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ブラジャー作りを始めたエンジニアが学んだ7つのこと


その人の胸の形やサイズにぴったり合った完璧なブラジャーを作るには多くて48回の試着が必要だといわれています。そこで、元エンジニアのMona Zhangさんは、試着室で使うエネルギーや時間を削減しつつ完璧なブラジャーを作りたい、という思いから「Bra Theory」というブランドを立ち上げました。Bra Theoryを成功に導くまでには予想外のことの連続だったようで、「ハイテクな解決法を捨てることを恐れるな」など、ZhangさんがBra Theoryで学んだことを7つの項目でまとめています。

What we learned from 3 years of bra engineering, and what's next
https://bratheory.com/what-we-learned-and-whats-next/

◆教訓1:「ハイテクな解決法を捨てること」を恐れないこと
もともとエンジニアとして働いていたZhangさんは、その人にあったブラの3Dパターンを作り出すべくPythonベースのプログラムを作り出しました。アルゴリズムを作り出すことで、ブラジャーメーカーが48回の試着の末に作り出す「完璧なブラ」を、一度で実現しようとしたのです。


しかし、ブラジャーの作り方を学ぶにつれ、「ブラジャー作りで重要なのは技術ではなく、測定と試着のフィードバックを繰り返すことだ」ということがわかってきたとのこと。この事実はZhangさんにとって受け入れがたいものでしたが、会社の前進を速めるために、Zhangさんはそれまで開発していたアルゴリズムをいったん捨てました。

すると、3Dテクノロジーという考えから離れることによって、問題を単純化することができたそうです。そして2016年、Zhangさんらは新たに自分たちの目標を「消費者の喜びのために、ブラジャーの公式を作ること」ということに再定義しました。その後、Bra Theoryは数学・幾何学を元にした独自のアルゴリズムを取り入ることでフィッティングの数を最小限にし、価格を抑えて、手の届きやすいオーダーメイドのブラジャーを作るという形に変化していきました。


◆教訓2:なぜ誰もその問題を解決できていないのかという理由を学ぶ
当初、ブラジャー作りについて無知だったZhangさんは楽観的な見通しを持っていたそうですが、ブラジャー作りの複雑さを知るにつれ悲観的にならざるをえなかったそうです。Zhangさんの楽観/悲観を時系列でグラフ化するとこんな感じ。


ブラジャー作りに関係する要素として、Zhangさんは以下のような「短いリスト」を挙げています。

・着用する人の肉付き
・色
・生地の伸縮度合い(製造工場によって変わる)
・サイズ測定のタイミングとメジャーの温度
・胸の弾力や柔軟性(ブラジャーに持ち上げられた時に形が変わる)
・アンダーワイヤーが胸の付け根に正しく位置していること
・パターン作りはミリ単位の正確性が必要であることもあれば、1cmの変更が可能な時もある
・背中のストラップの位置で肩ストラップが滑るかどうかが変わる
・複数の生地を重ねると互いに干渉し、伸縮に影響する

これらの問題はブラ作りの脅威にもなりますが、解決できない問題ではないので、逆にブランドの魅力を作るものとも見なせます。実際に、Zhangさんはアンダーワイヤーの試着を行うことで、既製品では不可能な商品価値を作り出しました。

今もなお進化中であるBra Theoryですが、「不可能なこと」はこれまでなかったとのこと。一時は悲観的になっていたZhangさんですが、2018年現在は楽観的になりつつあり、「困難を受け止めつつもそこに固執せず、立ち止まらずに進むこと」の重要性を述べています。

◆教訓3:コラボレーションがカギとなる
その道の専門家の協力を得ることで、「穴に完全に落ちる前に落とし穴に気づくことができる」とZhangさんは述べています。

ブラジャーを目の前にすると気づきにくいのですが、写真で見ると、カップの中央あたりにくぼみができることにZhangさんはある時気づきました。この現象にZhangさんやデザイナーたちは困惑したそうですが、専門家に相談したところ「縫い目の測定をしていますか?バカみたいに聞こえるかもしれないけれど、小さな点が大きな違いを生み出すんです」と言われたそうです。


わずかミリ単位の問題でしたが、この答えを得られてから、より慎重に測定が行われるようになり、同様の問題は二度と起こらなかったとのこと。

成功には「初心者の発想」も重要ですが、専門家の経験や、両者の建設的な対話が重要になってきます。

ただし、全ての専門家が自分のビジョンを理解してくれるわけではないので、一緒に働く前に自分のコンセプトをしっかり説明することが大事とのことです。

◆教訓4:「完璧」は「十分」の敵
女性が「最低のブラジャー」についての不満をもらす様子を幾度となく見てきたことから、Zhangさんは「完璧なブラジャー作り」を求めるようになりました。しかし、Bra Theoryを試験運用し始めたZhangさんは、完璧を求めるあまりに1人の人に対して大量のプロトタイプを作ってしまい、最終的に顧客が離れていったそうです。この経験から「消費者は17回も試着を行えない」ということにZhangさんたちは気づきました。「何が『十分』なのかは自分たちではなく消費者が決めること」ということを学んだとのことです。

