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アメリカ企業から機密情報を盗んだとして中国の国家的メモリ製造企業をアメリカが締め出しへ


中国のメモリメーカー「福建省晋華集成電路」(JHICC)とその関連の台湾企業が「アメリカのメモリ企業Micronの企業秘密を盗み出した」として、アメリカ司法省はJHICCなどをアメリカ製品の輸出を禁じる対象としてエンティティリストに加えました。アメリカは中国による技術台頭を徹底的に阻止するようです。

China ‘has taken the gloves off’ in its thefts of U.S. technology secrets - Los Angeles Times
http://www.latimes.com/politics/la-na-pol-china-economic-espionage-20181116-story.html

2015年に中国政府は中国の製造業のロードマップ「中国製造2025」を打ち出し、その中で独自のDRAMチップを製造することが国家安全保障上の優先事項であると発表しました。それに伴って中国沿岸部の産業拠点である晋江市にメモリ製造企業JHICCを設立するため中国政府は50億ドル(約5600億円)以上の資金援助を行いました。当時、JHICCはメモリ製造に関する技術を持っていなかったため、台湾のファウンドリUnited Microelectronics(UMC)からの技術供与を受けましたが、アメリカ司法省によると、UMCのスティーブン・チェン副社長がアメリカのメモリ大手Micronの子会社の従業員だったチェン・チェンクン氏を引き抜いたとのこと。

単なる引き抜きでは問題とはなりませんが、当時Micron Memory Taiwanに勤めていたチェンクン氏は、一緒にUMCに移籍する同僚を募り、Micronが保有していたDRAM技術や営業秘密などを含む900もの機密ファイルを持ち出したと司法省は認定しており、検察当局はその機密文書の価値を「4億ドルから8億5000万ドル(約500億円から960億円)と見積もっています。


Micronは2017年12月にアメリカ・カリフォルニア州の裁判所にJHICCとUMCを企業秘密を盗み出したと訴えていましたが、反対にJHICCとUMCは中国・福州中級人民法院でMicronに対して特許侵害を理由としてメモリ製品の販売を差し止める訴えを起こしており、2018年7月にはMicronの子会社2社に対して製品の販売差し止めの仮処分が下されていました。

米マイクロン、中国裁判所が販売差し止めの仮処分=台湾UMC | ロイター
https://jp.reuters.com/article/usa-trade-china-micron-idJPKBN1JU09B

これに対して「盗人猛々しい」と怒るアメリカ司法省は、今回、JHICCとUMCに加えてチェンクン氏を含む3人の個人を提訴し、さらにExport Administration Regulations(EAR:米国輸出管理規則)に基づきJHICCをエンティティリストに加えました。エンティティリストに加えられたJHICCに対しては、メモリ製造に必要となるアメリカ製品の輸出制限が課されます。なお、EARは管轄権の及ばない他国での取引にも適用されるため、アメリカからの直接の輸出だけでなく、すべての再輸出取引にも制限は及びます。


過去にはイランなどの「経済制裁対象国」へのアメリカ製品の輸出を禁止することに用いられてきたエンティティリストが、中国企業の締め出しに使われるという点で今回の措置は前例のないものです。JHICCは中国製造2025の中心的存在とみられていることから、アメリカ政府に対する中国の技術台頭を抑えるための並々ならない意欲が感じられます。


なお、これまでも長年にわたってアメリカへの技術スパイを行ってきた中国ですが、2013年6月にオバマ大統領が習近平国家主席と非公式の首脳会談を行い、中国による技術窃盗やサイバー攻撃に対して警告を与え、その後、2015年9月に習主席が訪米した際に、厳格なサイバーセキュリティ方針に合意した後、数カ月のうちに中国による商用データのハッキングが90%も減少するなど、大きな変化が現れていたそうです。

しかし、当時中国からのハッキングを主導していた中国人民解放軍に代わって国家安全保障省の首席秘書官が主導権を握ると、より洗練されたハッカーが政府に雇われて技術スパイ活動が活発化し、2016年以降はジェットエンジン開発からバイオ医薬品、遺伝子組換え植物に至るまでアメリカの持つ知的財産を積極的に盗み出す方針へと切り替わったとアメリカのサイバーセキュリティ専門家は指摘しています。

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in メモ,   ハードウェア, Posted by darkhorse_log

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