取材

世界チャンピオンへの前哨戦「レッドブル・エアレース千葉2019予選」を実際に見てきたレポート


日本人パイロットの室屋義秀選手が2019年度で最後となる「RedBull Air Race(レッドブル・エアレース)」の有終の美を飾ることができるのか、年間総合優勝を賭けた戦い「レッドブル・エアレース千葉2019予選」が2019年9月7日(土)と8日(日)に行われます。7日に開催された予選の様子を、実際に幕張で見てきました。

Red Bull Air Race
https://airrace.redbull.com/ja

2019年9月7日、レッドブル・エアレース千葉レーストラックでは、チャレンジャークラスとマスタークラスの予選が行われました。

《予選レースを日本語でライブ配信????????》

現地観戦と映像視聴の合わせ技で
最後の #レッドブルエアレース を完璧に楽しもう????

配信予定時間:9月7日(土) 15時より (予選レース)
ご視聴はこちら▶ https://t.co/K7cyYSvGCp

※その前に千葉のコースを動画でおさらい(日本語字幕付き)????#airrace pic.twitter.com/nDJfKyx9B9

— Red Bull Air Race (@Redbullairrace)


2019年9月7日15時5分、マスタークラスの予選がスタート。12時頃は立ってるだけで汗が噴き出るほどの天気でしたが、予選が始まる頃には曇り空で、強風が吹きすさんでいました。この風はエアレースに大きく影響がありそう。


予選は、アラブ首長国連邦のアブダビ・ロシアのカザン・ハンガリーのバラトン湖ですでに行われた3戦の総合得点ランキング下位からスタート。予選を争う選手は10カ国からの合計14人。

14 of the world's best pilots from 10 different nations are going to fight for this one title: World #Champion of Red Bull Air Race! #airrace Bring it on guys! ???????? Follow the action LIVE on https://t.co/KbyJlLIdK0 pic.twitter.com/CA0ccOUXLB

— Red Bull Air Race (@Redbullairrace)


千葉レーストラックは絶えずターンを繰り返す、テクニックを要求されるコース。


海上に建てられた巨大な三角コーンのような物体がパイロン。遠くにあるためその大きさを実感するのは困難ですが、パイロンの高さは25m。だいたいビル8階相当の高さがあります。


パイロンはコースの役割を果たすのと同時に、レースの障害物でもあります。2つ並べられたパイロンはゲートと呼ばれ、各ゲートの隙間の長さは13m。翼長7.5mの機体が時速370km(秒速10m超)もの速度でくぐり抜けることを考えると、13mという長さは本当にわずか。


スタートゲートをくぐった直後、機体を垂直に傾けるシケインが続きます。各シケイン間では機体を360度回転させる必要があるため、中の選手の負担は相当なもの。


そのシケインを突破後、上向きに急上昇して上下逆さまに飛行するハイターンが要求されます。パイロットにかかる重力加速度は最大で12Gにもなるそうで、体重60kgの人なら60kg×12=720kgの重さが操縦中にかかるということ。


エアレースは選手が別々に飛行して、そのタイムを競い合うというタイムアタック形式の競技。飛行機が目の前を通過するときの轟音や、三次元的な駆動は見応えがあります。空中で行われるため、レースの一部始終を肉眼で見られるというのもポイント。

予選で目立った走りを見せたのはスペインのフアン・ベラルデ選手。2017年に2つ表彰台を獲得した経験を持つ選手です。予選総合順位は7位。普段はイベリア航空のパイロットでエアバスA330の機長を勤めているそう。


シケインを難なく抜けた後のターンが非常にコンパクト。


タイムは56秒760。この時点でベラルデ選手が予選暫定1位に躍り出ます。


イギリスのベン・マーフィー選手は主翼でパイロンを切り裂いてしまうというミスを犯し、プラス1秒のペナルティが加算されてしまいました。パイロンにぶつかったり、ゲートを通る際に機体が水平になっていなかったり、尾翼からスモークが出ていなかったりすると、タイムにペナルティが加算されます。エアレースはコンマ数秒を争う競技なので、ペナルティの有無は非常に重要。


パイロンは布でできており、中身が空洞なのでぶつかっても機体に影響はありません。パイロンが裂かれたとき、エアゲーターがすぐにパイロンを建て直すのを見るのもエアレースの見所の一つ。


3分足らずでパイロンが復活。


唯一の日本人パイロット、室屋義秀選手は、翼と胴体部がエメラルドグリーン尾翼とスピナーがブルーのEDGE 540 V3に乗って登場。大歓声を浴びながらスタートしました。2019年度のシーズンは、アブダビで1位、カザンで1位と圧倒的な成績を収めながらも、バラトン湖では12位と奮わず総合順位は3位。まだまだ優勝は射程圏内です。


スタート地点に追い風が吹いていました。


風向きが変わって逆風の中を飛行します。台風の影響か、時間を追うごとに風が強まっていました。


ペナルティはなく、タイムは57秒570。暫定1位のベラルデ選手との差は0.810秒と1秒以内。室屋選手が千葉予選暫定4位の順位につけました。


2018年度シーズンの総合優勝者にして、2019年度も千葉の前の3戦で2位、3位、4位と記録するという優勝候補本命のマルティン・ソンカ選手がトリ。元チェコ空軍戦闘機パイロットと、生粋の飛行機乗りです。


ソンカ選手の操るEDGE 540 V3の両翼にはRedBullのロゴが大きく描かれており、裏側には「RedBull」の文字が見えます。スラロームの圧倒的な速さはまさしく王者の飛行。


記録は56.879秒、1位を確定させたベラルデ選手との差は0.119秒とほんのわずか。ソンカ選手は予選2位と王者の貫禄を見せつけました。


1位のベラルデ選手の飛行と2位のソンカ選手の飛行の差が一目でわかるのが以下の映像。序盤はソンカ選手が機体1つ分ほど差をつけていますが、以下のムービーを見るとわかるように、ベラルデ選手はソンカ選手の半分ほどの高さでターンを決め、逆転。その差を維持したままゴールしていることがわかります。

He's the man to watch. ???? @MartinSonka set 2 track records yesterday, won the #dhlfastestlap today! ???? #airrace #Chiba pic.twitter.com/iEP4zXNZut

— Red Bull Air Race (@Redbullairrace)


予選結果は以下の通り。

1位フアン・ベラルデ(スペイン)56秒760
2位マルティン・ソンカ(チェコ)57秒879
3位フランソワ・ルボット(フランス)57秒052
4位マティアス・ドルダラー(ドイツ)57秒159
5位室屋義秀(日本)57秒570
6位ペトル・コプシュタイン(チェコ)57秒777
7位マット・ホール(オーストラリア)58秒056
8位マイケル・グーリアン(アメリカ)58秒060
9位ミカエル・ブラジョー(フランス)58秒389
10位ベン・マーフィー(イギリス)58秒663
11位ピート・マクロード(カナダ)59秒015
12位クリスチャン・ボルトン(チリ)59秒298
13位ニコラス・イワノフ(フランス)59秒317
14位カービー・チャンブリス(アメリカ)1分00秒549


翌日の9月7日、予選の結果を元に、1対1で戦うトーナメントが開催されます。千葉レーストラックの優勝者と同時に、2019年度レッドブル・エアレースの年間総合優勝者が決まります。

・つづき
レッドブル・エアレース千葉2019予選後の記者会見レポート、室屋選手らトップパイロットが「最後の決戦」への意気込みを語る - GIGAZINE

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in 取材,   乗り物, Posted by darkhorse_log

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