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「ボーイング737 MAX 8」のパイロットはiPadで訓練を受けただけだったと判明、「これはソフトウェアのエラーではない」という指摘も

by Seba Borsero

航空機のパイロットは実際の操縦の前にシミュレーターを使って訓練を行うのが通常です。しかし、5カ月で2度の墜落事故が発生した「ボーイング737 MAX 8」のパイロットは、シミュレーターではなくiPadを使って1時間の訓練を行うのみだったことがわかりました。これは航空会社や当局が「シミュレーターでの訓練は不要」と判断したためとのこと。

After 2 Crashes of New Boeing Jet, Pilot Training Now a Focus - The New York Times
https://www.nytimes.com/2019/03/16/business/boeing-max-flight-simulator-ethiopia-lion-air.html

Pilots trained for Boeing 737 Max with one-hour iPad lesson — Quartz
https://qz.com/1574878/pilots-trained-for-boeing-737-max-with-one-hour-ipad-lesson/

2018年10月29日に発生したライオン・エア610便墜落事故と2019年3月10日に発生したエチオピア航空302便墜落事故はいずれもボーイング737 MAX 8が用いられていました。2件の墜落事故の関連性はまだ調査中ではあるものの、2019年3月13日にアメリカ連邦航空局(FAA)は2件の事故が関係している可能性があるとしてボーイング737 MAX 8の運行停止を命じています。

そしてニューヨーク・タイムズの報道から新たに、アメリカン航空とサウスウエスト航空のパイロット組合はボーイングに対し、繰り返しMAXモデルのシミュレーターの提供を求めていたことが明らかにされました。しかし、「パイロットには同型の737-800型機の操縦経験がある」という理由で、ボーイングとFAAはシミュレーターの提供を見送りました。ニューヨーク・タイムズによると、パイロットはiPadで航空機についてのレッスンを2時間ほど受けるだけだったとのこと。また、アメリカン航空パイロット組合の広報であるDennis Tajer氏も、事故が起きたライオン・エア610便のパイロットは737-800型機の運転資格を持っていましたが、事故を起こす前の訓練は「iPadでの1時間の訓練」だけだったと説明しています。

by Matt Lino

そして、パイロットたちは737 MAXがそれまでのボーイングの航空機とどう違うのかということを13ページからなるガイドで学びましたが、このガイドにはソフトウェアに組み込まれた失速(ストール)防止のための「操縦特性増強システム(MCAS)」については触れられていませんでした。MCASは2度の墜落事故に関係している可能性があり、現在調査が進められているもの。ガイドでは従来の737シリーズとMAX 8のMCASが全く異なるということが完全に伏せられていました。

「ボーイング737 MAX 8」で5カ月の間に2度発生した墜落事故の類似点 - GIGAZINE


「フライトシステムが新しくなっている」とパイロットたちが気づいたのは、ライオン・エア610便墜落事故のあと、FAAがボーイングに対して737 MAXのマニュアルを更新するように求めたときでした。ただし、FAAは3月17日付けで「教育訓練要件にはMCASの名前そのものは載っていないが、MCASを扱う知識の要求は行われている」と発表しています。

一方で、パイロットでありエンジニアでもある義理の弟を持つという、PERCH InteractiveのCEOであるTrevor Sumner氏は、「墜落事故はソフトウェアの問題ではない」とTwitterで発信。


The Best Analysis Of What Really Happened To The Boeing 737 Max From A Pilot & Software Engineer | Zero Hedge
https://www.zerohedge.com/news/2019-03-17/best-analysis-what-really-happened-boeing-737-max-pilot-software-engineer

Sumner氏によると、737シリーズは燃料を大量に使うという経済的問題を抱えており、より効率的なエンジンと大きなファンを搭載するために設計されたのが737 MAXだったとのこと。大きなエンジンを搭載し、かつ操縦席から地面がよく見えるようにするには降着装置を高くする必要がありますが、ボーイングではそういった設計ができず、エンジンを737シリーズよりも前方につけることになったようです。


しかし、この設計により、AoAが高い時に安定した操縦を行うことが難しくなりました。そこで開発されたのが、電子的にこの欠陥を取り除くためのMCASです。

ボーイングは既存のシステムのアーキテクチャにあう、できるだけシンプルな修正を望みました。このため、エンジニアリングの修正やパイロットの訓練、クルーの管理が最小限になることが求められたとのこと。これらのことから引き起こされたのが今回の事故であり、エンジニアが責められるべき「ソフトウェアの問題」ではないというのがSumner氏の主張。ボーイングが提示した仕様がひどかったのであり、エンジニアは求められたスペックを、エラーなく作り出したということをSumner氏は主張しています。

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in 乗り物, Posted by logq_fa

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