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ロケットの噴射ガスは大気の組成を変えて地球の環境に影響を与える可能性がある

By NASA HQ PHOTO

世界各国で進められる宇宙開発プログラムや、近年ではSpaceXのような民間宇宙開発企業により毎年多くのロケットが宇宙へと打ち上げられています。打ち上げの際にはとてつもない爆音とともに大量の燃焼ガスがロケットエンジンから吐き出されているわけですが、この時に生じている物質が地球の大気に変化を与える可能性があるとして、その実情をデータで把握する必要性が唱えられています。

Why it’s time to study how rocket emissions change the atmosphere - The Verge
https://www.theverge.com/2018/5/31/17287062/rocket-emissions-black-carbon-alumina-particles-ozone-layer-stratosphere

発射台から打ち上げられたロケットは、まばゆい光とごう音、そして白い煙を残しながら宇宙へと飛び立っていきます。ロケットは数百キログラム~数十トンの貨物を打ち上げ、地球を回る軌道に投入することができるのですが、その打ち上げの際には推進剤として貨物の質量の10倍程度の燃料を消費しています。

By Steve Jurvetson

ロケットに用いられる燃料は多くの場合、灯油とほぼ同じケロシンや液体水素が用いられ、これらの燃焼剤を液体酸素と混合させて燃焼させることで極めて強い力を生み出しています。また、液体燃料を用いない「固体燃料ロケット」の場合は、ロケットの胴体の中に詰められた固形の燃料と酸化剤の混合物に火をつけることで燃焼ガスを噴射し、同様に強い力を生み出します。


以下のムービーは、固体燃料ロケットの燃焼テストの様子が収められたもの。打ち上げの際には、630トンにもおよぶ固体燃料をわずか120秒あまりで使い切ってしまいます。

SLS Qualification Booster Test at Orbital ATK - YouTube


燃料を燃やして生じる物質、といえば「温室効果のある二酸化炭素」が挙げられることが多いと思われますが、実はロケットの打ち上げで生じる温室効果ガスはさほど心配する必要がないとのこと。非営利組織「The Aerospace Corporation」でロケットが大気に与える影響を研究しているマーティン・ロス氏は「今後ロケットビジネスは現在の1000倍レベルで増加することが見込まれますが、排出される二酸化炭素や水蒸気による影響は、世界中の経済活動によって生み出されている温室効果ガスに比べるとまだまだ小さい」と述べています。


むしろ問題になるのは、ケロシンを燃焼させた際に残る「すす」や、固体ロケットの燃料に含まれる小さなアルミの粉「アルミナ」のような物質です。不完全燃焼している時のストーブを思い浮かべるとよくわかるように、石油から作られるケロシンは燃焼によってすすが生じます。また、固体燃料ロケットの場合は燃焼ガスの噴射速度を上げるために、固形燃料の中に大量のアルミナが混ぜ込まれています。これらの物質がロケット打ち上げの際に地球の大気の中にまき散らされ、長ければ5年にわたって大気圏にとどまることによる影響が懸念されています。

これまでの研究からもすでに、これらの物質は高度10km~50kmの大気に含まれていることが確認されています。本来、これらの物質はこの大気中には存在しないはずであることから、ロケットの打ち上げによってもたらされたものであることはほぼ間違いありません。

By WILL POWER

上空の大気を漂うこれらの物質は、酸素の同素体であるオゾンを分解してしまうことがわかっています。オゾンは大気の高いところにオゾン層を形成し、宇宙から降り注ぐ紫外線を遮る役割を持っているのはよく知られていますが、ロケットから吐き出された物質がこのオゾン層を徐々に破壊していることが徐々に明らかになっています。もちろん、オゾンは絶え間なく生成され続けているのでいつか枯渇するというわけではないのですが、今後ロケットの打ち上げ回数が飛躍的に増加すると、オゾン層にはこれまでにない強い影響が及ぶことが考えられます。

2018年時点で年間に打ち上げられるロケットの数は80~90程度で、これらのロケットから排出される「すす」やアルミナは合計で11トンに及ぶとロス氏は計算しています。しかし今後はロケットの打ち上げ回数が増加することはほぼ確実視されており、現在と同じ技術を使ったロケットの打ち上げが増えると大気中にまき散らされる排出物はさらに増加することが避けられません。これらの物質は、前述のようにオゾン層の破壊を引き起こすとみられるほかにも、「すす」が太陽の光を遮ることで日射にも一定の影響が及び、ひいては気象にも何らかの影響が及ぶと見られています。さらに、これらの物質はロケット打ち上げ場所から上空の偏西風などに乗って地球全体へと拡散され、各地の異常気象を引き起こす可能性も示唆されています。

By Beth Scupham

ロス氏と彼の同僚であるジム・ヴェダ氏は、今後のためにもこれらの排出物がもたらす影響についてより詳細な調査を実施すべきであると述べています。これまでに得られているデータは、上空のごく一部のデータと、あとは実験室で得られた研究結果から導かれる推論であるため、大気上空の実際のデータを取得して詳細な実態を把握することが必要であると唱えられています。

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in メモ,   乗り物,   サイエンス, Posted by darkhorse_log

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