毎年冬になるとうつ症状が現れる「季節性情動障害」とは?
アメリカでは毎年冬になって昼が短くなるにつれて、およそ5%の人が体のだるさや疲れやすさ、気分の落ち込みなどを訴えるといわれています。これは季節性情動障害と呼ばれる気分障害の一種で、ほとんどのケースで1年のうち冬にだけ引き起こされるといわれています。
How to deal with seasonal affective disorder and stay alert this winter | Popular Science
https://www.popsci.com/how-to-treat-seasonal-affective-disorder
季節性情動障害がなぜ引き起こされるのか、なぜ冬に限ったものなのかというのは、生化学的なレベルでは、はっきりとはわかっていません。研究者は、太陽光の量の変化が、特定の遺伝子を含む人々のホルモン変化を引き起こし、季節性のうつ病という形で影響を与えていると仮説を唱えています。
また、高緯度地域に住む人の方が季節性情動障害の発症率が高いという研究結果もあります。アメリカ国立衛生研究所によると、特に北方に位置するアラスカ州では季節性情動障害を抱える人が全体の9%だったのに対して、フロリダ州などの南部の住民ではわずか1%だったとのこと。「季節性情動障害を患う人は、概日リズムが乱されていて、睡眠・気分・行動に変化をもたらす冬の月夜のサイクルに合わせて、睡眠-覚醒の周期を変更することができません」とアメリカ国立衛生研究所はコメントしています。
季節性情動障害の治療法としては、光療法が効果的だといわれています。光療法は、「ハッピーランプ」と呼ばれるUVフィルタリングされたLED白色電球を使うことで、10分から15分ほど全身に光を浴びるという療法。スマートフォンやPCの画面から出る光によって概日リズムが乱れて睡眠障害が引き起こされるという研究がありますが、光療法はこれを応用して、光によって概日リズムを調整するというわけです。ある研究によると、太陽の光が最も少なくなる月に2~5週間にわたって光療法を行うことで、季節性情動障害の症状が緩和されたとのこと。
また、比較的症状の軽い人には、「夜明けのシミュレーション」も効果的だと言われています。夜明けのシミュレーションとは、目覚まし時計のアラーム音をハッピーランプの光に置き換えるもの。例えば朝の6時30分に起きたい場合、目覚まし時計が30分早い朝6時に起動します。そして、部屋に置いているハッピーランプが30分かけて少しずつ明るさを増し、夜明けの明るさを部屋の中に再現します。体が理解できる自然なプロセスを模倣することで、季節性情動障害の症状の重篤度を軽減させるというわけです。
季節性情動障害に対しては、一般的なうつ病に対して行われるカウンセリングや抗うつ薬の服用はあまり効果的ではなく、こうした光療法や夜明けのシミュレーションを行うことで再発が予防されているという説もあるそうです。Popular Scienceは、季節性情動障害を抱える人はかかりつけの医者とよく相談し、自分の症状がどれほど申告なものなのか、自分にとって正しい治療が何なのかを知ることが重要だと述べています。
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