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氷上ダウンヒル最速を競うレース「Red Bull Crashed Ice Boston 2019」を戦う日本代表選手に話をきいてきました


氷のトラックを誰が一番速く駆け降りるかを競う単純明快なスポーツ「Red Bull Crashed Ice Boston 2019」の決勝トーナメントが、現地時間2019年2月9日19時(日本時間2019年2月10日9時)からアメリカ・ボストンのフェンウェイパークで行われます。決勝トーナメント前日に、日本代表選手に話をいろいろ聞いてきました。

Red Bull Crashed Ice Boston 2019- Official Page
https://www.redbull.com/us-en/events/crashed-ice-boston

決勝当日は雲一つない晴天。しかし気温はかなり低く、レース時刻には氷点下になる見込みです。


午後3時のレーストラック


氷の調整作業が行われていました。


◆コースについて
決勝レース前に、イベント制作責任者のマーク・ヴァン・デル・スラウスさんに話を伺うことができたので、レーストラックについていろいろ質問してみました。


G:
今回のレーストラックを作るのにどれくらいの期間がかかったのですか?また、どれくらいの人数のスタッフが関わっているのですか?

マーク:
およそ4週間です。おそらく30人から40人のスタッフで足場を組み、ドラック設営にさらに15人、氷づくりにさらに15人くらいでしょうか。


G:
スタジアム初開催ということで、特に難しいことはありましたか?

マーク:
たしかにスタジアムでの開催はこれが初めてです。これまでの中でもユニークな場所ですが、フェンウェイパーク関係者と密接に取り組むことができたので、とてもスムーズ。問題なく作業は完成させられました。

G:
水を何度もまいて氷の厚みを出すとのことですが、厚さはどれくらいですか?

マーク:
すべてのトラックで氷の厚さは10センチメートルくらいです。

G:
フェンウェイパークは天然芝ですが、その対策はどのように行ったのですか?

マーク:
他のトラックに比べて特に難しいということはありません。まず全体をマットで覆い、スチールの板を敷くことで天然芝は守られています。

G:
ピッチャーマウンドは特別デザインでしたね。

マーク:
ええ、ピッチャーマウンドもやはり保護しています。マウンドの形状は盛り上がっているためスチールの板を置くことはしていません。トップにマウンドを描くことで、そこにマウンドがあることがわかるようにしています。


G:
フィンランドなどの雪国での自然の雪を利用したトラックと、横浜やボストンのような人工の氷を使ったトラックとで、設営の上で何か違いはありますか?

マーク:
氷を作る作業自体は何も変わることはありません。ただ、横浜の場合、(温かい)気温によって氷が溶けるのでそれとの格闘でした。フィンランドでは気温も低いので、雪を固めるという作業の繰り返しです。ここボストンは気温は良好でしたが、時折降る雨によって氷が作られることがあるので調整するという作業が必要でした。

G:
今回のトラックの特徴や難しい個所はどこでしょうか?

マーク:
どの場所もチャレンジングで難所やポイントを挙げるのは難しいですね。選手は各コースを初めて走るのでどのコースもチャレンジングなものです。タイムトライアルでは32秒台が出ていることから、とても高速なトラックだと言えると思います。

G:
ゴール直前のフラットな個所に大きなコブが2つあり、選手も苦戦していました。最後に「大逆転」が起こりそうな気がしますが、そういう狙いはありますか?


マーク:
すべてのトラックが独特で、特徴があるものです。ゴール直前にロールを作ることで、簡単にはフィニッシュできないようにしています。

G:
素朴な疑問なのですが、コースを解体するのにどれくらいの時間がかかるのですか?

