紙に描かれた曲線の長さを測ることが可能な「シュタインハウス・ロングメーター」とは?


普通の定規では測ることが難しい、紙に書かれた曲線の長さを測ることができる仕組みが「シュタインハウス・ロングメーター」です。そんな「シュタインハウス・ロングメーター」について解説したムービーがYouTubeに公開されています。

Steinhaus Longimeter Review / HowTo


いくつもの線が交差して不思議な模様を描いているこの紙が、シュタインハウス・ロングメーターです。


シュタインハウス・ロングメーターは、平面に描かれた曲線の長さを測定するために発明されました。


使い方は簡単。測りたい曲線の上に、透かしの入った紙に印刷されたシュタインハウス・ロングメーターを重ねて……


シュタインハウス・ロングメーターの直線と曲線が交差した数をカウントするだけ。曲線と直線が交差した数により、ミリ単位で曲線の長さを測ることができます。


シュタインハウス・ロングメーターを発明したのは、20世紀に活躍したポーランドの数学者ヒューゴ・シュタインハウス氏。第一次世界大戦から第二次世界大戦にかけて、幾何学や三角法などの分野で多くの発見をなし、ゲーム理論の創始者の一人とされる人物です。


当時、シュタインハウス氏を含むポーランドの数学者たちは、バーに集まってさまざまな問題をノートに書き解決を探っていたとのこと。


その中でシュタインハウス氏は曲線の長さを測る方法を探り、方眼紙のマス目の罫線に交差した回数で曲線を測ることができないかと考えました。


まずは直線について考えてみましょう。6インチ(約15センチメートル)の直線を紙に描き……


直線と平行に0.5インチ(約1.3センチメートル)の方眼紙を重ねます。


この状態で直線とマス目の罫線との交差点の数をカウントすると……


12。0.5インチ(約1.3センチメートル)のマス目の罫線に12回交差したので、「仮に『線の長さはマス目の罫線と交差した回数×0.5インチ(約1.3センチメートル)』としたら、直線はだいたい6インチ(約15センチメートル)なのでは?」と予想できます。


次に、方眼紙を斜めにして直線とマス目の罫線の交差点をカウントしてみましょう。


今度は17。先ほどと同じように、直線がマス目の罫線と交差した回数×0.5インチ(約1.3センチメートル)が線の長さだとしたら、今度は8.5インチ(21.6センチメートル)という計算になってしまいます。


直線ですらこのように誤差が出るのに、曲線になればなおさら上手に測ることはできません。


この誤差を修正するために頭を悩ませたシュタインハウス氏は、「一度曲線とマス目の罫線との交差点をカウントした後に、マス目を回転させてもう一度カウントしたらどうか?」と考えました。


「最初に1回交差点の個数をカウントし、次にマス目を30度回転させてもう一度交差点をカウントし、最後にまた30度マス目を回転させて交差点を測る」という仕組みをシュタインハウス氏は考案。


1つの曲線とマス目の罫線との交差点を、3つの角度でカウントすることで誤差を減らそうとしたのです。


また、カウントした交差点の数と曲線の長さがわかりやすく対応するよう、シュタインハウス氏は三角法を使ってマス目の大きさを考案。その結果、マス目を形成する直線は3.82ミリメートルの間隔を空けると、最も1回の交差につき曲線の長さが1ミリに近くなると判明しました。


そして、方眼紙いちいち手動で30度回転させるのは面倒であり、誤差も出やすいため……


初めから3パターンの方眼紙を重ねて印刷したシートを考案。実はこのシート、本来であれば3.82ミリメートル間隔の方眼紙であったものを、インチ法に直して作った「インチ用シュタインハウス・ロングメーター」です。


本当に3.82ミリメートル間隔の方眼紙で作られたシュタインハウス・ロングメーターは、非常に細かいものになります。


シュタインハウス・ロングメーターで曲線と直線が交差した数をカウントしていき、カウントした数がそのままミリメートル長に換算できます。例えば「126回交差した」のであれば、曲線の長さはおよそ12.6センチメートルであると推測可能。しかし、ミリメートル長に対応した本来のシュタインハウス・ロングメーターは、あまりにも細かくてカウントするのがとても大変。


現在では「キルビメータ」という、主に地図上の曲線の長さを測るために使用されるメーターも開発され、シュタインハウス・ロングメーターが活躍する場面はめったになさそうです。


ここで、実際にシュタインハウス・ロングメーターとキルビメータで同じ曲線を測ってみて、シュタインハウス・ロングメーターがどれほどの精度を誇るのか調べて見ます。


キルビメータで測ってみた結果……


曲線の長さは34.5センチメートル。


ミリメートル長のシュタインハウス・ロングメーターだとカウントが難しすぎるので、インチ換算のシュタインハウス・ロングメーターで計測してみます。インチ換算のシュタインハウス・ロングメーターでは、曲線とメーターが交差した数を10で割った数が、そのまま曲線のインチ長になります。


1、2、3、4……


114。これをインチに直してからさらにセンチメートルに戻すと、28.9センチメートル。あれ?


やはり部分ごとにさまざまな曲がり方をする曲線を方眼紙で測るのは、なかなか難しいようです。


シュタインハウス氏はこのシュタインハウス・ロングメーターを売り出そうとしていた形跡がありますが、残念ながらすぐにナチスのポーランド侵攻が始まり、ユダヤ系であったシュタインハウス氏はナチスの目を逃れてひっそりと暮らさなければなりませんでした。結局シュタインハウス・ロングメーターは日の目を見ることなく、わずかな数学愛好者にのみ知られる存在となってしまったのです。


なお、このムービーを作成したクリス・スタエッカーさんは、シュタインハウス・ロングメーターの特設ページも作成しています。

Chris Staecker: Steinhaus Longimeter
http://cstaecker.fairfield.edu/~cstaecker/machines/longimeter.html

曲線がメーターと交差した回数がそのまま曲線のミリメートル長になる、本来のシュタインハウス・ロングメーターは、以下のサイトからダウンロード可能。

longimeter mm.pdf
(PDFファイル)http://cstaecker.fairfield.edu/~cstaecker/files/machines/filer.php?name=longimeter%20mm.pdf

インチに対応した、曲線がメーターと交差した回数を10で割った数が曲線のインチ長になる、インチ換算のシュタインハウス・ロングメーターは以下のサイトからダウンロードできます。

longimeter in.pdf
(PDFファイル)http://cstaecker.fairfield.edu/~cstaecker/files/machines/filer.php?name=longimeter%20in.pdf

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in 動画,   デザイン, Posted by log1h_ik