしっかり見ていたというところに驚きましたが、エンドロールは毎回チェックしていたんですか?

羽原:
はい、見ていました。最初、選曲でクレジットされている人が音楽もつけているんだと思っていたんですが、毎回選曲者の名前は同じなのに芹川さんの回は昔の東映の劇場版の曲を使ってる!というのが特徴だったので「この演出さんすごいな」と思って覚えていました。

G:
なるほど、そういったところから来ていたんですね。「宇宙戦艦ヤマト」については、宇宙戦艦ヤマト2202新聞のインタビューで「『宇宙戦艦ヤマト』第二話の昔の戦艦大和の回想シーンは、アニメーターの友永和秀さんが原画を描かれておりまして、その(絵の)動きでかなりやられまして」とあるんですが、ヤマトには第一話から引き込まれていたんですか、それとも第二話のここのシーンで引き込まれたのですか?

羽原:
ヤマトは第一話を見て、最初に赤い地球から始まった時に「なんだこれ?」と衝撃が大きかったです。でも第一話は、たしか知っていてチャンネルを合わせたわけではなく、たまたま見たのではなかったかと思います。とにかく、すごくびっくりしたのは覚えてますね。第一話の時点では作画云々よりもストーリーとか見せ方とかにびっくりしました。ああいう表現は他にはなかったので、当時はすごくリアルに感じたんです。それで衝撃を受けて第二話を見たら「あっ、友永さんだ!」と思いました。

G:
製作発表会のときに、羽原監督の出身地である広島ではヤマトの放送時間が「猿の軍団」と重なっていたために、チャンネル権争いみたいになって、弟さんを説得してなんとか見というお話がありました。このとき、チャンネル権を手に入れてヤマトを見たというのは、その後、アニメーターに向かう大きな助走になったという感じでしょうか。

羽原:
影響はあるでしょうね。僕は特撮も見ていたので「猿の軍団」にも惹かれました。その前のチャールトン・ヘストンの「猿の惑星」とかも大好きでしたから、ちょっと興味はあったんです。でも、アニメがとにかく好きでしたから「やっぱり見るならヤマトだろ」って感じがありましたね。あと、うちの方では「アルプスの少女ハイジ」が同時刻ではなかったというのも良かったかもしれません。

G:
有名なライバルですね(笑) 確かにライバルが不在だったというのは大きなポイントかもしれないです。羽原監督としては「ヤマト見るぞ」ということだったわけなんですが、周囲の人たちはどうでしたか?そろそろアニメからは抜けていくような……?

羽原:
そうなんです。小学5年生のころは「いつまでテレビまんがを見てるんだ」的な社会でしたし、ましてや「東映まんがまつり」を見に行ってるとか、あんまりおおっぴらには言えないぐらいの環境でした。だから「親戚のちっちゃい子を連れて行くから」っていう名目のもとに劇場に行く、みたいな感じでしたね。

G:
もう、ほとんどヤマトを見ているような人はいない状況ですか?

羽原:
友達の中には見てる人もいたので、小さな仲間うちで「いいよね」っていう話はしていました。

G:
テレビシリーズから映画「さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち」までちょっと間が空きます。「さらば」については福井晴敏さんにも熱く語っていただきましたが、もう「みんなで見に行こうぜ」という雰囲気になっていましたか?

羽原:
「さらば」の直前ぐらいにアニメージュとかで紹介されてたりとかもしていましたし、中学生になったぐらいの時にアニメブームがなんとなく来てる感はあったので。「さらば」の前、総集編の劇場版のときには、僕の周りではみんなアニメを見てる感じではありましたね。

G:
劇場版1作目の方ですか。ということは、「さらば」はみんなで大手を振って行けるような空気に。

羽原:
そうです。「さらば」はもう、学校をあげて見に行ったんじゃないかってくらい(笑) そんな雰囲気でしたね。

G:
なるほど。羽原監督は初日に行って涙した中の1人だったとうかがいました。

羽原:
行きました行きました。もう、劇場内は嗚咽でした。ほんと、途中からすごかったですよ。

G:
他のアニメの映画に行ったときには、とても見られないような光景ですよね。

羽原:
ないですね。まず「東映まんがまつり」はそういう雰囲気じゃないですし、そのころの劇場アニメは大体再編集のものが多かったんです。そんな中、泣くのってやっぱりヤマトが初めてだったんじゃないかと思います。「タイタニック」が公開されたとき、途中からみんな泣き始めていましたよね。劇場内の雰囲気としてはあの感じに近かったかもしれません。

G:
ああー、「タイタニック」はわかりやすい。この映画「さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち」は重い結末を迎えるわけですが、わずか数カ月後に「宇宙戦艦ヤマト2」が始まります。人によっては「俺の涙は何だったんだ」という反応された方もいるというように伺ってるんですが、監督の「ヤマト2」のとらえ方はいかがでしょうか。

羽原:
最初はアニメージュで「ヤマト2」が発表されたのを知って「なんだそれ」とか言ってたと思います(笑)

