「無料が基本」のオープンソース文化圏で有料ソフトウェアの販売は受け入れられるのか?
「hiri」はOutlook互換の有料メールクライアントソフトですが、WindowsやmacOSに加えてLinuxでも動作するのがその特徴の1つです。どのようにしてオープンソース文化圏のLinuxにクローズドソースで有償のメールクライアントを提供するようになったのかについて、hiriの共同設立者であるデヴィッド・パワーさんがブログに書いています。
A year on — our experience launching a paid, proprietary product on Linux.
https://blog.hiri.com/a-year-on-our-experience-launching-a-paid-proprietary-product-on-linux-db4f9116be08
デヴィッドさんは1年前にUbuntuの開発・サポートを行っている企業「Canonical」から、Linuxユーザー向けにMicrosoftのExchange/Office365を利用できるメールクライアントを作成してほしいと話を持ちかけられたそうです。しかし、これはデヴィッドさんにとってはあまり気乗りしない話だったそうです。というのも、その半年前にLinux版のテストバージョンを作成し、Redditユーザーに使ってみてもらったことがあり、あまり好感触が得られていなかったためです。
コメントの大部分は好意的なものでしたが、デヴィッドさんはあまり手応えを感じられなかったとのこと。コメントには「Linuxユーザーにソースがクローズドなシステムを売るのは非常に難しいだろうね。多くの人はオープンソースという考えを評価してLinuxを使用しているのだから」や、「もしオープンソースだったら20分前にはダウンロードしてコンパイルしていたんだけど」というものもあり、デヴィッドさんはLinux用のクライアントを売るのをやめようと思っていたそうです。
しかし、Canonicalの考えは違いました。Canonicalは自社が開発を支援しているUbuntuを可能な限り多くの人に使ってほしかったので、そのためにはOSにもっと多くのソフトウェアを用意する必要があったというわけ。Canonicalからの申し出を受ける形でLinux版hiriの開発が進み、最終的にはUbuntu Software Centerで提供できることとなったそうで、当時を振り返りながらデヴィッドさんは、「新しい市場に乗り出すチャンスは、見逃すには大きすぎた」と述べています。
こうして1年前に販売されはじめた「hiri」ですが、デヴィッドさんは「この取り組みには価値があった」と手応えを感じているそうです。売上はLinuxユーザー専用にアプリを開発するのも可能だと考えられるほどの金額になっており、デヴィッドさんはLinuxの市場規模がビジネスを続けて行くのに十分な大きさだとして、今後もhiriの開発を行っていくと記しています。
デヴィッドさんは、LinuxユーザーがWindowsユーザーやmacOSユーザーと同じように、ソフトウェアにお金を払う意思があるとわかったそうです。それに加えて、Linuxユーザーは大部分が開発者なのでより品質の高いフィードバックが得られたとのこと。デヴィッドさんは「別の製品を開発することになったら、まずLinux版から始めるだろう」と述べています。
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