制御装置の故障で運用が停止されていた「ハッブル宇宙望遠鏡」が復活して観測を再開
By NASA
姿勢を制御するために用いられる「ジャイロスコープ」(ジャイロ)の故障により運用が一時停止されていた宇宙の天文台「ハッブル宇宙望遠鏡」の修復作業が完了し、故障発覚からわずか20日後に観測作業が再開されたことが発表されました。
Oct. 27 Gyro Update: NASA’s Hubble Space Telescope Returns to Science | NASA
https://www.nasa.gov/feature/goddard/2018/update-on-the-hubble-space-telescope-safe-mode
ハッブル宇宙望遠鏡には6台のジャイロスコープが取り付けられており、うち3台を使って機体の姿勢変化を検知するようになっています。これまでにも度重なる故障に見舞われてきたハッブル宇宙望遠鏡は、その度に予備のジャイロを使って運用を継続させてきましたが、2018年10月5日には最後の3台のジャイロのうち1台が故障したことで、ハッブル宇宙望遠鏡は自動的にスリープモード(セーフモード)に移行していました。
ハッブル宇宙望遠鏡がジャイロスコープの不具合によりスリープモードに突入してしまう - GIGAZINE
実は、10月5日の故障はあらかじめその発生が予想されていたものであり、その際には予備のジャイロが起動されることが決まっていました。しかし、実際に10月5日にジャイロの電源を投入すると、本来示すべき値よりもはるかに高い値がセンサーから返されてきたことが判明。ハッブル宇宙望遠鏡の自己診断機能がその異常を検知したため、機体はセーフモードに入っていました。
NASAの運用チームはこの問題を解消すべく、ジャイロのデータを補正するための対処法を実践。2018年10月15日の週にまず、運用チームはハッブル宇宙望遠鏡にいくつもの姿勢変化を指示して機体を動かし、その際にジャイロに対して異なる動作モード間で切り替える指示を送ったとのこと。これにより、通常とは異なる値を返す原因と考えられていた障害を取り除くことに成功しました。
次にチームは、さらにハッブル宇宙望遠鏡の制御を複数回変化させ、ジャイロが動作する様子を検査することで安定状態にあるかどうかをチェック。最後に、今後再び異常な値を返した時に問題を起こさないようにするための「セーフガード」をハッブル宇宙望遠鏡にインストールして、万が一の状態に備える体制が取られました。
さらに10月25日(木)、チームはジャイロ補正データを収集するためのさらなる操作を実施し、翌26日(金)には観測に不可欠な「筒体を観測ターゲットに向ける」および「その姿勢を維持する」という操作を実施し、問題なく作業は完了されました。そして25日遅く、チームはハッブル宇宙望遠鏡に搭載された各種機器を標準的な状態に復元する作業を進め、ついにハッブル宇宙望遠鏡は再び観測が行える状態へと復活を果たしました。翌27日(土)の午前2時10分からは復活後初の天体観測が実施され、地球から遠く離れた場所で星が誕生している天体「DSF2237B-1-IR」から届く光の波長を観測器「Wide Field Camera 3」で観測する作業に成功したとのこと。
1990年4月に今は亡きスペースシャトルによって打ち上げられたハッブル宇宙望遠鏡は当初、15年という運用期間が設定されていましたが、度重なるトラブルを乗り越え、数回の機材更新などでその性能が次々と改善。そして今回の大きなトラブルをも乗り越え、記事作成時点では28年と6カ月を超える運用期間をさらに更新し続けています。今後は、2021年に新たな打ち上げ時期が設定されているジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡とともにさらなる観測を行うことが期待されています。
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