G:
あのラストに泣いた人なら「なんだこれは」って言うのはもちろんだと思います。

羽原:
ラストに「ヤマトを愛して下さった皆さんさようなら、もう二度と姿を現すことはありません」と書かれていたのに「アレ?」みたいな感じでびっくりしましたね。ただ、僕はストーリーよりもどちらかというと作画マニアだったので、始まってしまえば「金田さん入ってるな」という感じで喜んで見てました。だから、逆に言えば「ヤマト2」に関しては映像で覚えていることのほうが多いですね。「このカットのこのシーンが格好いい」とか、そういう感じの記憶が多かったです。その時はもうアニメーターになるということにシフトしていたので、どんな作品を見てもストーリーはほぼ入ってこない人間でした。

G:
なるほど。作品の名前とかを聞くと「あんなカットがあったよね」みたいに思い出される感じですか?

羽原:
そうです。「あの話、あんなのだったよね」とストーリーについて言われたときは「そうだったっけ?」みたいなこともあります。シーンとしての絵は覚えてるのに(笑)

G:
「ヤマト2」は基本は「さらば」と同じお話ですが、長さが2時間30分から2クール(全26話)に伸びた分だけ新しいカットとかが増えていて、羽原監督にとっては嬉しい作品ということですね。

羽原:
そうですね(笑) あと、今考えると分かるんですけど、フィルムが35mmから16mmに変わったからのか、なんかこう、色の質感が変わったのがちょっとショックで。「さらば宇宙戦艦ヤマト」は色的にも背景的にも好きだったので、「ヤマト2」になった時に「なんか薄いな」という印象を受けたのはちょっと残念でした。あれはテレビのせいだったのか、ちょっとわからないんですけれど……。

G:
原因はわからなくても、色の質感が変わったと感じるのは、さすがずっと絵に注目して見ておられたからの感想だなと思います。「さらば」で一大センセーションを巻き起こした後の「ヤマト2」では、周りのアニメを見る環境や状況というのはいかがでしたか?

羽原:
「ヤマト2」のころにはもうアニメブームが来ていましたから、みんなアニメを見ていました。

G:
そうなると、中学以降でもアニメを見ても大丈夫というような……。

羽原:
そういう空気になっていたと思います。僕の周りは作画の話をする人しかいなかったですが(笑)、これはみんなが僕に合わせてくれていたのかもしれないです。

G:
「ヤマト2」の話でも盛り上がりましたか?

羽原:
はい、作画の話ばっかりしてました(笑)

G:
いいですね。そういう仲間がいるのは……。

羽原:
ありがたいです。

G:
その「さらば」と「ヤマト2」のリメイクみたいな形でこうやって「宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち」が作られています。福井さんが出した企画書に「愛の戦士たち」という副題が入っていたことには羽原監督も驚かれたということなのですが、企画としては、最初から「『宇宙戦艦ヤマト2199』の続編を『さらば』と『ヤマト2』のリメイクで行きましょう」ということだったのでしょうか。それとも「何らかの形で『宇宙戦艦ヤマト2199』の続きを」という話があり、その上で「さらば」と「2」のリメイクのような形でと決まったのでしょうか。

羽原:
僕のところに話があったときは「『さらば』と『ヤマト2』を混ぜた感じで、新しいものを」ということでした。「2199」の続きというのは、そのときにはもう決まっていました。

G:
「混ぜた感じで」と言われた時、「どうするんだ?」みたいな困惑とかはありませんでしたか?

羽原:
ラストをどうするかという点は、やはりすごく悩みました。でも、そこはもう福井さんの方でちゃんとプランが出来上がっていて、聞くと「それそれ!」「そっちですよね」みたいな感じで納得でした。

G:
今回、福井さんと一緒に脚本として参加されている岡秀樹さんはウルトラマンシリーズでは監督とかもされている方で、本作では羽原さんの推薦で参加されたと伺いました。これは「ヤマトをやるなら岡さんだろ」という推薦ですか?

羽原:
これはまだ福井さんが参加されるということを聞いていなかった時のことで、「誰か脚本いませんか」みたいな話がうちの社長から来たので「だったら岡さんが」という感じで推薦させて貰いました。元々、岡さんが別の実写作品で助監督をされていたとき、僕がCGシーンの絵コンテで入ったんです。すると岡さんの方から「羽原さん、マシンロボ見てました」みたいな感じで声かけてくださって意気投合しました。彼も僕もタイガーマスクについて若干マニアな感じがあったのでタイガーマスクで盛り上がり、そしてヤマトでも盛り上がり、みたいな感じです(笑)。そうこうしているうちに僕は「宇宙戦艦ヤマト 復活篇」の仕事に入って、岡さんは上映のときにも来て見てくださっていて、その後で「復活篇のあのへんよかったですね」「あそこどうなんですか?」みたいな感じでまた結構盛り上がったりしました。ヤマトについてもかなり造詣が深い方で、ヤマト好きということは存じ上げていたので、だから「脚本、誰かいませんか?」っていう話をされた時は、監督ではあるけれど脚本もお願いできるであろうということで岡さんに声をかけさせていただきました。

