AIに「夢」の中でゲームをプレイさせてみる実験が進行中
by Henti Smith
私たちヒトは寝ているときに夢を見ますが、夢の内容はとりとめがなく馬鹿馬鹿しいモノであることがほとんど。そんな夢の中で「人工知能に1993年発売の名作FPSゲーム『DOOM』をプレイさせる」という実験を、ディープラーニングの研究者たちは行っているとMotherboardが報じています。
World Models
https://worldmodels.github.io/
Watch a Computer Learn to Play ‘DOOM’ Inside a Dream - Motherboard
https://motherboard.vice.com/en_us/article/43bxjj/watch-deep-learning-ai-computer-play-doom-dream
「夢の中で現実世界に通じるスキルを学習し、起きている最中にそれを生かす」ということは、寝ている時間を有効活用する理想的なアイデアです。過去には睡眠学習ブームが到来したこともありましたが、実際に夢の中でさまざまなスキルを習得することは難しいとされています。しかし、今でも睡眠時に人間に学習する能力があるかどうかの研究は続けられており、スイスのベルン大学に勤めるダニエル・エルラッハー博士は明晰夢の状態でスクワットさせたりダーツを投げさせたりして、現実世界に明晰夢中で学習したスキルが生かせないかと探っています。
ヒトにおける夢の研究が続けられている一方、コンピュータープログラムである人工知能は夢の中でスキルを習得できるということが、ほぼ明らかになっています。ディープラーニングの研究者であるデビッド・ハ氏やユーゲン・シュミットフーバー氏らは、1993年に発売された名作FPSゲーム「DOOM」の夢の中で見ているようなバージョンを作りだし、人工知能にプレイさせることに成功しています。
by Bianca Smith
ハ氏らが人工知能に「夢の中のDOOM」をプレイさせるために設定したのは、まず1つ目が実際のDOOMプレイ時の画面に基づいたゲーム環境の圧縮バージョン、つまり質の悪い音声や映像を提示するモデル。2つ目が、「ゲームの状況が次のフレームでどうなるか」の確率分布を、人工知能が夢の中で勝手に出力するための情報。3つ目が、人工知能が「夢の中でコントローラーを操作した」時、それに応じてゲームが変化するコントローラーのモデルです。3つの要素が組み合わさることで、人間が夢の中でゲームをプレイしているのと同じように、人工知能が仮想の幻覚的なゲーム世界を認識して、その中でDOOMをプレイすることが可能になるとのこと。
ハ氏らが人工知能にプレイさせるために作成した、「DOOMを夢の中で見ているようなバージョン」のデモページは以下からアクセスできます。画面は全体的にぼやけており、ゲーム中で何が起きているのかはかなりわかりづらくなっているのですが、この画面から人工知能がDOOMをプレイしうまくプレイできるようになるべく学習を行っています。
DoomRNN Demo
https://worldmodels.github.io/doomrnn/
研究チームは「人工知能に夢の中で抽象的なゲームをプレイさせるという手法は、複雑な物理現象をより迅速に計算することを可能にするかもしれない」と述べており、ただ人工知能にゲームをプレイさせようという目的だけで行っている実験ではない模様。しかし、人間が夢の中でゲームをプレイしてもそれは単なる幻覚であり、現実世界に役立つ可能性は薄いとMotherboardはまとめています。
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