ソフトウェア

「Unityが突如利用規約を変更して開発ツールがブロックされた」とSpatialOSの開発元が主張


多くのゲームで採用されているゲームエンジンUnityが、突如利用規約を変更して特定の開発ツールをブロックしました。これにより、「SpatialOS」と呼ばれる開発ツールを使用しているゲームは影響を受ける可能性が示唆されました。

Unity’s block of SpatialOS - Improbable
https://improbable.io/company/news/2019/01/10/unity-blocks-spatialos

Unity refutes allegations, explains why it suspended a tool creator’s licenses [Update 2] | Ars Technica
https://arstechnica.com/gaming/2019/01/unity-engine-tos-change-makes-cloud-based-spatialos-games-illegal/

Improbableが提供するSpatialOSは、リアルタイムマルチプレイヤーゲームをクラウドプラットフォーム上で構築するためのツールです。このSpatialOSは、いわゆるMMOと呼ばれる同時に多くのユーザーがアクセスして遊ぶタイプのオンラインゲームが手軽に構築できるようになる、ということで人気を集めました。

しかし、このSpatialOSとゲームエンジンのUnityを組み合わせて作られたゲームは、Unityの利用規約に違反しているとImprobableが発表し、ゲーム開発者の間で大きな混乱が巻き起こっています。

Unity’s block of SpatialOS - Improbable


オープンベータ版が2017年にリリースされて以来、SpatialOSはクラウド上で提供されるゲームにMMOとしての機能を手軽に統合できるツールとして多くの開発者に親しまれてきました。しかし、Unityが突如「SpatialOSは利用規約に違反する」として、Unity上でSpatialOSが機能しないようにブロックを始めたため、開発にSpatialOSを採用していたゲームには「影響が出る」とImprobableは主張しています。

SpatialOSが違反しているというのは、Unityが新たに更新した2章4節「2.4 Streaming and Cloud Gaming Restrictions.」です。この節では「クラウドまたはリモートサーバー上でUnityランタイムをインストールまたは実行すること」および「クラウドインフラストラクチャー上で実行されている管理対象サービス」を除外しています。

この利用規約は2018年12月5日に更新されたもので、Unityは2019年1月になって「以前はUnityでもImprobable(のSpatialOS)のようなサービスが利用可能でしたが、他のエンジン同様、Unityのエンジンで機能することを許可しません」と、ImprobableのSpatialOSを意図的にブロックしたことを正式に認めています。


突如UnityからブロックされたSpatialOSについて、Improbableは「Unityの利用規約の変更により、Unityを使用してSpatialOSのゲームを操作または作成することは、開発およびプロダクションゲームを含め、事実上規約違反となります」と自社サイト上で説明しています。なお、対象となるゲームの中にはVRMMOゲームの「MetaWorld」や、イギリスのゲーム開発会社であるBossa StudiosによるMMOゲーム「Worlds Adrift」などが含まれています。

Worlds Adrift Early Access Release Trailer - YouTube


利用規約の変更が行われてから、Improbableは解決策を模索するべくUnityと積極的に協議しているとしています。しかし、SpatialOSをUnityと連携させるためのライセンスキーが記事作成時点では無効にされてしまっているとのこと。

Improbableは「Unityによる利用規約の変更は一夜にして脆弱または小規模な開発者を含む業界全体のプロジェクトに多大な損害を与え、長年にわたって開発中の主要プロジェクトにも損害を与えた」と、Unityを批判。さらに、「次世代のオンラインマルチプレイヤー機能を提供するためにSpatialOSを使用してきたゲームは、既にゲームエンジンが決まっているため危険な状況にさらされている」と訴えています。そして、Improbableはあくまでも「SpatialOSとUnityの組み合わせでゲームを完成・リリースさせられるように全力を注ぐ」としながら、最終手段としてゲーム開発者が「Unityから別のゲームエンジンへ移植することを支援する」とまで述べています。

SpatialOS for Games - Overview - Improbable


対するUnity側は、Improbable側の「SpatialOSがUnityからブロックされた」という主張を正式に否定。ImprobableのUnity Editorライセンスキーは停止したものの、「SpatialOSを使用して開発されたゲーム」および「SpatialOSを使用して開発中のゲーム」のいずれも影響を受けることはない、と公式ブログ上で明言しています。そして、Improbableが利用規約に違反していたとしても、ゲーム開発者側がその損害を被るべきではない、とSpatialOSで開発されたゲームが影響を受けていない理由についても解説しています。

Our response to Improbable’s blog post (and why you can keep working on your SpatialOS game) – Unity Blog


Unity側の主張によると、Improbableは独自のツールの開発・販売におけるマーケティングに際して「Unityの技術や名前を不正かつ不適切に使用した」とのこと。これについてUnity側は1年以上前からImprobable側に「EULAに違反する」と通告しており、6カ月前には書面でも違反について通告したそうで、「Improbableは何カ月も前から利用規約の違反について認識しており、急にブロックされて驚いたなどという状況はありえない」としています。

なお、SpatialOSを使ってゲームの開発を進めていたBossa Studiosのマーケティング責任者であるDaniel King氏は、「我々の最優先事項はプレイヤーです。バックグランドで起きていることはすべて我々のコントロールのおよばないところでもあります。そして、現時点ではWorlds Adriftは通常通り動作しています」とMCVで語っています。

加えて、Bossa StudiosはWorlds Adriftのユーザーに向けて「Improbable(Worlds Adriftサーバーを支える技術であるSpatialOSのメーカー)とUnity(ゲーム自体を作成するために使用されたエンジン)の間で状況が発展していることが明らかになったところです。詳細はまだまばらです」と、UnityとImprobableの間で問題が発生していることを通知しています。


・追記 2019/01/18 17:45
Unityは2018年12月5日に利用規約(TOS)を更新してImprobableへの対処を明確にしましたが、コミュニティから「エンドユーザー使用許諾契約書(EULA)/利用規約(TOS)の制限が厳しすぎる」という声が挙がったことを明かし、再びTOSをの第2.4項を更新したことを明かしました。これにより、デベロッパーはUnityに統合されるいかなるサードパーティのサービスも使用できるようになります。もちろんサードパーティーのサービスにはUnityがサポートするものもあればサポートしないものもあります。また、このTOSの更新によりImprobableはTOS違反には当てはまらなくなり、ライセンスも回復可能となるようです。

更新した利用規約、そしてオープンプラットフォームであることへのコミットメント – Unity Blog
https://blogs.unity3d.com/jp/2019/01/16/updated-terms-of-service-and-commitment-to-being-an-open-platform/

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in ソフトウェア,   動画,   ゲーム, Posted by logu_ii

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