G:
なるほど。岡さんは実写、特撮などが中心で、おそらくアニメの仕事はこれが初というぐらいに少ないのではないかと思いますが、ヤマトなら大丈夫、任せられると太鼓判だったわけですね。

羽原:
はい。ヤマトは「魂」があれば大丈夫です……と思っています(笑)

G:
シリーズ制作に向けてのメッセージで羽原監督は「魂を込める。」と仰っていましたね(笑)

羽原:
ヤマトはやっぱりそこだと思うんです。僕は「宇宙戦艦ヤマト2199」の出渕裕総監督からバトンを受け継ぐ形ですが、各話スタッフとして参加させていただいていたので、出渕さんの緻密な演出だとか、計算だとかを近くで見てきました。何より30年来よくしていただいている仲ですので、出渕さんのご苦労も知ってるし、そういう感じを引き継いで行きたいなと思ったんですけど、やっぱり僕には出来ないところもたくさんあります。だとしたら、技術が足りない部分は魂を込めるしかないなという結論で一文にさせていただいた感じです。

G:
ヤマト直撃の羽原さん、岡さん。さらに福井さんと言えば劇場公開時に「さらば」を見られなかったというのがあって作品への思い入れが強い方ですから、みなさんが揃うと打ち合わせとかすごく大盛り上がりというか、大変なのではないかと想像するのですが。

羽原:
それはもう(笑)。なにせ福井さんのアイデアがすごくて、山のように出てくるんで「ちょっと入りません」みたいな話をしながら調整させてもらっています。フィルムを作る段階でもコンテを見てもらって「ここはもうちょっとこういうセリフにしたほうがいいんじゃないか」とかいろいろアドバイスをいただいたりしながら作っているので、僕は監督っていう立場ですけれど、今回のヤマトは特にみんなで作ってる印象がすごく強いんです。監督ということで今こうやって代表でいろいろインタビューとか受けさせてもらってますけど、本当に好きな人が集まって全員でガーッと作っているという感じです。でも、面白くなかったら僕が自分で責任を全部負うつもりで作ってます。

G:
現場は羽原さん、岡さん、さらに福井さんをはじめ、他のメインスタッフの方もやっぱりヤマトにはそれぞれ一家言ある方が結構いらっしゃる形ですか。

羽原:
本当に濃い人が多いです。副監督の小林誠さんも「俺はヤマトそんなに詳しくないから」とか言いながらめちゃめちゃ詳しいんですよ。あの人も照れ屋なんでしょうね。突き放してる風にしておきながら実は本当にヤマトが大好きですから。谷岡善王さんという美術監督やってくださってる方は若いんですけれども、実は戦艦大和が建造された呉出身なんですよ。

G:
すごい縁ですね。

羽原:
身内の方に大和建造関係だったか、そっち系の方がいらっしゃるようで、戦艦大和も宇宙戦艦ヤマトも本当に大好きだと。美術スタッフの中でも「最もヤマトに詳しい」という人ですから、非常に心強いですね。

G:
世代でいえば、決してヤマト直撃世代ではないですよね。

羽原:
若いのでそのはずなんですが、かなり詳しいですよ。第一章では総集編みたいな形でオープニングを作っていて、第二章から「完全版」という感じになるんですが、その映像はヤマトを再建している様子を描いているんです。元々、オープニングをどういう風に作ろうかと考えた時に、まだみんなが見たことのないヤマトはなんだろうと考えたら「それはやっぱり建造中のヤマトじゃないか」と。それでヤマトを作ってる熱い男たちの様子を描きたいなと考えました。

G:
これは渋い。

羽原:
名もない、キャラクターとしては誰だかわからないけども、そういう人たちが関わって作っているんだよっていうのを入れたくて、麻宮騎亜さんと相談して、絵コンテ開発の段階から二人で話し合いながら「このカットいいんじゃないか」「ここを見せようよ」といろいろ話しながら作り、結局その原画は麻宮騎亜さんに描いていただきました。色を塗ったりとかする最終的な作業は全部背景描き、ハーモニーという形を取りました。キャラクターも出てくるんですが、塗りは背景の人たちが塗ってくれて、しかも麻宮さんの普段のイラストを研究して「麻宮さんならこういう塗り方をするだろう」ということをもとに作業してくれたので、相当すごいものが出来ました。止め絵の連続ではあるんですが、見応えのあるものにできたのは、やっぱり谷岡さんのようなヤマトマニアの美術監督がいてくれたからかなと思います。これはぜひご覧いただきたいと思います。

G:
「宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち」全七章セット前売券で、麻宮騎亜さんがA3サイズイラストを担当されています。このイラストというのが、アンドロメダとヤマトのニアミスを描いたもので「第一章上映前にこんなイラストが出るなんて」と驚いたことを思い出しました。

「宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち」新特報公開、額縁付き全七章セット前売券の販売も - GIGAZINE


