「世帯収入が1450万円までの低・中所得世帯の学生の授業料を免除する」という大規模な奨学金制度が発表される
by NEC Corporation of America
大学の授業料や生活費を工面するために奨学金制度を利用する学生は少なくありませんが、奨学金の中には返済義務があるものも多く、大学卒業後に奨学金返済に苦しむ場合があります。アメリカテキサス州の名門私立大学であるライス大学は、「低・中所得世帯の学生に対し授業料を免除する」大規模な奨学金制度を実施すると公表しました。
Rice University Says Middle-Class And Low-Income Students Won't Have To Pay Tuition : NPR
https://www.npr.org/2018/09/18/649160232/rice-university-says-middle-class-students-wont-have-to-pay-tuition
ライス大学の総長であるデイヴィッド・リーブロン氏は2018年9月18日(火)に新たな奨学金制度を発表し、「才能ある学生には機会を与えるべきだ」と語りました。新たな奨学金制度は、家族の総所得が6万5000ドル(約730万円)~13万ドル(約1450万円)以下の学生を対象にしているとのこと。
世帯所得が大学が設定したボーダーラインを下回る学生は、奨学金制度を申請することで授業料の免除が受けられるだけでなく、家賃や食費といった生活費、その他の料金をカバーする助成金が得られます。また、世帯所得がボーダーラインを上回っている生徒に対しても、世帯収入が13万ドル~20万ドル(約2400万円)の範囲に収まっていれば、授業料の半分をカバーできる助成金が得られるとしています。
今回ライス大学が発表した大規模な奨学金制度は、ライス大学の創立当初の理念と関係しているとリーブロン氏は述べました。ライス大学は1912年に開校されてから数十年にわたり、一切の授業料を学生から徴収していませんでした。ところが、1965年にその方針を転換し、2018年時点では年間授業料が4万6600ドル(約520万円)となっています。また、学生は授業料に加えて家賃や食費などの生活費も必要になるため、総負担額は6万1350ドル(約690万円)にもなるとされています。
by faungg's photos
新たな奨学金制度は「Rice Investment」と呼ばれる計画のもとで実施され、ライス大学は「新たなシステムのもとで、学生は必要資金を得るためにローンを組む必要がなくなります」と語っています。制度は2019年秋から施行される予定となっており、すべての学部生が助成金を申請する資格を持っているとのこと。
ライス大学は2017年の時点で4000人の学部生がいると発表しており、全ての学部生が助成金を受けるわけではないとしても、相当な規模の支援制度となります。今回発表された奨学金制度を支えるのは、卒業生や関係者から寄せられた多額の寄付金です。ライス大学は新しい奨学金制度を開始するにあたって、全体の40%ほどを寄付金によってまかなうと発表しています。
また、毎年多額の利益を得ている大学の基金からも奨学金制度に多額の資金提供を行い、制度を維持していくとのこと。ライス大学への寄付は毎年盛んに行われており、基金の利益とも合わせることで低・中所得階級の学生に対する無償の授業を提供できるそうです。
by Aaron Hawkins
ライス大学では新たな奨学金制度への移行に伴い、学生ローンのプランを徐々に廃止していくとしています。一方で、「夏休みや学業の合間を縫ってアルバイトをして、生活の足しにすることを望んでいます」とも述べており、学生が返済義務を負う必要がなくなったとはいえ、計画的な財政プランを持つことを奨励しました。
なお、テキサス州の(PDFファイル)調査によれば、州内の4年制公立大学の平均授業料は年間8091ドル(約90万円)。4年制私立大学の平均授業料は、年間2万8880ドル(約320万円)となっており、低・中所得階級の学生が奨学金の支援を受けずに大学へ通うことは困難な状況となっています。
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