ゲームを普段の生活に支障が出るほどやり過ぎてしまう「ゲーム障害」は病気であると分類される
by Nicolas Gras
世界保健機関(WHO)が怪我や病気を分類する国際的なガイドラインである「疾病及び関連保健問題の国際統計分類(ICD)」の改訂版を発表し、普段の生活に支障が出るほどゲームをやり過ぎてしまう「ゲーム障害(ゲーム依存症)」を、新しい病気としてガイドラインに加えたことが明らかになっています。
Video game addiction is a mental health disorder, WHO says
https://www.usatoday.com/story/tech/nation-now/2018/06/18/gaming-disorder-who-classifies-video-game-addiction-health-disorder/709574002/
スイス・ジュネーブに本部を置くWHOが作成したICDの改訂版によると、他の利益や日々の活動よりもゲームを優先し、悪影響が出たにもかかわらずゲームを継続したり段階的に優先したりしてしまうような状態を「ゲーム障害」と認定するとのこと。ICDの改訂版は世界中の専門家が病状の診断と分類を行うために使用するものであるため、病院でゲーム障害であると診断される日が来るのもそう遠くないのかもしれません。
しかし、アメリカ精神医学会は「ゲーム障害は独自の精神障害とみなすには十分な証拠が揃っていない」と表明しており、WHOの決定は性急すぎると批判しています。もともと精神病の専門家の中にはゲーム障害を疾病であると認めていない人が複数おり、そういった人々は、ゲーム障害を精神病の一種とする意見を「科学よりも道徳的な懸念に根ざしたもの」と批判しています。
実際、2018年初頭にはアメリカ心理学会の一部門であるThe Media Society for Media Psychology and Technologyが、WHOがゲーム障害を疾病認定することに対する懸念を表明する声明を出しています。加えて、フロリダ州デランドのステットソン大学の心理学者であるクリストファー・ファーガソン氏は、「堅実な研究基盤を持っていない診断である懸念がある」と指摘しています。ファーガソン氏によると、WHOによるゲーム障害に関する記述には、明確な治療法が記されていないとのことです。
しかし、WHOは「ゲームをしている人の全体の数に比べれば、ゲーム障害にあたる人は少ない」としつつ、「行動パターンを研究して治療プログラムを作成するには十分な数の患者がいる」と述べています。なお、2016年11月に発表された研究によると、ゲーム障害であると診断できる可能性があるのは一般人口の0.3~1%程度とのことです。
なお、アイオワ州立大学の心理学教授ダグラス・ジェンティル氏によると、ゲームに熱中していればゲーム障害であるというわけではなく、友人関係や趣味をおろそかにしないままゲームに打ち込んでいるならば「ゲーム障害とは言えない」とのことです。
精神病に苦しむ10代の若者を治療するためのセンターでプログラム開発責任者を務めるヘザー・シニア・モンロー氏は、「医療従事者はゲーム自体よりもゲーム障害を引き起こすことになる理由の部分に重点を置いている」と語っており、ゲーム障害になる理由は「薬物乱用や賭博にのめり込む理由と近い」「これらの行動は自己を傷つけるような行動であり、現実を逃れるための方法でもある」と説明。さらに、若者がなぜ現実から逃れたいと感じるのかについて、「うつや不安が原因」とモンロー氏は語っています。
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