羽原:
出る時期が早いですよね。僕もびっくりしました(笑)。その辺は宣伝部のしてやったり感がありますね。

G:
監督もびっくりなんですかあれは。

羽原:
いやー、あれはびっくりです。でも、一番びっくりしたのはCG班の作業です。ヤマトとアンドロメダがすれ違うシーンは絵コンテでもできていて、ほぼ似たようなアングルは設定してあったんです。それは「ヤマト2」に出てきたシーンだからというのもあるんですけれど、CG班が麻宮さんのイラストに触発されて見比べながら作業をしているので、本編でもあのイラストとほぼ同じアングルで登場します。


G:
試写会でこのシーンを見たときに「完全にイラストと同じシーンが出てきた」と思ったのですが、それは同じになるように作業していたからだったんですね。

羽原:
そうなんです。さらにCGディレクターとも話したんですけど「これはもうちょっと見せたいよね」ということになって、絵コンテでは確か5秒か6秒のシーンだったと思うんですが、たぶん倍ぐらいに伸びて、ゆっくりすれ違う感じでじっくり見せるようになっております。

G:
このシーンは「さらば」には存在しない「ヤマト2」のオリジナルなのですが、これは「2202」が「さらば」単体のリメイクではなく、混ぜて作る作品だからこそできたものですね。

羽原:
いいとこ取りをさせてもらいました。

G:
このすれ違いの後の流れも、福井さんと岡さんのお仕事だと思いますが、巧みにやっておられると感じました。

羽原:
そうなんです。2199に登場した山南が再登場するんですが、彼のことを立てつつ、とても自然に書いてもらって、本当になんとか映像にできたなと思います。

G:
第一章冒頭から見ていくとリメイクということで完全に新しく作り直していくのかと思いきや、オマージュシーンがそこここに出てきていて、特に「さらば」に出てきた英雄の丘のシーンは完全再現されていますよね。地球とガミラスとの関係が変わったことで、内面には大きな変化が生じているけれど、違和感なくまとめられていますね。

羽原:
英雄の丘で、南部がアンドロメダに向かって叫ぶシーンは「さらば」にもあるんですけども、ヤマトの立ち位置と復興されたものという対比が「さらば」より深く描けた感じなので、「さらば」の「ばっかやろー」よりこちらの「バッキャロー」の方が、より絶望感と怒りが表せたんじゃないかなと思っています。

G:
「2202」ではガトランティスと一戦交えた後にこのシーンですから、より気持ちが入りますよね。第一章では早くもアンドロメダが波動砲を打つし、ガトランティスの大戦艦・カラクルム級まで出てきて、冒頭から「なんということだ」と希望と絶望を味わうことになりました(笑) 監督が「かっこいい艦隊戦を見て欲しい」ということを仰っていたので、こういった要素はもう第一章から出していくというのは、最初から決められていたのですか?

羽原:
やっぱり物量を見せてあげるのがいいのかなと考えました。「2199」の時は、わりと艦隊の並び方とかきちんとやっていて、今回どうしようかなと思ったんですけど、そこはなるべくケレン味と迫力が出るようにしました。

G:
カラクルム級が巨大な岩の中から出てきたときには、確かに巨大な岩の存在に違和感がなかったわけではないものの、「まさかそこから出てくるとは……」と圧倒されました。

羽原:
このあたりは副監督の小林誠さんがアイデアを出してくれています。

G:
この大戦艦と戦うことになるガミラス艦隊には、戦艦の前に盾を構えたような「装甲突入型ゼルグート」という艦がいます。「まさか艦が盾を持つとは」と驚きましたが、あれも小林誠さんのお仕事ですか?

羽原:
みんなで絵を見て「ええ!盾!?」「どうなっているんだ!?」とびっくりしましたよ(笑) でも、画面になるとそう言った部分がヤマトっぽいんですよね。

G:
特殊部隊が盾を構えて押していくようなイメージから考えつかれたのでしょうか……それを艦隊戦でやるなんて、どうやったら思いつくのでしょうか。

羽原:
あのシーンは最終的には空間がわりと明るいシーンになったので実現はしませんでしたが、本当は地球艦隊からパンしていくと、ガミラスマークだけが見えるという感じにできればいいなと思っていたんです。その目的もあっての盾でしたが、いろいろ調整していくうちに見ていただいた形に落ち着くことになりました。

G:
デザインでは驚かされるものがいろいろあって、テレザートを襲撃していたガトランティスの「ニードルスレイブ」も「実体のニードルを撃つんだ!刺さってる!!」と、心の中で興奮してしまいました。

羽原:
あれは酷いですよねー(笑)。もちろん小林さんのアイデアで、デザインも小林さんが担当しています。今回はガトランティスの冷徹さを表現するためにデザインされています。

G:
さきほどアンドロメダの話が出ましたが、1隻だったはずのアンドロメダの同クラス艦が4隻も同時進宙するという、あれもまた目を引きます。

羽原:
それも小林さんです。大体すごいアイデアは小林さんなんですよね。

G:
ここもまた小林さん、すごい(笑)。進宙の仕方、前は確か普通に浮かぶだけだったのに……。あれは何か、監督から小林さんに「こんな感じはどう?」と打診したりするのですか?

