サイエンス

アルツハイマーと診断されている人は本当はアルツハイマーではない可能性が浮上

by Meritxell Garcia

認知症患者を対象とした大規模な研究で、アルツハイマーだという診断を受けている患者の中には実はアルツハイマーではない人がおり、治療計画を変更する必要が出てくる可能性があると発表されました。

Alzheimer's Association Launches $20 Million Lifestyle Intervention Trial in the U.S. to Prevent Cognitive Decline
http://alz.org/aaic/releases_2017/AAIC17-Wed-briefing-Developing-Topics.asp

PET scans show many Alzheimer’s patients may not actually have the disease - The Washington Post
https://www.washingtonpost.com/national/health-science/brain-scans-show-many-alzheimers-patients-may-not-actually-have-the-disease/2017/07/18/52013620-6bf2-11e7-9c15-177740635e83_story.html

Alzheimer’s Association International Conference(AAIC)では、認知症と診断された患者にアミロイドPETスキャンを行っていく研究を2016年に開始しました。アミロイドPETスキャンで検知される「アミロイドβタンパク質」はアルツハイマー型認知症のバイオマーカーとなるもの。脳内におけるアミロイドβタンパク質の蓄積量を画像化できれば、アルツハイマー型認知症の予測が可能になると考えられています。AAICが4年かけて行うこの大規模なプロジェクトは「IDEAS」と呼ばれ、アメリカの高齢者および障害者向け公的医療保険制度のメディケアを受け軽度認知障害(MCI)や非定型認知症だと診断されている1万8000人を対象に脳のスキャンを行っていく予定です。

このIDEASの中間報告が2017年7月に発表され、これまでのところ、4000人もの患者が研究に参加しています。

カリフォルニア大学のMemory and Aging Centerに所属する研究者らによると、MCIと診断された患者の54.3%、非定型認知症だと診断された患者の70.5%から、アミロイドβタンパク質が凝集した「アミロイドプラーク」が発見されたとのこと。アミロイドプラークがあるからといって必ずしもアルツハイマーであるとは言えないのですが、一方でアミロイドプラークが「ない」アルツハイマー患者はいません。このスキャン結果はつまり、MCIや非定型認知症だと診断されている患者はアルツハイマーだと誤診断される可能性があるということを示しています。

by Ars Electronica

Alzheimer AssociationのJames Hendrix氏は「アルツハイマーの可能性があると診断された人は、アリセプトやナメンダといった薬を処方されるかもしれません。もし彼らがPETスキャンを受け、脳にアミロイドベータが蓄積されていないことが示されればどうでしょう?彼らの主治医はきっと薬を出すのをやめて、別の方法を考えるはずです」と語っており、この調査結果によってアルツハイマー治療の方向性が変わり、不要な医療費の削減につながると研究者らは考えています。

過去数十年にわたってアミロイドプラークは検死解剖するまで発見することができなかったため、アルツハイマーの診断は患者の症状から推測されるしかありませんでした。しかし、プラークを検知するアミロイドPETスキャンが導入されるようになったことで、生きている患者に対しても脳の状態を調べて診断を下せるようになりました。また、現在は、血液検査だけで診断が下せるようになるよう研究が続けられています。

ただし、このようなPETスキャンは保険でカバーされず、3000~4000ドル(約33万~44万)と高額の費用がかかってしまうのが問題点。連邦政府機関であるメディケア・メディケイドサービスセンター(CMS)は2013年、「回復の見込みがなく治療が限られている患者に変化をもたらす証拠がない」という理由から、研究のためにPETスキャン費用をカバーすることを拒否しました。しかしその後、CMSはIDEASの研究に対して100万ドル(約1億1000万円)の資金を供給しており、PETスキャンを受けた患者に対して費用を払い戻しています。研究者らは、研究によってPETスキャンの有用性を明らかにすることで、将来的にPETスキャンの費用が保険でカバーされるようになることを望んでいるとのこと。

by Taki Steve

2017年現在、400人もの医師が自分たちの患者をIDEASの研究に登録しており、研究では医師が患者の症状からどのような診断を下していたのかと、PETスキャンの結果、どのように治療方針を変えていったのかが記録されています。PETスキャンの前後を比べると、全体の3分の2の医師が治療プランを変更しているとのこと。Hendrix氏は「我々は、全体の30%が治療プランを変えるだろうと見ていましたが、実際には66%の医師がプランを変更していました。これは非常に大きなことです。薬を服用している患者の多くが、実際には薬を必要としていないのがわかりました」と語っています。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
点滅する光を浴びせるだけでアルツハイマー病が治癒する可能性 - GIGAZINE

脳細胞の死滅を止める薬を発見、アルツハイマー病など認知症の進行停止に光 - GIGAZINE

アルツハイマー病の徴候を「目」から知ることができる新技術が登場、従来より安価・早期に検査可能に - GIGAZINE

「アルツハイマー病は人から人に移る」という新説に新たな調査結果 - GIGAZINE

「コーヒーを飲む」などカフェインの摂取が認知症予防に役立つという研究結果が発表される - GIGAZINE

アルツハイマー病の原因物質が若者の脳で初めて発見、20代の脳にも危険 - GIGAZINE

超音波がアルツハイマー病で失われた記憶を回復させる - GIGAZINE

in サイエンス, Posted by darkhorse_log

You can read the machine translated English article here.