アメリカがHuaweiを刑事訴追、カナダで保釈中の孟副会長の身柄引き渡しも要請へ
アメリカがHuawei(ファーウェイ)に対してアメリカ企業からの情報窃盗やイラン制裁に反してイラン企業と取引したとして刑事訴追しました。同時に、カナダで逮捕され保釈中のHuawei副会長兼最高財務責任者の孟晩秋氏についても起訴し、アメリカへの身柄引き渡しを要請することを明らかにしました。貿易戦争で対峙中のアメリカと中国の緊張がさらに高まることになりそうです。
Huawei Criminal Charges Filed Against Chinese Company By US - Bloomberg
https://www.bloomberg.com/news/articles/2019-01-28/u-s-planning-to-announce-criminal-charges-related-to-huawei-jrgrda0q
アメリカ連邦大陪審はニューヨーク州において、Huaweiや2つの関連会社に対して13件の違法行為を理由に刑事訴追しました。主な嫌疑は、アメリカの通信大手T-Mobileから機密情報を盗み出したという「情報窃盗」、経済制裁中のイランでSkycom Techという子会社を隠れ蓑にして取引したという「対イラン制裁違反」となっています。
起訴状によると、HuaweiはT-Mobileが開発していた携帯電話をテストするロボット「Tappy」の技術を盗む目的で、2012年から組織的な情報窃盗を開始したとのこと。HuaweiはT-Mobileと結んだ秘密保持契約に違反して、Tappyを盗撮し部品を測定し、ロボットの一部を盗み出したとのこと。なお、情報窃盗に成功した従業員に対してHuaweiはボーナスを提供していたそうです。
アメリカ連邦捜査局局長のクリストファー・レイ氏は「今回の刑事訴追は、Huaweiがアメリカの企業や金融機関を搾取し、公平で公正な市場取引に脅威を与えていたという恥知らずな蛮行を白日の下にさらすものだ」と述べています。
さらにカナダで逮捕され保釈中の孟晩秋CFOも正式に起訴されました。孟被告がカナダで逮捕され、保釈された経緯については以下の記事で確認できます。
Huawei創業者の娘がカナダで逮捕、イランへの制裁違反容疑でアメリカ政府が引き渡しを要請 - GIGAZINE
カナダで逮捕されたHuawei副会長が30年以上の禁固刑に直面していると判明 - GIGAZINE
Huawei副会長の保釈をカナダが認める、中国での元カナダ外交官拘束が影響か? - GIGAZINE
孟被告の主な嫌疑はすでに判明していた通りアメリカの金融機関に対して「Skycom TechとHuaweiに関係性はない」と虚偽の申し立てをしたとの「詐欺」です。2018年12月1日にカナダで逮捕された孟被告は保釈を請求し認められ、2019年2月6日の公判を待つ身ですが、アメリカのマシュー・ウィティカー司法長官代行は「2018年1月30日までにカナダに対して孟被告の身柄引き渡しを正式に要請する」との方針を明らかにしています。
Acting Attorney General Whitaker Announces National Security Related Criminal Charges - YouTube
仮に孟被告の身柄引き渡しが要請されると、カナダの法務大臣は引き渡しの可否を判断し、公聴会の開催を含めて遅くとも30日以内に結論を出すことになります。孟被告の身柄引き渡しは法務大臣の専権事項ですが、仮に孟被告の訴追の嫌疑がカナダの法律にも反する場合、身柄引き渡し要請を拒否する余地はほとんどないとBloombergは指摘しています。なお、カナダ・バンクーバーを拠点にし数百件のカナダ・アメリカの身柄引き渡し事件に関与したギャリー・ボッティン弁護士は、「カナダのシステムでは(孟氏の)弁護は困難で、身柄引き渡し要請の90%が承認されている」と回答しています。
しかし、孟被告の一連の扱いに対する中国政府の反発は強く、孟被告の身柄引き渡しを巡って中国がカナダに圧力をかける可能性は十分あります。2019年1月22日にカナダのジョン・マカラム駐中国大使が「孟被告のアメリカへの身柄引き渡しは回避できる可能性がある」と述べましたが、カナダのトルドー首相は大使を解任するなど、カナダ政府内でも孟被告の扱いをめぐっては混乱が見られます。アメリカと中国の板挟みに追いやられたカナダは、難しい判断を迫られています。
なお、記事作成時点でHuaweiは声明を発表していませんが、「この事件を無視することは、Huaweiがアメリカでビジネスが不可能な『逃亡者』になる結果を招くだけなので、その選択肢はないだろう」と元連邦検察官のハリー・サンディック氏は述べています。
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