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ゲームの売り上げを丸ごと持ち逃げされた開発スタジオが打った起死回生の一手とは?

by Lyncconf Games

ゲーム関連企業は、ゲームの企画・開発を行う「ディベロッパー」とゲームの販売・宣伝を行う「パブリッシャー」という2つに大まかに分けることができます。パブリッシャーによって売上のほとんどを持っていかれてしまい、経営が立ちゆかなくなってしまったインディーズのゲーム開発スタジオが、「最終手段」をとって見事販売権を取り返すことに成功したと報告されています。

We DMCA-ed our own game last week because it got hijacked by Publisher. AMA : gamedev
https://www.reddit.com/r/gamedev/comments/ai80zd/we_dmcaed_our_own_game_last_week_because_it_got/


Developer uses DMCA to reclaim Steam page from publisher | GamesIndustry.biz
https://www.gamesindustry.biz/articles/2019-01-21-developer-uses-dmca-to-reclaim-steam-page


マレーシア在住のJeremy Choo氏とShaikh Zhafri氏が創設したAmmobox Studiosは、ファーストパーソン・シューティングゲーム(FPS)とリアルタイムストラテジー(RTS)を組み合わせた「Eximius:Seize the Frontline」を企画し、8年という歳月をかけて開発。イギリスのThe GameWall Studiosがパブリッシャーを務め、2018年9月からアーリーアクセス版がSteamなど複数のPCゲーム販売プラットフォームで配信されました。


しかし、The GameWall StudiosからAmmobox Studiosに振り込まれるはずの「Eximius:Seize the Frontline」の売上はまったく振り込まれませんでした。Ammobox Studiosは弁護士を通して売上を請求したものの、The GameWall Studiosからの返事は一切なく、9月の発売から4回行われたセールでの売上を含めた収益はほとんど手元に入ってこなかったとのこと。そのため、Ammobox Studiosはアップデートの開発費やサーバーの維持費などを支払うことができなくなってしまいました。

ゲームの販売・管理はパブリッシャーであるThe GameWall Studiosが行っているため、Ammobox Studiosには販売を差し止めることもできません。Ammobox Studiosは弁護士を通じて「パブリッシャー契約を解除してほしい」と要求しましたが、The GameWall Studiosはこれをすべて無視。既に借金が膨らんでいたAmmobox Studiosには裁判を起こす体力はなく、このままではAmmobox Studiosは泣き寝入りをするしかないという状況まで追い込まれてしまいました。


そこで、最後の切り札として、Ammobox Studiosは「デジタルミレニアム著作権法(DMCA)を利用しました。

DMCAはデジタルコンテンツの著作権保護を目的とした法律で、著作権を侵害するコンテンツに対してプラットフォーマーやプロバイダーに責任を追及できるというもの。ただし、DMCAでは「権利者から通告を受けた際に当該コンテンツをすぐに削除すればプラットフォーマーやプロバイダーの責任は問われない」という「Notice and Take Down」が定められていることから、権利者からDMCAに基づいた侵害通知がなされると申請の真偽を確認する前に削除などの対応が行われるケースがよくあります。

The GameWall Studiosによる「Eximius:Seize the Frontline」の販売はデジタルコンテンツの盗用であるとして、Ammobox StudiosはDMCAに基づいて「Eximius:Seize the Frontline」の販売差止めを請求。すると、Steamで「Eximius:Seize the Frontline」の販売が停止されました。既にゲームを購入した人はそれまで通り遊ぶことは可能ですが、Steamで新しく購入することは不可能になったというわけです。


その後、Steam側と協議した結果、「Eximius:Seize the Frontline」の販売権がAmmobox Studiosに返還されました。Choo氏は「The GameWall Studiosはパブリッシャーではなくなったため、DMCAの申請は取り下げました。これは1つの小さな勝利です。『Eximius:Seize the Frontline』の発売から4カ月経ち、Ammobox Studiosは借金がふくらんで倒産寸前となりましたが、ついに販売権を取り戻しました。私たちは立ち上がるつもりです」と述べています。

Ammobox Studiosのように、功績が少ない新興のゲームスタジオは大手のゲームパブリッシャーとはなかなか契約することができません。The GameWall Studiosの一連の所業はそういったディベロッパーの弱みにつけ込んだものといえます。The GameWall Studiosによって売上を搾取されていたゲームディベロッパーはAmmobox Studiosの他にもいたようで、Redditには「Slinki」というゲームを開発したTitan Forged Gamesの関係者がThe GameWall Studiosから同じやり口で被害を受けていたことを告白。Titan Forged GamesもDMCAを利用することで販売権を取り返すことに成功したそうです。


Choo氏がGamesIndustry.bizに語ったところによると、「Eximius:Seize the Frontline」のDMCA侵害申請に反応して販売を停止し、The GameWall Studiosの名前を削除する対応を行ったのはSteamのみだったとのこと。記事作成時点では、GreenManGamingHumble StoreFanaticalのいずれにおいても販売は停止されず、パブリッシャーもThe GameWall Studiosのままとなっています。

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in ゲーム, Posted by log1i_yk

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