映画やドラマに登場する小道具としての「本・紙片」を作り出すプロに密着したムービーが公開中
映画やドラマの中には架空の本や新聞、登場人物が誰かに宛てた手紙やチラリと登場するチラシ、壁に貼られたポスターなど、非常に多くの紙が映画やドラマの小道具として使われていることが映画を見るとわかります。そんな小道具としての紙を作り出すプロに密着したムービーが、YouTubeで公開されています。
This Prop Master’s Work Is Hidden in Plain Sight
テレビドラマや映画の中には……
役者が雑誌や本、手紙を持っている場面が多く登場します。
パリッとした紙の新聞だろうと……
小さな名刺だろうと、全ての小道具は人の手によって作られたものです。
ほんの小さな紙片でも、物語を左右する大きな可能性を秘めているとのこと。たった1枚の紙が、多くの情報を訴えかけます。
画面にチラリと映った小さな本や手紙の文言が、観客に大量の情報を与えることもあります。
登場するキャラクターのバックグラウンドや……
そのシーンが持つ意味など、小道具は多くの意味を表します。小道具がうまく機能することで、物語はさらによいものになるとのこと。
ロス・マクドナルド氏は、そんな小道具を作るプロです。
マクドナルド氏が手がけるのは、小道具の中でも紙に関するもの。
子どものころのマクドナルド氏は、マンガに夢中になっており……
紙に描かれた世界を心の底から愛していたとのこと。
子どものころの憧れを捨てなかったマクドナルド氏は、イラストレーターとしての活動を開始。雑誌や新聞、本などのイラストを描いていました。
そんな経歴がきっかけで、マクドナルド氏は紙に関する映画やドラマの小道具作りを手がけるようになります。
25年間のキャリアで、マクドナルド氏は数万を超える小道具を作ってきたとのこと。
初めてマクドナルド氏が主要な映画の小道具を作ったのは、「赤ちゃんのおでかけ」という1994年のコメディ映画でした。
当初、マクドナルド氏は作中に登場する絵本のイラストレーターとして作品に参加し、その中で小道具の制作も行うようになったそうです。
テレビドラマシリーズ「ボードウォーク・エンパイア 欲望の街」では、全5シーズンにわたって小道具制作に携わりました。
マクドナルド氏が制作する小道具は多岐にわたり、特許の図面や……
タバコの箱
本
契約書
死体のタグまで、ありとあらゆる紙に関する小道具を手がけています。
パスポートに地図、旅行関係の書類やポスターをもマクドナルド氏は制作可能。
さらに、政府関係の書類や……
FBIの手書き報告書
役人の個人情報を記した書類など、マクドナルド氏に作れない小道具はないと言っても過言ではありません。
小道具を作る時にマクドナルド氏が大事だと考えているのは、その小道具に関する背景です。必要な小道具は新しい本だけではなく……
古い本の小道具を作る時には、それが古く見えるように茶色のインクで着色します。また、どんな風に持ち主が扱い、ページの角や表紙が摩耗していったのかもマクドナルド氏は意識して制作しているとのこと。
物語としては、そこに記載されているほんの数行の言葉が重要なのですが……
いったいどのような紙で作るべきなのか、カーボン紙なのかオニオンスキン紙なのかといった点も小道具製作で注意するべき点になります。
また、紙の材質だけでなくその紙は登場人物のポケットから出てくるのか、それとも書類入れから取り出されるのかといった紙の配置にも気を配る必要があるそうです。
登場人物の手書き文字もマクドナルド氏が手がけることがあるそうで……
そのキャラクターがどんな文字を書くのか、どんなインクを使うのか、どんなペンを使うのかといった点も注意しなくてはなりません。
ほんの3行しか物語の上では必要なくても、手紙の全文を作る必要もあります。
数時間や1日で作業が終わることもあれば、プロジェクトの規模によっては数週間から数カ月も同一作品の小道具を作り続けることがあるとのこと。
登場する本の全ページにテキストと写真を作り、ファイルフォルダには実際に文字が記入された書類が入っています。
「ナショナル・トレジャー リンカーン暗殺者の日記」という映画では……
ケネディ大統領暗殺事件やロズウェル事件など、ありとあらゆる陰謀論についての文書を作成したとのこと。
全ての小道具を作るのには4カ月を要したそうですが、それぞれの小道具が物語にほんの数秒ずつ登場し、観客に情報を提示しています。
マクドナルド氏は「物語の大きなイベントが、紙によって始まることが多いものです」と語り……
自身はその一部を担当していると述べます。
映画館に行く時、マクドナルド氏は非常に興奮しているとのこと。
もちろんマクドナルド氏も他の観客も、チラッと映る登場人物の運転免許証が見たいわけではありません。
マクドナルド氏の仕事は小さなものかもしれません。
しかし、もしも誰かが物語の重要なシーンでマクドナルド氏の仕事に気づいてくれたなら……
それはとても素晴らしいことかもしれないと、マクドナルド氏は語りました。
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