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Googleが病院を訪れた患者の身に「次に何が起こるか?」を予測する技術を開発

by rawpixel

患者の電子カルテのデータを読み、病院を訪れた患者の身に「次に何が起こるのか?」を予測する技術をGoogleがNature Partner Journals: Digital Medicineで発表しています。この予測モデルにはディープラーニングが用いられ、高い正確性で「患者の死期」「長期入院するか」「再入院するか」などを予測できるとのこと。

Scalable and accurate deep learning with electronic health records | npj Digital Medicine
https://www.nature.com/articles/s41746-018-0029-1

Google AI Blog: Deep Learning for Electronic Health Records
https://ai.googleblog.com/2018/05/deep-learning-for-electronic-health.html

体の調子が悪くて病院にいく時、私たちの頭の中には「いつ家に帰ることができるのだろうか?」「いつ調子がよくなるのだろうか?」「また病院に来なければいけないのだろうか?」など、数々の疑問が浮かぶはず。これらの疑問に正しい答えを与えることができれば、医師や看護師はより安全で迅速な処置が行えます。「次に患者の身に起こることは何か?」が予測可能であれば、状態が悪化する前に医師らが先手を打つことも可能です。

このような技術を可能にするため、Googleはカリフォルニア大学サンフランシスコ校、スタンフォード大学医学部、シカゴ大学病院と共同して研究を行いました。

研究者が着目したのは、通勤中に交通状態を予測するのと同じタイプの機械学習。この機械学習で患者の状態予測を行うためには「スケーラビリティ」と「正確性」の2点をクリアする必要がありました。

◆スケーラビリティ
「スケーラビリティ」とはつまり、どのような病院のシステムであっても、あるいはどのような結果であっても、予測が容易に行われなければならないということ。多くの場合、ヘルスケアのデータは複雑で結果が対立するものもあるためです。

Electronic Health Record(電子健康記録/EHR)は非常に複雑で、体温1つとっても、それが耳によって測られたのか口内で測られたのか、あるいは脇の下で測られたのかによって、異なる意味を持ちます。さらに、病院はおのおのが異なった形でEHRをカスタマイズしているため、同じようなケアを受けている2人の患者でも、病院が異なれば全く違うデータのように見えてしまうとのこと。そのため、機械学習を適用する前に、研究者らは患者の記録をFHIRという一貫した方法で表現し直す必要があったそうです。

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フォーマットがそろったら、あとはディープラーニング・モデルが初期のデータから直近のデータにいたるまで、全てのデータ要素を読み込み、どのデータが結果予測の手助けになるのかを学習していきます。数千という数のデータ要素が含まれますが、人間が行う必要があるのは再帰型ニューラルネットワークフィードフォワードニューラルネットワークをベースとしたいくつかのディープラーニング・モデルを開発することのみだとのこと。

◆正確性
提示された予測は臨床医に問題を知らせるべきですが、「誤報」であってはなりません。この点、より電子カルテが広まり多くのデータが使用されることにより、より正確性の高い予測モデルが作られるようになると見られています。

Googleのモデルが「特定の結果が予測される人」と「そうでない人」を見分けることができるか、という正確性の測定には「受信者操作特性(ROC)」という基準が使用されました。ROCでは1.00が「完璧」、0.5が「偶然」とされるところ、「患者が長期にわたって入院するか」に対するGoogleのモデルが行った予測の正確性は「0.86」でした。これは、従来の手法の「0.76」という値を上回るもの。また、患者の死の予測の正確性は「0.95」であり、従来の手法の「0.86」という値を上回ったこと、再入院の予測の正確性は「0.77」で従来の手法の「0.7」という正確性を上回ったことから、かなり高い正確性で「次に患者の身に何が起こるのか」を予測できているといえます。

また、Googleの予測モデルは、患者が医師からどのような処方を施されているかから、患者が何に対して治療されているのかも予測。これは患者の病気の診断を行うものではありませんが、主治医がどのような治療を行っているかを記録するという点は意味があるものです。

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さらに、Googleの予測モデルは、「予測を行う際に重要なデータ要素」を示すため、医師に対して重要なデータを示すという意味でも有用とみられています。

なお、Googleは予測モデルを作るためにパートナーから受け取った電子カルテを元にディープラーニングモデルを使用していますが、Googleが電子カルテを受け取る際には個人情報が除かれ非特定化されていたと記されています。データは最先端のセキュリティで保護され、アクセス制限や暗号化が行われていたとのことです。

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