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ドローン産業を活性化させるために80社のスタートアップが集う「ドローンバレー」がスイスにはある

By Shepard4711

誰もが簡単に飛ばすことができるドローンは、飛ばして楽しいオモチャだけでなく物流建設業界芸術、はたまた文化人類学における発見をもたらすなど、実にさまざまな用途を可能にするデバイスです。そんなドローンのさらなる発展を目指して、約80社ものスタートアップが利用するシリコンバレーならぬ「ドローンバレー」がスイス国内に存在しています。

Welcome to the Drone Valley - SWI swissinfo.ch
https://www.swissinfo.ch/eng/sci-tech/swiss-innovation_welcome-to-the-drone-valley/44375836

「この場所は、ロボティクスの研究を行ってアイデアを実現するためのヨーロッパで最高の場所です」と語るPrzemyslaw Kornatowski氏と、「ドローンの分野においては非常に素晴らしい場所なので、アメリカを離れてここにやって来て私たちの『ドローンバレー』に加わる企業もあります」と語るMaximilian Boosfeld氏はともに、ドローンバレーでドローン開発を行っているスタートアップの起業家です。Kornatowski氏は、周囲をカゴ状のケージで覆った小型輸送用のドローンを、そしてBoosfeld氏が率いるWingtraは、地図作成と調査に特化したドローンを開発しています。

Wingtraのドローン「WingtraOne」は、ドローンと飛行機のいいとこどりをしたような機体。離陸と着陸の際にはヘリコプターのように垂直に上昇し、上空に達すると機体を水平に傾けて飛行機のように翼を使って飛ぶことが可能です。Wingtraは45人の従業員を抱えるスタートアップで、すでにWingtraOneは世界各地で活用されるに至っているとのこと。その用途は大規模インフラ開発プロジェクトや露天掘り炭鉱の調査、建設や掘削のモニタリングなどさまざまです。


WingtraOneはチューリッヒ工科大学の研究プロジェクトの一環として開発が進められたドローンです。Boosfeld氏はこのドローンについて「これらの機能により、私たちはコンペで勝ち残ることができました。固定翼をもつこのドローンは、クアッドコプターよりも広いエリアをカバーすることが可能で、かつ、搭載する高性能カメラで高解像度な写真を撮影することができます」と語っています。

Kornatowski氏が開発しているドローン「PackDrone」は、スイス連邦工科大学ローザンヌ校で設計されたもの。ドローンの周囲がカーボンファイバーでできた球体状のカゴで包まれている構造で、使用しない時は折り畳んで収納してしまうことが可能。用途としては郵便物や薬、救急キットの搬送など比較的小さな荷物の輸送に使われるのですが、到着地で荷物を引き渡す際にこのカゴが安全性を確保するようになっています。


これらはいずれもドローンバレーで誕生したドローンですが、スイスにこのような環境が生まれたのは偶然ではなく、きちんとした方針に基づいた取り組みの結果であるとのこと。ドローンバレーは、約200km隔てたスイス連邦工科大学ローザンヌ校とチューリッヒ工科大学にまたがるエリアのことを指しており、ここには過去数年で約80社のスタートアップが集まり、2500人の雇用が生み出されてきました。

その背景には、いくつかの重要なファクターが存在するといいます。WingtraのBoosfeld氏はその状況について「スイスには2つの洗練されたロボティクスを教える学校があり、世界一ではないにしても、ヨーロッパで最高クラスの学校がそろっています。スタートアップは、アイデアを実現させるために、優れた頭脳を持ち寄っています。それがここスイスでは可能なのです」と語ります。また、PackDroneのKornatowski氏も「ここには、革新的なプロジェクトを可能にし、スタートアップをサポートするプログラマーや機構がそろっています。スイス連邦政府による『イノスイス(Innosuisse)』です」と述べています。


この取り組みは、スイス政府の法整備によっても後押しを受けているとのこと。ドローン分野における先駆的存在となることを狙った政策がとられており、Boosfeld氏は「連邦政府はパイオニアの役割を維持しようとしており、この業界がさらに成長することを期待しています。それは、研究開発のニーズを把握する政府の協力を得られ、いわゆる『お役所仕事』による弊害を避けることができることを意味します」と語っています。

またスイスでは、航空当局がドローンなどの航空機の使用によるリスクを評価するガイドライン「Specific Operations Risk Assessment(特定操作におけるリスク調査:SORA)」を策定しており、ドローンの活用に向けた環境の整備が進められています。スイスでは年間2万2000機のドローンが販売され、国内で稼働しているドローンは10万機にも上ると見られています。Boosfeld氏は「空には鳥やヘリコプター、飛行機、スカイダイバーなどにとって十分なスペースがありますが、それら全てが共存できる戦略を立てる必要があります」と述べています。

By Codelco

2017年3月以降、スイスの郵便事業会社「Swiss Post」は研究施設向けに世界初のドローンによる輸送サービスを小都市ルガーノで提供しています。クアッドコプターは最大時速36kmのスピードで市内の病院間の輸送を担い、万が一故障した場合には自動的にパラシュートが展開して落下によるダメージを食い止めるようになっています。

しかしその一方チューリッヒでは、研究施設間で血液サンプルをドローンで運ぶ実験がわずか1日後に停止しました。着陸地に近い住民から、ドローンによる騒音被害を訴える声が挙がったのがその理由だそうです。

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in メモ,   ハードウェア, Posted by darkhorse_log

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