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ブレーキ性能不足が指摘されていたテスラ・モデル3、ファームのアップデートで性能を改善して「オススメ」をもらうことに成功


アメリカで広く支持される製品評価メディアのConsumer Reports(コンシューマー・レポート:CR)でブレーキの性能不足を指摘されていたテスラの普及価格帯EV「モデル3」が、問題となっていたブレーキ性能を改善させて「Recommend(オススメ)」の評価を受けることに成功しました。この性能改善はOTA(無線経由)でのファームウェアアップデートにより実施されており、当初の指摘からわずか一週間ほどで自動車の性能が約13%も改善されるという画期的な出来事ともなっています。

Tesla Model 3 Gets CR Recommendation After Braking Update - Consumer Reports
https://www.consumerreports.org/car-safety/tesla-model-3-gets-cr-recommendation-after-braking-update/

Elon Musk slams the media, then fixes a serious Tesla Model 3 problem discovered by the media – BGR
http://bgr.com/2018/05/30/tesla-model-3-specs-brakes-consumer-reports-green-light/

ことの発端は、CRが実施したモデル3の評価試験で、モデル3のブレーキ性能が同クラスの他車よりも劣る点が発見されたことでした。時速60マイル(約96km/h)からのフルブレーキによる制動距離(停止するまでの距離)の計測では、モデル3は152フィート(約46メートル)と現行の市販車の中で最悪で、車重が2.5トンもある巨大なピックアップトラックのフォード・F-150にすら7フィート(約2メートル)も劣るものだったとのこと。

テスラ・モデル3、コンシューマーレポートの「オススメ」評価をもらえず - GIGAZINE


これに対して、テスラの広報は「モデル3の制動距離は平均133フィート(約41メートル)だ」と表明。一方でイーロン・マスクCEOはこの問題を解決すべく、車体のファームウェアをアップデートすることでブレーキ性能を向上させることを表明していました。

「問題あり」と評されたテスラ・モデル3のブレーキを改善するとイーロン・マスク氏が表明 - GIGAZINE


テスラが実施したファームウェアアップデートを受け、CRはモデル3の再テストを実施。その際には、当初のテストと同じように時速60マイル(約96km/h)からのフルブレーキによる制動距離(停止するまでの距離)が計測されました。前回の計測では制動距離が152フィート(約46メートル)と現行の市販車の中で最悪の値を記録していたモデル3は再テストの結果、133フィート(約40メートル)という値を記録。前回記録から制動距離は19フィート(約5.8メートル)も短縮され、12.5%の性能アップを果たしています。


テスラの広報担当者によると、今回の改良点はモデル3のABSの制御ソフトウェアの見直しを行うことで、さまざまな状況においても適切に動作することを可能にしているとのこと。これまで、「ソフトウェアのアップデート」で自動車の走行性能がこれほどまでに短い期間で向上するという例は存在せず、CRで自動車テストのディレクターを務めるジェイク・フィッシャー氏は「これまで19年にわたってCRで1000台以上の車両をテストをしてきましたが、OTAアップデートを使って走行性能を向上させた自動車はみたことがありませんでした」と、今回の出来事について述べています。

マスク氏は問題発覚直後の5月22日に以下のツイートを公表。「これはファームウェアのアップデートで修正可能です。今後数日でリリースされるでしょう」と述べており、リコールを行って車体のパーツを交換するなどの大規模な措置をとることなく走行性能を向上させてしまう方針を明らかにしていました。


そして今回、調査能力に定評のあるCRにより、実際に性能の向上が確認されました。これまでにも、車体の制御ソフトウェアを自動車ディーラーで書きかえて問題を解消するという対策が採られることはありましたが、今回のケースのようにわずか一週間ほどでブレーキ性能がソフトウェアの更新で向上したというのは世界初といっても過言ではないはず。いうなれば、これはまさにドライビングゲーム「グランツーリスモ」のアップデートで走行性能の調整が入るのと同じように、現実世界の自動車の性能が向上してしまうという画期的な出来事といえます。

一方で、前回のテストで指摘されていた風切り音の大きさやロードノイズ、後部座席の乗り心地の悪さなどは改善がみられていないとのこと。マスク氏によるとこの問題は現在生産中の車両では対策済みとのことで、CRでは通常行わない「メーカーからの車両貸出」を受けて再評価を行う方針であるとしています。また、センターコンソール部分のディスプレイに集約された各種コントロール機能の使い勝手の悪さや安全性の問題点についても、今回のアップデートで改良が入っていることが確認されているとのこと。


今回のブレーキ性能向上により、モデル3は「及第点」のブレーキ性能を手に入れましたが、マスク氏はさらに「クラス最高レベル」のブレーキ性能を実現するという方針を表明しています。CRは必要に応じて車両の再テストを実施すると述べています。願わくば、走行性能と併せて運転支援機能「オートパイロット」の精度をさらに上げる対策が採られることも期待したいところです。

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in ソフトウェア,   乗り物, Posted by darkhorse_log

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