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なぜアメリカでは大学の学費が過去30年間で急激に上昇しているのか?


アメリカでは大学の学費を払うために学生ローンを使用する人が多く、2019年には学生ローンを抱えているアメリカ人は4000万人超、その総額は1兆5600億ドル(約170兆円)に達しています。学生が卒業後もローンの返済に苦しまなくてはならない現状が問題視されていますが、この裏には「アメリカの大学の学費が過去30年間で数倍に増加している」事実があるとのことです。

Why has college gotten so expensive in the last 30 years? Probably because the government handed them a blank check in 1993. | by Andrew | Sep, 2020 | Medium
https://medium.com/@gh0bs/why-has-college-gotten-so-expensive-in-the-last-30-years-3505af9aded8

アメリカでは卒業後も学生ローンの返済に追われる人々が多いそうで、返済にかかる平均年数は19年を超えているとのこと。学費が高いことも相まって、返済額が10万ドル(約1060万円)を超える人が200万人、20万ドル(約2120万円)を超える人も60万人に上っているそうです。また、60歳以上になっても学生ローンの返済を続ける高齢者は300万人に上り、その総額は860億ドル(約9兆1300億円)を超えていることも指摘されています。

大学の学費が上昇しているのはアメリカに限った話ではありません。日本の大学でも授業料は年々増加し続けており、国立大学の授業料は1990年の33万9600円から2005年の53万5800円へと約6割も上昇し、一般的に国立大学より数十万円ほど高額な私立大学の平均授業料も、ほぼ同様の上昇幅を見せていることが指摘されています。

しかし、アメリカの大学における授業料の上昇は日本を大幅に上回るものです。以下のグラフは1980年~2020年のアメリカにおける大学授業料の上昇率(濃い青色)と、消費者物価指数の上昇率(薄い緑色)を表したもの。消費者物価指数の上昇率が228%だったのに対して学費の上昇率は1184%となっており、なんと40年間で6倍近くも学費が高くなっていることがわかります。


アメリカにおける大学の学費上昇に歯止めがかからない理由の一つとしては、1993年にビル・クリントン政権下で成立した93年包括財政調整法が挙げられます。93年包括財政調整法には「学生ローンの改革」が含まれており、1965年以来初となる高等教育法の改正が行われました。

1993年以前のアメリカ政府は、民間の貸し手による学生ローンを「保証・支援」する立場であり、ローンを借りた学生が債務不履行に陥った場合にのみ、政府が介入して学費を大学に支払うシステムでした。ところが1993年の包括財政調整法では、新たに学生ローンの大部分を政府が提供することとなり、政府が学生ローンの「提供者」となりました。つまり、政府は大学に対して学費を前払いし、学生が政府に対してローンの返済を行うという形式です。


政府は学生ローンを含む支援策を充実させ、高等教育へのアクセスを拡大することを目的としていましたが、この動きは大学側の学費設定にも影響を与えました。政府が直接学生ローンを提供するシステムは、政府が大学に「白紙の小切手」を渡した状態といえるため、大学側が学費をできるだけ抑えようとするインセンティブが弱まります。その結果、大学は可能な限り政府から資金を獲得するため、どんどん学費を上昇させていったとのこと。

「政府の学生に対する寛大な支援策が、結果として高等教育のコストを増大させる」という主張は、1987年に当時のウィリアム・ベネット教育長官が著したコラムで述べられており、「ベネット仮説」として知られていました。一連の学費上昇の動きは、このベネット仮説を裏付けるものといえます。


大学教育へのアクセスを減少させることなくこの問題を解決する方法として、政府が「一般的な大学の学費」に上限を設け、それ以上の学生ローン貸し付けを停止することも提案されています。このシステムにおいて、大学は学生に対し上限を超えた額を請求することもできるものの、(PDFファイル)大学生の70%近くが学生ローンを借りている現状では、学生ローンで借りられる以上の学費を設定することは学生の減少を招く危険を伴うため、多くの大学が学費を上限以下に抑えると考えられるとのこと。また、一部の国のように公立大学の学費を全て税金でまかなうことも、結果として私立大学に学費の引き下げを検討させるとのことです。

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in メモ, Posted by log1h_ik

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