メモ

石油産業は電動バスの普及によって少なからず影響を受け始めている


バッテリーに蓄えた電気だけで走る電気自動車(EV)は、当然のことながら化石燃料を一切消費しません。電気自動車の普及が著しいと言われる中国では公共交通である乗り合いバスを電気自動車に移行させる動きが強まっており、それに伴って化石燃料の消費量が減少するという事態が起こっているとのことです。

Electric Buses Are Hurting the Oil Industry - Bloomberg
https://www.bloomberg.com/news/articles/2018-04-23/electric-buses-are-hurting-the-oil-industry

2010年代前半、ベルギーで開催された業界イベントで中国のEVメーカーBYD Co.が電気バスの初期モデルを公表したとき、集まった人々たちは「冗談だろ」と真面目に取り合おうとはしませんでした。その様子をBYDでヨーロッパ地域の戦略を担当するイズブランド・ホー氏は、「誰もがみな、BYDはオモチャを作ろうとしていると笑いました」と振り返ります。しかしそこから約7年がたった2018年、中国では電気バスが破竹の勢いで普及し続けています。


12億ともいわれる人口を持つ中国にとって、国民の生活によって引き起こされる環境破壊を軽減することは喫緊の課題の一つとなっています。急激なペースで自動車の普及が進んだことで、中国のあらゆる都市では大量の排気ガスが吐き出されていますが、1台で乗用車の約30台分という燃料を消費するバスからの排気ガスもまた、大気汚染を引き起こす原因として対策が必要とされてきました。

そんな問題の解決策の一つとして進められているのが、国家レベルでの電気バスの導入です。2017年時点で世界を走っていた電気バスのうち、なんと99%は中国国内で走っていたバスだったことが明らかになっており、しかもその台数は中国を走る自動車全体の17%を占める規模となっていたとのこと。さらに、中国では引き続き電気バスの導入が進められており、5週ごとに9500台の電動公共交通車両が増え続けています。「9500台」という数字は、ロンドン市内を走る全ての公共交通機関の車両の数と同じもの。つまり中国では、5週ごとにロンドン市内を走っているバスなどと同じ量の電気バスが増え続けているというわけです。

爆発的な電気バスの導入により、世界では燃料需要の落ち込みが見られるようになっています。以下のグラフは、EVの普及によって需要がなくなったガソリン(黒)と軽油(ピンクおよび青)の規模を累積グラフで表示したものなのですが、2014年頃からバス向けの軽油の減少量が他に比べて大きく伸びていることがわかります。


試算によると、電気バス1000台ごとに1日あたり500バレル(約8万2000リットル)の軽油が必要とされなくなっているとのこと。また、予測では2018年末の時点で必要がなくなった化石燃料の量は2017年から37%増えて、約27万9000バレルに達するとみられており、これはギリシャが1年に消費する化石燃料に相当します。そのうちバス向けの軽油は約23万3000バレルと、全体の84%を占めています。


BYDが生産する電気バスは、中国南部の都市・深センを走る電気バスの大部分を占めています。2011年に初の電気バスを納車したBYDは次々に電気バスを世に送り出し続けており、2017年12月の時点では深センを走る全ての電気バス1万6359台のうち約1万4000台がBYD製の車両であるとのこと。BYDはこれまでに3万5000台の電気バスを生産してきており、今や年間で1万5000台の電気バスを生産できる態勢が整えられています。


BYDの試算によると、同社がこれまで納車してきた電気バスは累計で17億kmを走行しており、68億リットルの燃料を節約することができたとのこと。BYDのホー氏は、BYD製の電気バスによって1800万トンの二酸化炭素ガスが削減されているとしており、これは自動車380万台分に換算される量となっています。

電気バスの普及によって二酸化炭素などの温室効果ガスや環境汚染物質の排出量が削減されたことは良いことではありますが、一方で、石油の減少分を補完するために別の方法でエネルギー源が作り出されていること、そのためにどの規模の温室効果ガスが排出されたのかをトータルで考える必要があることはいうまでもありません。大量の電気バスが走るための電力は発電所で作り出される必要がありますが、増えた電力需要を満たすために石油や天然ガス、石炭などの消費量が増えていてはその効果は限定的なものとなります。

しかし、石油と違って電力は太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーであり、環境により少ない負荷で作り出すことができるというメリットがあります。今後も電気バスの普及が広まり、さらに再生可能な発電方法によって電力が多く作り出されるようになることで、電気バスの普及が本当の意味で良い結果をもたらすことになってくるといえそうです。

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in メモ,   乗り物, Posted by darkhorse_log

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