マーク:
おそらく2週間くらいかかります。トラックを解体し、氷を溶かし、足場を解体するのにそれくらいかかります。今は氷を溶けないように維持していますが、逆のプロセスで氷を溶かします。3週間後には野球ができるようになっていますよ(笑)

G:
お忙しい中、ありがとうございました。

◆女子日本代表インタビュー
前日のタイムトライアル終了後に、山本純子選手と吉⽥安里沙選手に話を聞けました。

コースの印象について、山本選手は「女子でも滑り切ることが容易なコースだが、スピードを出そうとするとひっかかるポイントがあり意外と難しい。ただし、『ここで失敗するともう取り返せない……』というような個所はなく、決勝に勝ち上がった選手であれば、前半はミスもなく団子状態になりそう。そこで、ゴール直前の2つのコブが勝敗を分けるかもしれない」と話していました。練習機会が少ない中、LCQで走れることはチャンスととらえていて、最後のコブでは滑り方を試したいそうです。


吉田選手は人工トラックの「綺麗さ」が印象的だとのこと。氷の状態も良く、どちらかというと自身のバックグラウンドであるインラインスケート寄りの高速コースで、テンションが上がるほど楽しく滑れたそうです。

女子選手が増えたことについては「情報交換ができる」というメリットを挙げた山本選手と、大学受験を終わらせて来年もフル参戦したいと話す吉田選手でした。


◆男子日本代表インタビュー
日本代表として戦う山内斗真選手、鈴木雅仁選手、安床武士選手に予選タイムトライアル直後に話を聞きました。


コースの印象について、インラインスケート世界チャンピオンの安床選手は「350メートルあるとは思えないくらい短く感じる。集中しなければあっという間に終わる」とのこと。アイスホッケー出身の鈴木選手、山内選手はともに「テクニカルなコース」と評価していました。

各人にそれぞれ技術的な課題を聞くと、安床選手は「ゴール直前の2つのローラー(コブ)」を挙げていました。「特に高さのある一つ目のコブでの安定性がポイントとなりそう」と語った安床選手でしたが、インタビュー後に行われたLCQではまさにそのコブに足をとられて、目前だった2位の座が手の中からするりとこぼれることになりました。

「Red Bull Crashed Ice Boston 2019 男子LCQ」安床武士がゴール直前で競り負け惜敗 - YouTube


安床選手は「トップスケーターの安定感はスゴイ。いろんなところで経験したことを、"引き出し"からもってこられる」と自身の経験の足りなさを実感しているとのこと。ただし、滑れば滑るほど自分に足りないものが見えてくる状態だそうで、横浜大会から3連戦したことで見えてきたものは大きかったそうです。

一方、鈴木選手は安床選手とは真逆でスピードの安定感は大丈夫だが、ドロップインに課題があるとのこと。インラインスケート、アイスホッケーとバックグラウンドの違いからくる強み、弱みが正反対というのは非常に興味深いところですが、「その両方を備えているのがトップスケーター」と鈴木選手は語っていました。

山内選手はアイスホッケー出身ゆえのコンタクトの強さはあるとのこと。やはり鈴木選手と同じくドロップインに課題ありで、トップ選手の動きを観察したり、アドバイスをもらったりと技術を吸収しているそうです。

「男女を含めて最高の一体感がある」と日本代表について話す三人。


最年少の山内選手を「ゲンキくん」と呼ぶ鈴木選手と安床選手。そのポテンシャルの高さを認めて今後の日本選手全体をけん引してほしいと大きな期待を寄せる二人の大先輩を前に、「ジュニアでは表彰台に乗る」と宣言した通り、山内選手はジュニア決勝で3位に入る活躍を見せてくれました。

(C)Red Bull Media House

Red Bull Crashed Ice Boston 2019の決勝トーナメントの様子は、以下のRed Bull TVで日本時間の2019年2月10日午前10時からライブ中継されます。

Red Bull Crashed Ice | Boston, USA | Red Bull TV
https://www.redbull.com/int-en/tv/live/AP-1XGV3CAWN2111/boston-usa

Red Bull Crashed Ice Boston 2019をGIGAZINEは現地で取材中。レースの模様は随時更新予定なので、GIGAZINE公式TwitterFacebookをフォローしておくと最新情報にアクセスできてお役立ちです。

・つづき
氷上ダウンヒル最速を競うレース「Red Bull Crashed Ice Boston 2019」決勝レースまとめ - GIGAZINE

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in 取材,   インタビュー,   動画, Posted by darkhorse_log

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