そして2017年11月に家族や友人たちに対して「十分」なブラジャーを作った後に、2018年になってBra Theoryのベータ版がスタート。インターネットでブラジャーを作りたい人を募り、スタジオに来てもらってオーダーメイドのブラジャー作りを行うようになりました。

◆教訓5:「はい」と言う
2018年まで、友人や家族のためのブラジャー作りのフィッティングはZhangさんの自室で行われていました。ベータ版をスタートするにあたってフィッティングのための部屋が必要だと考えたZhangさんに対し、プロダクトマネージャーのBrooke Kaoさんは「それって本当に必要?」と尋ねた後に、「マンハッタンの倉庫を使うこと」を提案したそうです。「確かにスティーブ・ジョブズはガレージで創業したけれど、自分たちは同じ事をすべきだろうか?」と思ったZhangさんは、最終的に、予算に合わせて部屋をデザインしてくれるという友人に依頼。以下のような部屋が用意されました。


消費者にフィードバックを求めたところ、このような部屋は過剰な最適化であり、顧客はWeWorkのようなコワーキングスペースで十分だったということがわかったそうです。とはいっても服を脱ぐ必要があるため、その後、The Wingという女性のためのコミュニティを利用してフィッティングを行うようになったとのこと。

結果としては過剰な最適化だったものの、「前進するため、自分たちに必要だと思うことを実行した」という点は重要だったとZhangさんは述べています。間違いを犯した結果、作業場所のことを制限要因だと考えなくなったためです。

起業家はもちろん「ノー」ということを学ぶ必要がありますが、顧客を念頭に置いている限り、何かを始める際には「イエス」ということが重要になるといいます。イエスと言うことで、自分自身を前進させることも可能になります。

◆教訓6:「健康」は起業家にとって重要
Zhangさんは、Bra Theoryがうまく進まなかった理由の1つに「自分自身がそれまでの25年間、肉体的、精神的、感情的な健康を無視してきたこと」を挙げています。名門プリンストン大学を卒業し、独学でソフトウェアエンジニアとして働くなど優れた肩書きを持っていたものの、Zhangさんには自己認識が足りなかったとのこと。2013年から2015年の間には摂食障害、2016年には胃酸逆流、2017年には過敏性腸症候群になり、健康問題の解決に迫られたといいます。

起業家にとっての制限要因は、多くの場合、健康や幸福といったことを含めた自分自身です。

もし仕事を通して不可能を可能にしたいのであれば、起業家は自分自身を「従業員の星」のように扱う必要があるとのこと。Zhangさんは自分自身に投資を行うことで、エネルギッシュになり、成長する考え方を身につけ、多くのことが実現できるようになったと語っています。

◆教訓7:誰のために製品を作っているのかを忘れないこと

by Pablo Heimplatz

何度も試着を繰り返し作るオーダーメイドのブラジャーは、多くの場合、350ドル(約4万円)のコストがかかります。アルゴリズムを用いることによってフィッティングを最小限にすることをうたうBra Theoryの価格はその半額の175ドル(約2万円)で、もし作ったブラジャーがフィットしない場合は全額返金されます。Zhangさんは収益をより安価の製品開発に回したいと考えていますが、それにはまだ時間がかかるとみられています。

2018年6月に作ったオーダーメイドのブラジャーの原価は440ドル(約5万円)で、売値は550ドル(約6万2000円)でしたが、プロモーションのため「値段はあなたが決めて下さい」と示されたそうです。その結果、1ドル(約110円)とする人が何人かいた一方で6万2000円を支払った女性もいたとのこと。この女性は「ブラジャー関係の問題は私の人生において悲しみであり、私はこれまでに涙してきました。あなた方が問題を解決し、私のような女性を救ってくれることを願っています」と記されていたそうです。

もともと、ZhangさんがBra Theoryに着手したのは、自分自身がブラジャー選びに問題を抱えていたためです。当時は「自分の胸だけが変なのだ」と考えていたZhangさんですが、Bra Theoryを通して自分が一人ではないということに気づいたとのこと。そして、自分たちが世界をよりよい場所にできると考えるようになりました。

低価格といっても、Bra Theoryのオーダーメイドブラジャーは既製品のブラジャーよりは高額で、手を伸ばさない人も多くいます。しかし、困難があった時こそ「誰のためにブラジャーを作っているのかを思い出すこと」の重要性をZhangさんは説いています。

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in メモ, Posted by logq_fa