羽原:
僕らが考える前にどんどん出てくるので、僕はもう「ええ!すっげえ!!」と言っているだけです(笑)

G:
福井さんも泣く泣く外さなければならないぐらいに盛りだくさんのアイデアを出してくるし、小林さんもまた本編に入らないぐらいにアイデアを出してくると。

羽原:
本当にたくさんあって、いつもびっくりです。

G:
「福井さんはアイデアマンだし、小林誠は天才だ」とインタビューで仰っていた通りなんですね。小林さんは、羽原監督から見ても「あいつはすごい」と。

羽原:
びっくりすることばっかりです。元々「復活篇」で一緒に仕事をしているので、技術の高さは分かってはいたんですけど、「2202」でも驚かされることばっかりです。

G:
第三章以降でも小林さんの「そんなアイデアがあったのか」みたいなものは出てくるんですか?

羽原:
もう、山ほどありますよ!確かに、「さらば」や「ヤマト2」でやっていたことを今やればこうなるよねと納得できるものができていて、そこがすごいですね。

G:
「ヤマト2」の放送から今の技術になったらからこそ出来るようになった描写みたいなのも結構ありますか?

羽原:
あります、やっぱりCGだからこそという部分は多いです。もし手描きだったら……多分、まだ第一章の前半を作ってます(笑)。そこはCGがあってこそですね。

G:
第一章には大規模な艦隊戦がありましたからね……。

羽原:
本当にCG班には無理難題を強いているんですけど、やってくれています。コスモタイガーのバージョンKは、これからもまた若干進化していく予定ですし。

G:
バージョンKは金田伊功さんの描いたようなコスモタイガーにすべく、翼端を下げているというモデルですよね。

羽原:
そうです。「ヤマト」で見られるケレン味の部分は、どうしても作画の良さゆえというところがあります。しかし、今回はCGだからといって逃げるのではなく、CGでも出せるケレン味があるということを証明したくて、CGの人といろいろ相談しながら作りました。まだまだ、いろいろ企んでおります。

G:
ケレン味という点でいうと、戦艦も実はサイズ違いで作られてると聞きました。

羽原:
そうです。カットによってサイズが全然違うんです。むしろ、サイズどころか、縦横比すらも違っています。「ゆうなぎ」と大戦艦がすれ違うシーンなんかだと、長さを倍以上伸ばしてるんです。

G:
ええ!?

羽原:
たとえばガミラスのゼルグート級ってプラモで見ると結構デカいんですけれど、「2199」を作っていたとき「リアルサイズでやったら、画面になったときにそれほどでもなく見えるな」という悩みがあったんです。出渕さんも「あれ?もうちょっと長く見えるはずなんだけれどな?」とちらっと言われていました。それで、今回「2202」でも同じ悩みにぶつかってどうしようかと考えたとき、「よし、倍に伸ばしてしまおう」と。

G:
ずいぶん迫力があるなと思ったら、倍まで伸ばしたからこそのものだったんですね。

羽原:
倍以上のカットもあったりしますよ。アンドロメダが「ゆうなぎ」の横を通過するシーンでもちょっと伸ばしていますし。でも、見ていて気付かないものでしょう?

G:
言われてみればそうだったのかと思いますが、見た時には気付きませんでした。

羽原:
意外と映像として見てみると違和感がないものなんです。縦横比もいじった部分はありますが、見ていて気にならないようにはしているつもりです。

G:
デフォルメしている部分は多いんですか?

羽原:
もともと絵を描くときは結構嘘をついていますからね。数字の正確さより、そのカットで何が言いたいのか、何が見せたいのかを明確にしたいと演出としては思っています。実写映画でも、背の低い役者さんが実は画面の見えないところで台に乗っていたりするのと同じだと思ってください。

G:
バージョンKなんか、わざわざノーマルモデルとは別に作るわけですよね。そうすることで、あのときに見たコスモタイガーを再現する、むしろ再現せねばならぬと。魂の仕事ですね。

羽原:
そこが大事だと思うんです。CGの人も本当にノリが良くて「面白いですね」と言いながら作業してくれて、本当に助かっています。「そんなのできませんよ」って言われたらどうやって説得しようかなと思っていたんですけど(笑)、すごく助けてもらっています。今のアニメでは「サイズが正しい」とか、どうしても理屈が強い部分があるんです。たとえば立ち位置です。カットが変わっても立ち位置が正しいかどうかは、確かに大事ですけれど、そこよりも大事なことというのが結構あったりします。

G:
理屈よりも大事にしたいことがある、と。

羽原:
ライティングでも、最初はこっちから光が当たっているけれど次のカットでは逆光になる、というのも僕は構わないと思っているんです。ライティングというのは、その時、そのカットのキャラクターの気持ちをどう表現するかによって影の付き方が変わるのが正しいだろうと。「前のカットではこちらから光が当たっているんだから、次のカットでの光の当たり方がこうなのはおかしい」という風になったらアニメはもう終わりだと思っているので、先ほどお話しした、戦艦のサイズや縦横比にしても、数字だけを大事に守るのではなく、そのカットで表現すべきことをちゃんとフィルムにしていきたいなと考えています。

G:
戦艦のサイズや比率のお話がありましたが、キャラクターのアニメーションの部分でも、演出優先でいじってる部分もありますか?

