「ボーイング737 MAX 8」で5カ月の間に2度発生した墜落事故の類似点
by Gusti Fikri Izzudin Noor
2019年3月10日(日)、エチオピアの首都・アディスアベバ近郊にあるボレ国際空港から離陸したエチオピア航空302便が墜落し、乗員・乗客合わせて157人全員が死亡する事故が起きました。この便で用いられていた「ボーイング737 MAX 8」は、2018年10月にインドネシアで発生したライオン・エア610便墜落事故でも運用されていました。わずか5カ月の間に発生した2つの事故には、運航機材が同じであったという点も含めていくつか類似点があるということを、旅行ニュースサイト・The Points Guyが取り上げています。
Striking Similarities Between Lion Air and Ethiopian Crashes
https://thepointsguy.com/news/similarities-lion-air-ethiopian-737-max-crashes/
・運航機材が同じ
何より目立つのは、2つの事故が同じ「ボーイング737 MAX 8」で運航されていたという点です。
この機材は、ボーイングが製造している「ボーイング737」シリーズの第4世代機「ボーイング737 MAX」ファミリーに属しています。ファミリーには、MAX 8より小型のMAX 7、MAX 8の座席数を200に増やしたMAX 200、MAX 8より大型のMAX 9とMAX 10があります。
「ボーイング737 MAX」は、2010年12月にライバルであるエアバスがA320neoを発表して好評だったのを受け、2011年8月に開発計画が始動。2018年までに4000機以上の受注があり、2017年から引き渡されて運航されています。2019年1月までに引き渡された機体数は350。
2011年から運用されているボーイング787はその倍以上の機数が引き渡し済みで、バッテリー問題をはじめとした機材トラブルが幾度も発生している一方で墜落事故は起きていません。
by Jetstar Airways
・事故が離陸時に起きている
そもそも航空業界で「魔の11分間」「離陸3分、着陸8分」と呼ばれるほどに航空事故は離陸時・着陸時に集中しているので、これは珍しい一致ではありませんが、2つの事故はいずれも離陸時に発生していました。
ライオン・エア610便は離陸から13分で墜落、エチオピア航空302便の場合は離陸から6分でレーダーから消失しています。
・離陸時の上昇に不具合があった可能性
ライオン・エアの事故は、ブラックボックスの解析により、離陸からの13分間で機首下げ動作が24回以上行われていたことがわかっています。この動作は「ストール(失速)防止システム」によるものであるとみられ、オートパイロットではない手動操縦時にもシステムは作動するようにできていたとのこと。おそらく、仰角センサーの不具合か何かで、離陸時の正常な上昇を「危険」なものだと誤認してシステムが作動。その度にパイロットが機首上げを行ってはシステムが再度作動し、という繰り返しになっていたと考えられます。この事故後の調査で、ボーイング737 MAX 8の乗務員用マニュアルに、ストール防止システムのことが記載されていなかったことが指摘されています。
このストール防止システムがエチオピア航空の事故に影響を与えたかどうかはまだ不明ですが、当該便のフライト記録から、離陸後の高度上昇がうまくいっていなかったことがわかっていて、2つの事故はともに「離陸時の上昇になんらかの不具合が起きた」可能性が見られます。
Additional data from Flightradar24 ADS-B network show that vertical speed was unstable after take off.
— Flightradar24 (@flightradar24) 2019年3月10日
Take off 05:38:18 UTC
Last position received by FR24 at 05:41:02 UTC
Please note that Addis Ababa airport is located at 7,625 feet AMSL. pic.twitter.com/Uyvfp1x9Xb
・1日の最初のフライト
事故原因との関連はともかく、ライオン・エア610便は午前6時20分離陸、エチオピア航空302便は午前8時38分離陸で、いずれも当該機体を用いた当日最初のフライトでした。
ただ、その前の状況は両機で違いがあり、ライオン・エア機はジャカルタで一泊した後だったのに対し、エチオピア航空機はヨハネスブルグからのフライトで事故の2~3時間前に到着したところでした。
・天候は無関係
機体への落雷や着雪が事故原因となることもありますが、ライオン・エア610便の事故遭遇時の天候は晴天で風は弱く視界良好、エチオピア航空302便の事故遭遇時も雲は点在する程度で視界良好であったことがわかっています。
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