ネトゲで男女の差別は起こるのか?
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by Taylor Harding
オンラインゲームでたびたび議論の的となるのが、「女性と男性の扱いが異なるか否か」についてです。実際にオンラインゲームをプレイしたことがある人なら、女性プレイヤーをひいきしているプレイヤーや、セクハラ発言を投げつけるプレイヤー、「女性だからプレイが下手だ」と非難するプレイヤーなどを見かけたことがあるという人も多いはず。そんな議論に科学的に立ち向かおうとした人物が、人気オンラインシューティングの「オーバーウォッチ」を339回プレイし、周囲の反応を分析しています。
Randomized trial on gender in Overwatch
http://danluu.com/overwatch-gender/
分析を行ったのはプログラマーのDan Luuさん。339回のゲームプレイにおいて、半分では男性的な名前、もう半分では女性的な名前でプレイし、それぞれのプレイの中で他プレイヤーから寄せられたコメントを記録しています。コメントは「性的/性別に関係のあるもの」「ゲームプレイに関するもの」「侮辱的なもの」「賛辞的なもの」のいずれかに分類したそうです。実験では各プレイで使用するキャラクターを専用のアルゴリズムを用いてランダムに決定。ゲーム中の他プレイヤーのコメントを記録するためにゲーム内のボイスチャットはオンにし、Luuさんの発言で他プレイヤーのコメントに偏りが生じないように自身の音声はミュートにして聞き専となることで「他プレイヤーからの反応」を集めました。なお、他プレイヤーとのコミュニケーションのためにテキストでのチャットは行われたそうです。
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by Sean Do
◆性的/性別に関係のあるコメント
コメントを分類し、「性的なコメント」あるいは「性別に関係のあるコメント」を分析した結果、「女性的な名前を使用しているともっと性的なコメントが寄せられるものと思っていたけど、実際にはそうではなかった」とLuuさんは記しています。男性的な名前であろうと女性的な名前であろうと、他プレイヤーからは性別に関するコメントや性器についての言及があり、どちらの性別でプレイしている方が多く性的なコメントを寄せられるということは統計学的に有意な差は生じなかったとのこと。ただし、数字上では男性的な名前を使用していた際の方がより性的なコメントを多く聞くことになったと記しています。
「性的なコメント」といっても、ほとんどのコメントは「Luuさん以外の他のプレイヤーに向けられたコメント」あるいは「チームやゲーム内チャットに対する一般的なコメント」だったそうです。どちらの性別の名前を使っていても比較的多く確認できたのは「ガールフレンドのセクスティングを止めさせるにはどうすればいいか?」や、より直接的な「奥まで突いてやる」や「驚いた。自分でシコってな」などといった表現だそうです。そして、Luuさんに向けて直接送られた性的なコメントは、「お願いママ、coochieをちょうだい」と「俺のおちんちんはカチカチだ」の2つだけだったそうです。
女性的な名前のプレイヤーにはもっと多くの性的なコメントが寄せられると考えていたLuuさんですが、調査の結果は過去に発表された(PDF)論文とも一致しているとのこと。なお、調査のサンプルが339回のゲームプレイのみということについて、Luuさんは「ゲーマーにとっては少なく感じるかもしれないが、過去の同様の研究ではわずか163回のサンプルしか使用されていない」と記し、十分な回数であると主張しています。
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by Andre Hunter
◆ゲームプレイに関するコメント
以下のグラフはゲームプレイに関するコメントを他プレイヤーから言われる確率を、男(M)女(F)およびプレイモード「クイック・プレイ(QP)」「ライバル・プレイ(comp)」別に示したもの。「Est」には各モードでのプレイ時に男女別でどの程度ゲームプレイに関するコメントを言われる確率が異なるかが示されています。これによると女性が「ライバル・プレイ」でゲームを遊ぶ際が最もゲームプレイに関するコメントを受ける確率が高く、その確率は19%となっています。
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数字から、男性プレイヤーよりも女性プレイヤーがよりプレイに関するコメントを言われがちで、さらに「クイック・プレイ」で遊ぶよりも「ライバル・プレイ」で遊ぶ際の方がゲームプレイに関するコメントを言われがちであることが明らかになっています。
なお、Luuさんによると「偏りを避けるために、集計したのは『プレイが間違っている』や『別のキャラクターを使った方がいい』などの、ゲームプレイに関する具体的な意見だけ」と語っており、経験則的にはもっと多くプレイに関する意見を言われがちな気がするとLuuさんは記しています。また、男性的な名前でゲームをプレイしている場合は「早く死にがちだからヒーラーを増やすかタンクに切り替えて」といった丁寧な要求が多くなるのに対して、女性的な名前でプレイすると、プレイ中に女性を「ゴミ」と呼びチームが負けている原因を押し付けるようなコメントが多くなるそうです。
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by Samantha Sophia
ただし、Luuさんが行った調査では被験者に方法論などを公表しているわけではないため、「バイアスや選択的報告による問題が生じている可能性がある」とされており、今回の調査はあくまで趣味で行ったものであって学術論文などのような精度で行われたものではないとLuuさんは断りを入れています。
◆その他の男女で生じる違いについて
その他、調査期間中および期間外にオーバーウォッチをプレイしていて遭遇した、「女性の名前でプレイしていた際にだけ起きた奇妙な出来事」をLuuさんがまとめています。
・文章や口頭でやり取りをしたことがない人から、迷惑なフレンドリクエストが送信されること。(7度遭遇)
・他のチームのプレイヤーがヒーラーを使用しているLuuさんに対するチームメートの守りが薄いと判断し、Luuさんたちのチームを批判し、ゲームを放棄してLuuさんたちのチームが勝利するというケース。(実験中に1度遭遇)
・チームメンバーがLuuさんといちゃつこうとし、Luuさんが反応しないとわかると暴言を吐いてくるというケース。(調査中に1度、調査期間外に1度遭遇)
プレイヤー名が男性的であろうが女性的であろうが、プレイ内容に関する賛辞のコメントが寄せられる可能性は大きく変わらなかったそうです。男性的な名前の場合は短く事実に近い賛辞が送られるのに対して、女性的な名前の場合はより感情的なコメントを寄せるケースが多く、同時に複数人から称賛されるケースもあったそうです。
◆男女で違いが生じないもの
なお、ゲーム内で寄せられる侮辱的なコメントや、ゲームプレイについての補足的なコメントが寄せられる確率は、男女で違いが見られませんでした。
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in ゲーム, Posted by logu_ii
You can read the machine translated English article Is there discrimination between men and ….