動画

イタリアチーズの王様「パルミジャーノ・レッジャーノ」が高価な理由とは?


本格的なイタリア料理には欠かせないパルミジャーノ・レッジャーノはイタリアを代表するチーズで、「イタリアチーズの王様」と呼ばれるほど、非常に高価なチーズとしても知られています。なぜパルミジャーノ・レッジャーノには高い値段がつけられるのか、さまざまな食べ物の製造工程を紹介するFOOD INSIDERがムービーで解説しています。

Why Parmesan Cheese Is So Expensive - YouTube


パルミジャーノ・レッジャーノはもはやイタリアにとっては最も重要な輸出品の1つであり、その市場価値は22億ユーロ(約2800億円)に相当するといわれています。


パルミジャーノ・レッジャーノはエミリア・ロマーナ州のパルマやレッジョエミリアなど特定の地域で作られて、デノミナツィオーネ・ディ・オリージネ・プロテッタ(DOP)とよばれる原産地名称保護制度によって認定されたものだけが「パルミジャーノ・レッジャーノ」を正式に名乗ることが許されます。


はじめてパルミジャーノ・レッジャーノを作ったのは1000年以上昔の修道士だといわれています。パルミジャーノ・レッジャーノの原材料は牛の乳と塩、そして「レンネット」と呼ばれる、牛の胃から取れる凝乳酵素のみ。


エミリアロマーナ州などの生産地以外の地域では、同じようなパルミジャーノ・レッジャーノを作ることは難しいといわれています。その理由の1つとして、特定の地域にしか生息していない3種のバクテリアが生産に欠かせないためだといわれています。


パルミジャーノ・レッジャーノを作っているニコラ・ベルティネッリ氏によると、牛が牧草を食べる時にバクテリアを生きたまま胃の中に取り込み、胃の中でバクテリアが繁殖するからだとのこと。また、このバクテリアは牛乳の中にも生息していて、このバクテリアによる発酵がなければパルミジャーノ・レッジャーノの芳香や味が生まれないといいます。


1ホールのパルミジャーノ・レッジャーノを作るためには131ガロン(約500リットル)もの牛乳が必要になるそうです。牛乳は一晩置いて脂肪分を分離させたものと、当日の朝に絞った新鮮なものを混ぜて使うため、1日1回しか作ることができません。


巨大な銅鍋の中でかき混ぜながらレンネットを加えることで、牛乳は次第にヨーグルトのようになっていきます。


鍋の温度は38度から55度で、チーズ作りの職人は、「スピーノ」と呼ばれる独特な形をした道具で毎日かき混ぜて、銅鍋の中の牛乳がヨーグルト状のどろっとした液体からゴムのような弾力を持つまで凝固させながら水分を飛ばします。水分をしっかり飛ばすのは、チーズを長期保存できるようにするため。


凝固した牛乳(カード)は鍋の底にたまるので、亜麻布でこしとって……


そのまま棒にしばりつけて、干すようにして水分をよく切ります。


その後、カードを亜麻布ごと型の中に入れます。


亜麻布は2時間ごとに取り換えられます。


午後8時になったら、生産者や生産地の名前が刻まれた型紙を巻き、表面に刻印を施します。


基本的な作り方は1000年前に修道士が作った時から変わっていませんが、現代はテクノロジーも応用。チーズ1ホールごとにIDが発行され、いつ頃作られたものなのかをその場でスマートフォンから確認することができます。


4日ほど経ったら型紙を外し、塩水の中におよそ19日間つけ込んで加塩します。


塩水から引き揚げたらチーズを棚に置き、乾燥させながら熟成を行います。


熟成棚に置かれているチーズは、1年間は一切触られることがありません。1年経ったらチーズを棚から下ろし、職人がハンマーでたたきながら、乾燥具合や気泡の有無をチェックします。


十分に乾燥し熟成したと見なされたチーズは側面に印を押しされ、さらに焼き印を入れられます。これでチーズは完成。パルミジャーノ・レッジャーノは一日に1つしか作れない上に、完成するまで膨大な時間と手間がかかるため、他のチーズよりもはるかに高い値段がつくこととなります。


チーズの熟成にはおよそ18カ月から36カ月、長いものでは10年以上かかります。熟成が長くなれば長くなるほど、チーズの価格は高騰します。例えば、3年熟成させたパルミジャーノ・レッジャーノは、1ポンド(約450グラム)辺り15ドル(約1700円)という市場価格がつくことも。長く熟成されたパルミジャーノ・レッジャーノ1ホールは、それだけで非常に高い価値があるため、イタリアの銀行の中にはパルミジャーノ・レッジャーノを担保にチーズ業者向けのローンを提供するところも。対応している銀行には、パルミジャーノ・レッジャーノを熟成する倉庫が完備されているそうです。


熟成期間が価格の高騰に連携しているということは、偽造パルミジャーノ・レッジャーノの闇市場が存在しないことを示しています。イタリア政府は、市場からパルミジャーノ・レッジャーノの偽物を排除しようと何年も戦ってきました。パルミジャーノ・レッジャーノの長い歴史は、偽造品との戦いでもあるわけです。パルミジャーノ・レッジャーノに限らず、ヨーロッパの生産品であるチーズはEUによって強く守られています。


ベルティネッリ氏は「世界中の多くの国で『パルミジャーノ・レッジャーノ』という名前は商標登録されています。『パルメザンチーズ』という呼称は、全くパルミジャーノ・レッジャーノではないチーズをパルミジャーノ・レッジャーノであるとだまして買わせるためのものです。この問題は非常に大きく、イタリア政府は今も働きかけています」と語っています。日本で売られている粉チーズは「パルメザンチーズ」と呼ばれることが多くありますが、実際は本物のパルミジャーノ・レッジャーノとは全く異なるもの。


本物のパルミジャーノ・レッジャーノには以下の画像のようなマークが必ずついているとのこと。スーパーなどでパルミジャーノ・レッジャーノを買う時は、店頭で手に取ってマークがちゃんと表示されているかを必ず確認するのがおすすめです。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
「食べ物の味」は著作権保護の対象になるのか?を争った裁判が決着 - GIGAZINE

「寝る直前にカッテージチーズを食べると健康にいい」という研究結果 - GIGAZINE

ポーランドの山奥だけで作られる美しい幻のチーズ「Oscypek(オスツィペック)」 - GIGAZINE

オリーブオイルの偽造はなぜ多発するのか?そして本当においしいオリーブオイルの選び方とは? - GIGAZINE

約3300年前の「世界最古のチーズ」が発掘され、食べたがる人がネットに続出 - GIGAZINE

「スパゲッティの乾麺は必ず3つ以上に折れる」という現象を乗り越えて研究者が2つに折ることに成功 - GIGAZINE

スコッチ・ウイスキーはなぜシェリー酒の樽を使って熟成するようになったのか? - GIGAZINE

ラクダのミルクが牛乳よりも健康的な飲み物として世界的に注目を集めている - GIGAZINE

in 動画,   , Posted by log1i_yk

You can read the machine translated English article here.