世界一プレイされているオンラインRPG「World of Warcraft」はどのように開発されたのか?
2004年にBlizzard Entertainmentから発売された「World of Warcraft」は「Warcraft」シリーズの世界観を受け継いだ大規模多人数同時参加型オンラインロールプレイングゲーム(MMORPG)です。このWorld of Warcraftがどのように開発されたのかが、海外ゲームメディアのUsgamerにまとめられています。
How World of Warcraft Was Made: The Definitive Inside Story of Nearly 20 Years of Development | USgamer
https://www.usgamer.net/articles/how-world-of-warcraft-was-made-the-inside-story
「Warcraft」シリーズは、Blizzard Entertainmentが1994年に発売したPC向けリアルタイムストラテジーゲームです。人間・オーク・ドワーフ・エルフ・アンデッドなどさまざまな種族が戦う「剣と魔法のファンタジー世界」が人気で、2016年には実写映画化もしています。
World of Warcraftが開発される大きなきっかけとなったのは、1997年の「Ultima Online」と1999年の「Everquest」です。どちらも世界的に人気のあったMMORPGであり、Blizzard Entertainmentの社員にもUltima OnlineやEverquestの熱心なプレイヤーが多かったそうです。ある時、いくつかのプロジェクトが白紙になって手の空いたスタッフが集まった時に「MMORPGを作ろう」という流れになったそうです。やがてBlizzard Entertainmentの共同創立者であるアレン・アダム氏が率いるチームによって本格的にMMORPGの制作を行うことが決まり、World of Warcraftの開発が始まることとなりました。
by Marco Vanoli
World of Warcraftの開発では、スタッフのUltima OnlineやEverquestの体験が反映されました。World of Warcraftのリードデザイナーを務めたロブ・パルド氏はもともとWarcraft IIIの拡張パックの開発に携わっていましたが、熱心なEverquestのプレイヤーだったこともあり、アダム氏と昼食をとりながらWorld of Warcraftへのアドバイスを行っていたところ、World of Warcraftの開発に携わるようになったそうです。
例えば、Everquestでは、プレイヤーは死んでしまうと「Bindポイント」と呼ばれる場所に強制的に戻される仕様となっています。さらに、それまで装備していた武器・防具・アイテムは死体の中に取り残されているため、Bindポイントから全く何も装備していない状態で死体のある場所まで向かわなければならないという過酷なシステムでした。そこで、World of Warcraftでは、キャラクターが死んでもその場で復活したり、装備品を持った状態で墓地で復活できるようになっています。
Warcraftシリーズの世界観は、「ヒューマン」「ドワーフ」「ノーム」「ナイトエルフ」「オーク」「トーレン」「トロル」「アンデッド」という8種族が、「Alliance」と「Horde」という二大勢力に分かれて戦っているという設定となっています。パルド氏はこの種族に加えてウォリアー・ハンター・プリーストなど様々なクラスを設定し、クラスの個性が失われないように「Warcraft III」に登場する呪文やスキルを丁寧に割り振りました。
また、「World of Warcraft」のテストプレイを行ったところ、一部のプレイヤーが休みなくプレイし続けていることが判明しました。「オンラインゲームで一部のプレイヤーが長時間延々とプレイすると、ゲームのペースやバランスが崩壊してしまう」と考えたパルド氏は、ゲームにログインして一定時間を過ぎると得られる経験値が半分になるというシステムを導入しました。しかし、このシステムはテストプレイヤーの多くから反発を受けたため、パルド氏は「休憩すると経験値が通常の倍得られる」という逆の発想のシステムを導入しました。
こうして、これまでのオンラインゲームを参考にしながら「最高のMMORPGを作りたい」と開発が進められていたWorld of Warcraftでしたが、チームを率いていたアダム氏が2003年から疲労を訴え、2004年1月に突然Blizzard Entertainmentを退職してしまいます。中核となるメンバーを失ったWorld of Warcraftの開発チームはコンセプトアーティストにジミー・ロー氏を迎え、残されたバランス調整や品質管理を行いました。
「当時多くのMMOがリアルなビジュアルを追求していたので、World of Warcraftではもっと大胆な色や誇張した形を用いて特徴的なビジュアルスタイルを確立しようと思いました」とロー氏は語っています。実際、WoWの中に出てくる建物は少し歪な形をしていて、テクスチャも手塗りのものを使用しています。
こうして完成したWorld of Warcraftは、2004年11月にアメリカとオーストラリアでリリースされました。Ultima OnlineやEverquestの流れを受けながらも、画期的なシステムや丁寧に調整されたゲームバランスは話題を呼び、今では全世界で1000万人以上のプレイヤーを抱え、「世界で最も多くの人にプレイされているMMORPG」と呼ばれるほど成功を収めています。
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