「台本なしの即興劇」が若者の不安を取り除いて互いの信頼関係を育むという研究結果
一切の台本を用意せずに俳優が即興で演じる形式の演劇を「即興劇」といいます。役者の演技力訓練にも使われるこの即興劇が、コミュニケーションに苦しむ若者の社交不安障害(SAD)を緩和し、他人への信頼やコミュニケーションを生むことがミシガン大学スクール・オブ・ソーシャル・ワークの研究者によって報告されています。
The use of improvisational theater training to reduce social anxiety in adolescents - ScienceDirect
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0197455618301928
Anxious teens gain confidence by performing ‘off script’ | University of Michigan News
https://news.umich.edu/anxious-teens-gain-confidence-by-performing-off-script/
SADは「人前で何かをするときに過剰な心配や緊張感を抱いて日常生活に支障をきたしてしまう」という精神障害の一種で、2018年6月に公表された世界保健機関(WHO)の疾病及び関連保健問題の国際統計分類(ICD)の第11版では、不安または恐怖関連の障害の1つとして分類されています。
ミシガン大学の研究チームは、10週間にわたって学生向けに開催された「即興演劇訓練プログラム」に参加した計268人の中学生・高校生を対象にアンケート調査を行いました。このアンケートは被験者が社会的不安を感じているかどうかの評価を行うためのもので、「他の人のために働くことが気持ちいいと感じる」「失敗してもかまわないと思っている」といった質問が含まれました。プログラムが始まってすぐの段階で行われたアンケート結果では、一部の学生がSAD陽性であると確認されたそうです。
しかし、10週間にわたるプログラムを終えた後に再びアンケート調査を行った結果、SAD陽性を示した学生に見られた社会的不安が軽減していることがわかりました。社会心理学科の大学院生であり論文の主任著者でもあるPeter Felsman氏は、即興劇に参加することで、他者との信頼関係を築き、仲間がリスクを負っても安心感を抱くと同時に失敗をより恐れなくなるようになったと論じています。
by Frankie Fouganthin
今回の調査結果はもちろん精神科の医療研究に寄与するだけではなく、より効果的なSAD治療を受けられない貧困層に属する学生の参加者に焦点を当てた研究となっていると研究チームは主張しています。
ミシガン大学の心理学教授であるCollen Seifert氏は「SADの緩和が、社会的スキルや希望、創造力や意欲と関連していることが、今回の調査結果から分かりました」とコメント。また、論文の共著者であり社会福祉・精神科学教授を務めるJoseph Himle氏は「従来の治療を受けられるような富裕層で成績優秀な学校に通う若者でも同じ結果が出るのかは今後の研究で検証されます」と語っています。
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