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フェイクニュースの温床となったFacebookが広告の透明性を保つツールの排除に動き出す

by Glen Carrie

インターネット上の多くのサービスと同様に、Facebookも広告収入をメインの収入源としています。そのFacebookで表示される広告を見ていると、「なぜ自分のページにこの広告が?」と疑問に思うような広告が表示されることも少なくないはずです。Facebookは広告の透明性を保つために「このメッセージが表示される理由」という、「広告主がどうやって広告を表示する対象を決めているのか?」についての情報を記す項目を用意しています。この情報を収集するためのツールが複数公開されていたのですが、Facebookはこのような「広告の透明性を保つ助けとなるツール」を排除していることが判明しています。

Facebook Moves to Block Ad Transparency Tools —… — ProPublica
https://www.propublica.org/article/facebook-blocks-ad-transparency-tools

Facebook restricts campaigners’ ability to check ads for political transparency | Technology | The Guardian
https://www.theguardian.com/technology/2019/jan/27/facebook-restricts-campaigners-ability-to-check-ads-for-political-transparency

ProPublicaを含む複数の企業が、Facebook上で表示される広告の透明性を保つために、「広告主がどうやって広告を表示する対象を決めているのか?」というターゲット情報を収集するツールが公開されています。これらのツールが集めた情報は一般向けに公開され、Facebook上で表示される広告の透明性を保つための助けとなっていました。しかし、Facebookは密かに自社サービスに変更を加えることで、こういったツールの排除を始めています。ProPublicaによると、ProPublica・MozillaWhoTargetsMeといった企業が広告のターゲット情報を収集するためのツールを公開していたのですが、Facebookが自社サイト上にツールを排除するためのコードを挿入したため、記事作成時点ではツールは使えない状態となっています。

オンライン広告の透明性を高めるための法律・The Honest Ads Actを提案したマーク・ウォーナー上院議員は、「これは非常に懸念されるべき事態です」「ProPublicaのような調査グループが、不透明で詐欺的なオンライン広告を追跡・報告するためにも、こういった情報に常にアクセスできるべきです」と、ターゲット情報収集ツールを排除しようとしていることに懸念を示しています。

ProPublicaは過去1年半にわたり、何千人ものボランティアにターゲット情報収集ツールを使ってもらうことで、Facebook上に表示される政治広告の情報を収集し、それをデータベースに集めてきました。


データベースにはユーザーに表示される広告が「なぜユーザーをターゲットにしているのか?」の理由がまとめられており、政治広告がどのようなユーザーを対象にしているかを共有するために作成されたものでした。なお、ターゲット情報収集ツールの公開から2019年1月30日までの間に、Facebook上では政治広告が12万件以上も発見されたそうです。

How Political Advertisers Target You on Facebook


ProPublicaが公開していた拡張機能は、自動で広告のスクリーンショットを撮影し、なぜこの広告が表示されているのかを示す「Why am I seeing this?(日本では、『このメッセージが表示される理由』)」に書かれている説明文をコピーし、ProPublicaのデータベースに保存するというものでした。


広告の透明性を保つためにProPublicaと同じようなツールを配信していたWhoTargetsMeの共同創設者であるサム・ジェファーズ氏は、「Facebookは意図的にコードを難読化しています。我々が小さな変更を加えた際、彼らは数時間以内にさらなる更新を行ってくるのです」と語り、Facebookの動きを批判しています。また、世界の多くの地域で大規模な選挙が控えていることを指摘し、「要するに、Facebookは積極的に我々のプロジェクトが行う『広告に関するデータを集めること』をやめさせようとしているわけです。これは明らかに間違った決断だと思います」と述べました。

ProPublicaやWhoTargetsMeは、Facebookがユーザーに「なぜこの広告が表示されているのか?」を知らせないようにするため、サイトに新しいコードを加えてツールをブロックしていると考えているわけですが、Facebookの広報担当であるBeth Gautier氏は、「これ(Facebookが行った修正は)は定期的に行われている更新であり、広告ブロックおよび広告スクレイピングプラグインに適用されるものです。更新の理由は、予想外の方法でユーザーの情報を集め、悪意のある人物にその情報を公開する可能性があるためです」と語り、ターゲット情報収集ツールをブロックするためではなく、あくまでセキュリティ面の問題に対処するための変更であるとしています。

しかし、Facebookはこれまでにもマイナーな調節を繰り返し行うことで、何度もターゲット情報収集ツールをブロックしようとしてきました。そして、今回はついに広告ターゲティング情報を自動で引き出すための機能、いわば広告の透明性を保つためのツールを維持するための核となる機能をブロックしました。

この動きはFacebookの幹部がProPublicaに対して「広告の透明性に関するプロジェクトを中止するように」と要請してきた数カ月後に起きたそうです。ProPublicaによると、2018年8月にFacebookの広告製品管理ディレクターを務めるRob Leathern氏が、ProPublicaのプロジェクトは「重要な目的を果たしている」としながら、「我々の既存の利用規約を強化せざるを得ない」と語り、プロジェクトの中止を要請してきたとのこと。なお、ProPublicaがプロジェクトを中止する気配がなかったため、数カ月後にFacebookがツールをブロックするための施策に出たものと思われます。

Facebookはターゲット情報収集ツールに頼らずにプラットフォーム上の広告の透明性と保つための施策として、「広告アーカイブ」を発表しています。ただし、Facebookの広告アーカイブは記事作成時点ではわずか3つの国でしか利用できず、重要なターゲット情報を開示していないとのこと。また、アメリカで掲載されているすべての政治広告を含んでいるわけでもないそうです。

広告ライブラリ


それに対してProPublicaのツールの場合、広告アーカイブからはチェックすることのできない多くの政治広告をチェックすることができます。例えば、全米ライフル協会バーニー・サンダースの支持者を対象とした選挙改革擁護団体地元の反汚職グループ医療政策について民主党員に宣伝する組合などの政治広告が、ProPublicaのツールではアーカイブされていました。

ProPublicaがこれらの政治広告についてFacebookに報告したところ、同社はこれらの広告を非表示にし、「これら特定の広告がなぜ政治広告として分類されなかったのかについて調査しています」と返答してきたそうです。

ProPublicaなどのツールがブロックされたため、カナダ・ウクライナ・グアテマラ・イスラエルのような大きな選挙を控える国々のジャーナリストは、政治的な広告を追跡したり、ターゲット情報をチェックしたりする方法がなくなってしまった状態といえます。Facebookは広告アーカイブの拡大をアナウンスしていますが、広告アーカイブは人種的・民族的・宗教的・党派的、およびその他の機微な属性によるターゲット情報を開示していないため、広告の透明性を保つには不十分といえるかもしれません。また、ProPublicaがFacebookに問い合わせたところ、広告アーカイブではセンシティブなターゲット情報を開示する予定はないと返答したそうです。

なお、Facebookは研究者が政治広告をより簡単に分析できるようにするためのツールを公開していますが、このツールはあくまでベータ版であり、ProPublicaを含む少数の開発者しか使えないのが現状だそうです。また、このツールを使用するには秘密保持契約書に署名する必要があったそうで、ProPublicaはこれに関する詳細な情報を明かすことができないようです。また、このツールを利用しているニューヨーク大学のオンライン政治広告研究家のローラ・エーデルソン氏は、「既に知っている広告くらいしか検索できない」「これではどんな種類の新しい活動も発見することはできません」と語っています。

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in ソフトウェア,   ネットサービス, Posted by logu_ii

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