羽原:
結構ありますよ。前のカットではあっちに立っていたのに、次にはここに来ているということもしょっちゅうです。「この画が撮りたいから、君はここにいてね」と(笑) ヤマトの艦橋の中でも、レイアウトがきちっと決まるように3Dで配置したりしていますけれど、森雪の席がちょっと邪魔だなと思ったら後ろに下げたり。

G:
「今ここにいられると困るな」というのがあるんですね。

羽原:
そうです。「今は画面にいないほうがいいので、ちょっとハケてもらって……」と、そういう風に嘘をつくのも大事です。第一章で、藤堂と芹沢の位置とか、つじつまだけを追っていくとめちゃくちゃですから。二人の距離が、カットによって違うんですよ。でも、それは「このカットでは芹沢は画面内にいないほうがいいな」とわざとやっていて、芹沢にどいてもらったりしています(笑) 近くにいるように見せたいときには、望遠風に狙って近くに見せるということもやっています。

G:
おおー、あのやりとりのカットでも、工夫が重ねられているんですね。

羽原:
観艦式のシーンだと、藤堂・芹沢・バレル・キーマンが4人で並んで話していますよね。芹沢がわりと広角レンズで表現されているカットで、バレルとキーマンの姿はちょっと離れて見える感じにしているんですが、実際に広角レンズで撮ったとしたらもうちょっと近くに見えるはずなんです。でも、あそこでは距離感を出したいので、嘘をついて遠くにいる感じに見せています。

G:
バレルと芹沢との心の距離感を、映像でも示しているわけですね。監督はアニメーターとしても活躍されて、メカ演出も担当されてきていますが、今回「自分もこういうのを描いてみたかったな」というところはありましたか?

羽原:
ヤマトが水中から浮上するシーンでは波の一部を描きました。あのシーンは手法を探りながら開発して行ったカットなので、まず最初にヤマト後方で立ち上がる波をエフェクト作監の橋本敬史さんに描いて頂き、その後横から滴り落ちる波をCGで行くか作画にするか検証した上で僕と小林誠さんで描き、それらの素材と美術さんが描かれた波やしぶきの素材を合成しつつ、さらにデジタル上で加筆してくれたのが3Dスペシャルエフェクトの鈴木雅也さんというように、絵描きだけでも5人以上の、動画や仕上げを含めるとたぶん10人以上の手が加わっています。

G:
やはりそのシーンにはふつふつと燃えるものがあった?

羽原:
もちろんです!浮上するシーンといえば、実は……第二章のキービジュアルで、古代と島が描かれていてヤマトが海から浮上してきている絵があるんです。それは誰も描く人がいなかったということもあるんですが、波をどうしても自分で描きたかったので、描かせてもらいました(笑)


羽原:
第一章のキービジュアルで麻宮さんが描かれた波がすごく格好良くて、見てるうちに「俺も描きてぇ」とか思ってしまって(笑)

G:
やっぱり描いてきた人間としては燃えるものがあるんですね。

羽原:
実は同じようなアングルをヤマトのファンクラブ会報誌の表紙で一度描いたんですが、ちょっとリベンジしたいなという思いがあって。

G:
発表されたビジュアル第一弾が斎藤を前面に押し出したものだったので、第二章はかなり渋いポスターになるんだなと思っていましたが、ヤマトが出てくるバージョンも用意されていたんですね。

羽原:
このあたりも福井さんのアイデアで、パッケージとしては毎回ピックアップするキャラクターがいるなと考えて、当初、第二章はこの斎藤のビジュアルだけで行く予定だったんですが、やはりヤマトが出てくるものも毎回あったほうがいいだろうということから作ることになりました。ただ、メインスタッフをこちらに割くことはできないので、キャラクターは作画監督の前田明寿さんに描いてもらい、CGもなるべく本編から使えるようにとやっています。

G:
本編はアニメーターの方々に任せている立場だということですが、アニメーターさんたちを見て「あのカット描けて羨ましい」と思ったりすることはありますか?

羽原:
それもありますが、上がりがちゃんとしていて「キタキター!!」みたいな喜びの方が大きいですね。

G:
見ていて「大変そうだな」っていう部分も……?

羽原:
それはもう、本当にみんな苦労して描いてくれてるなと思います。今回はフリー原画マンですごく上手い人も社内に何人か入ってくださっているんですが、その中でも、第二章本予告でも見られる、車椅子のサンタと子どもたちを斎藤たちが助けるシーンの原画とかがめちゃめちゃ上手いんですよ。抱えた男の子が持ってるおもちゃのヤマトが揺れてたりとか、すごく細かいところまで描かれていて、本当に何回見てても飽きないぐらいで、そういうものを見ていると、もう「ありがたい」と感じます。

G:
いいですねー。

羽原:
第一章でも、夜に英雄の丘でみんなで飲んでいる姿をパンするところがありましたが、みんながそれぞれ、いろんなことを考えながら飲んでいるというのがポーズや表情からよく分かり、モブのキャラクターたちも生きているんだということが表現されているのを見ると、本当に嬉しくなっちゃいます。

G:
「2199」で個性を持ったキャラクターたちがたくさん生まれましたから、集合シーンだと「あのキャラがあそこにいる」などと気になるようになりましたね。

羽原:
「2199」のスタッフが苦労して作り上げたキャラクターたちなんで、ホントに大事に描きたいと思っています。

G:
個性の立ったキャラクターが増えたという点もですが、「2199」ではストーリーの結末も、もとの「宇宙戦艦ヤマト」から大きく変わっていて、「さらば」や「ヤマト2」の前提だった部分が崩れていたりします。このバトンを引き継ぐのは、大変だったのではありませんか?

羽原:
「2199」は僕も2本だけですが関わらせてもらい、苦労しているのも見てきました。同時に、スタッフの頑張りがフィルムに出た作品ですから、大変は大変です。でも、ここで引き受けずに他の人が作っているのを見て「やっぱりやればよかったな」と後悔したくないという思いはありましたから、力不足かもしれませんが、最後までがんばりたいと思っています。もちろん「2202」を見てご不満を抱いておられる方もいらっしゃると思いますし、その気持ちもすごくよく分かります。

G:
これは「自分なりのヤマト」がみなさんにあるからですよね。

羽原:
それはやっぱりあると思います。その部分も受け入れつつ、自分なりに「2202」を作っていきたいと思います。

G:
「2202」も「2199」と同じく全七章立て構成です。羽原監督は以前、アミノテツロ総監督・羽原信義監督という体制で「ブレイク ブレイド」全六章の劇場公開にも挑まれていますが、こういう複数章立ての劇場シリーズで、テレビアニメと比べてやりやすかったり、逆にやりやすかったりする部分はありますか?

羽原:
そうですね……スケジュールで考えると、テレビシリーズとしては時間がたっぷりある方なんですが、劇場版として考えると時間がすごく少ないんですよ。

G:
なるほど、どちらにも当てはまらない存在なんですか。

羽原:
テレビシリーズとして考えれば、このやり方はすごく潤沢に作らせていただけているので、みっちり細かいところまで作るんですけれど、劇場作品として見るとちょっとしんどいなと。「ブレイク ブレイド」の場合は全六章立てで、ちょうど1年間で約1時間の作品を6本作ったんですが、これは2時間の映画を年に3本作っているともいえるんです。

G:
その数字を出されると、とんでもないことだなとわかりますね……。

羽原:
スター・ウォーズ3部作を1年で作るというと大げさですが、結構しんどいですよね(笑) 「2202」は「2199」よりも短い時間で作っていますので、やはり大変は大変です。ゼロからというお話だったら難しかったところですが、キャラクターはちゃんとできているし、メカも揃っているおかげで、あとは付け足すことでどんどん新しいものを作れるのでなんとかなっています。

G:
残された資産で助かっているわけですね。

羽原:
それでも、厳しい中でみんなギリギリまで手を入れてくれています。「これでいいんじゃないか、OK」というところまでいっても「ヤマトだし、もうちょっと直すか」というのは、「2199」からの伝統が引き継がれていると思います。

G:
アニメーターさんは締切前に完成しても「あとちょっと、締切までもうちょっと修正したい」と言うケースがあると聞きますが、ヤマトでもわりとギリギリまでこだわっておられる?

羽原:
やってますやってます。フィルムになっても「ごめん、ちょっと表情を直させて」というのがありますから。アフレコに絵が間に合っていないのは大変心苦しいところではあるのですが、みなさんすごく達者で助かっています。アフレコ現場も本当にみなさん上手くてすごいですよ。第二章では、加藤の嫁の真琴ちゃんが加藤に「行ってこい、ヤマトのところへ」と送り出すシーンがあるんですが、アフレコのときにセリフを録り終わった真琴役の佐藤利奈さんが、席に着くときに涙を拭っている様子を見かけたんです。それぐらい気持ちが入った芝居で、僕も声を聞いているだけで泣きそうになりました。

G:
アフレコ現場に、まさに加藤と真琴がいるという感じですね。

羽原:
あのセリフも、シナリオからコンテ、さらにアフレコ前までに二転三転して、福井さんと「こうしたい」「でもこういう感じ」と話し合って熟考して、最終的にあの形に落ち着きました。

G:
何度か話の中で出ている英雄の丘のシーンのように、「さらば」や「ヤマト2」を踏襲したシーンがある一方で、完全オリジナルのシーンも多数出てきます。真琴も「2199」で生まれたキャラクターですから、その周辺は当然オリジナルということで、どう作り上げていくのか、より難しいのではないでしょうか。

羽原:
誰も見たことのない関わり合いシーンですからね。でも、今回の全体のテーマにきちんと乗っているシーンでもあるので、余計にすごく気を遣って作っています。

G:
最初の企画書の段階から福井さんが「愛だ」と仰っていましたから、古代と雪が結婚前という関係の中で、子どものいる加藤の家庭があるというのは、テーマにすごく馴染みますね。

羽原:
来るべき未来の姿もあると思うので。いろんな家族が出せるっていうのもヤマトの懐の深さかなと思います。

G:
その真琴のシーンも含まれる第二章が6月24日劇場上映です。作っていて「これはうまくいった」というシーンはありますか?

羽原:
第二章に関しては、僕の中ではもうやりきった感があり、どこも文句はないです。どこも好きです。

G:
どこか1つではなく、全部だと。

羽原:
第一章もそうなのですが、自分が監督として関わったものについて「次にもし同じことをやったら違う感じにはなるだろうな」「次やる時はもうちょっとこうしたいな」というのはどの作品にもあります。ただ、できあがったものに関して言えば、すべてのカットが人の手で作られていて、そこには人の想いが入っているので、「嫌いなカット」というのは1カットも無いです。そして、今まで作った作品すべて、それぞれの想いが入っていますので、全部に愛着がありますね。

G:
第二章を劇場へ送り出すにあたって「ここは苦戦したが成し遂げた、是非見てくれ」というところはありますか?

羽原:
先ほどもお話ししたように、ヤマト発進のところは発進に至るまでのシークエンスを含め、今できることは全部やりました。「これ以上のものは僕からはもう出てきません」というのが発進の一連のシークエンスです。

海面に浮上し発進するヤマトの姿は本予告で見ることができます。

『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』第二章 発進篇 本予告60秒ver. - YouTube


G:
「さらば」の流れも引き継ぎつつも全体がさらにグレードアップ、パワーアップしてる感じの発進でした。

羽原:
ありがとうございます。ヤマトが大好きで、その気持ちが入ったかなと思います。本当はヤマトが出てくる時に「さらば」に合わせて一瞬セルが戻るのをやろうかなとも思ったんですが、さすがにやってもしょうがないのでやっていません。そのぐらい、ヤマトマニアという感じでやっています。

G:
個人的には、本予告を見て「あっ、ニアミスシーンが入っている」と驚きました。麻宮さんがイラストにしていたので、あるだろうとは思っていましたが「映画館でのお楽しみ」になるのかと思っていました。

羽原:
予告編からサービスしまくりです。

バンダイビジュアル担当者:
これでもちょっと隠してるぐらいで、削ったカットも多々あるんです。

羽原:
やりたいことてんこ盛りで入っています。あと、第二章では新キャラのキーマンもいい感じですよ。

G:
キーマン、名前がストレートすぎて冗談かと思いました。本当にキーマンの立ち位置のキャラクターがキーマンだとは。

羽原:
本読み会議で、全員が「やっぱりキーマンだよね」「そうだよね」って思って作ってました(笑)

バンダイビジュアル担当者:
そのキーマン役の神谷浩史さんが仰っていたんですが、第二章本予告の「衝撃に備え!」の2人同時発声シーン、普通は別々に録って重ねることが多いようなのに今回は同時に録ったというのは本当ですか?

羽原:
同時に録っています。あれは音圧の勝負ですから、2人でやってもらうのが一番いいんじゃないかなと。

バンダイビジュアル担当者:
生の演技の相乗効果というのもありますか?

羽原:
あると思います。普通は別録りにするんですが、音響監督さんの采配で、お互いの一瞬の真剣勝負ということになりました。

バンダイビジュアル担当者:
江原正士さんと小野大輔さんの戦いで、キャリアがまず違いますし、古代は役柄としても新米艦長だから小野さんが負けがちなんですが、同時録りにすることで逃げ場がなくなって、負けじとすごく頑張ってやっていたっていうのが印象的だったということを神谷さんが仰っていました。

G:
作画班もすごく熱いし、アフレコ現場も盛り上がってるわけですね。

羽原:
そうです。テスト、ラステス、本番という順番で録るんですが、テストはそれぞれの組み上げてきた演技プランで演じて、ラステスになると他の方の演技を踏まえた上でご自身の演技が変わってくるんですよね。まさに「かけあい」です。そこで会話が噛み合ってくる感じは、上手い人の揃っている現場ではたびたびあります。すさまじい現場です。

G:
その技の応酬から生み出されたものを、ぜひ劇場で見てもらいたいですね。本日は長い時間、ありがとうございました。

ヤマトジャケットとヤマトメイングラフィックTシャツに身を包んだ羽原監督


「第二章 発進篇」の先着入場者プレゼントは複製キャラ原画&設定線画。1週目(6月24日~)はキーマン・山南・ドレッドノート、2週目は森雪・ズォーダー・コスモタイガーⅠ。


監督のこだわりが反映されたオープニングも含む本編冒頭10分がYouTubeで公開されているので、ぜひチェックしてみて下さい。

『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』第二章 発進篇 本編冒頭10分 - YouTube

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in インタビュー,   動画,   映画,   アニメ, Posted by logc_nt

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