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日本生まれで世界中で活躍するトヨタ「ランドクルーザー」の歴史


トヨタが60年以上にわたってシリーズを継続してきたクロスカントリー車「ランドクルーザー」(通称「ランクル」)は、その起源をさかのぼると1950年代の軍用車へと行きつきます。高い走破性能と耐久性、そして近年は乗り心地や豪華設備がふんだんに盛り込まれるに至っているランクルの歴史を、自動車関連YouTubeメディアのDonut Mediaがムービーにまとめています。

Toyota Land Cruiser - Everything You Need to Know | Up to Speed - YouTube


アフリカの炎熱で乾いた大地から……


極寒で雪に閉ざされる北極圏の厳しい環境まで……


そんな環境で活躍しているクルマがトヨタ・ランドクルーザーです。


ランドクルーザーは、湿地帯のようなぬかるんだ道なき道を行き……


岩だらけの路面でもグイグイ進むことができる走破性能を備えています。


Donut Mediaのジェイムズ・パンフリーさんがやって来たのは、ユタ州ソルトレークシティーにあるLand Cruiser Heritage Museum。文字どおりランドクルーザーばかりを集めた博物館で、過去の全モデルが100台以上も展示されています。


「ランドクルーザー」の歴史は1951年に始まります。


そのルーツは、第二次世界大戦の頃にアメリカ軍から鹵獲(ろかく)した軍用車両「ジープ」をもとに開発された四式小型貨物車こと「AK10型」四輪駆動車にあります。これをもとに、1951年に「トヨタ・ジープBJ型」の試作車両が完成しました。


この車両は、当時の警察予備隊(現在の陸上自衛隊)への納入を狙って開発されたもの。


しかし、当時発生していた朝鮮戦争の際に、アメリカ軍が使う車両としても生産が行われ、トヨタに大きな利益をもたらしました。


その朝鮮戦争は、1953年に休戦協定が結ばれたことで落ち着きを見せます。


しかしトヨタはBJ型の生産を継続することを望みます。その理由は「儲かるから」。


そして1955年、「20系」と呼ばれる新しいランドクルーザーが登場しました。


このモデルは、軍用車両そのものであったBJ型から脱却し、乗用車としての性能を織り込んだ車両として開発されました。当初はガソリンエンジンを搭載した「FJ20」が、そして後にディーゼルエンジンを搭載した「BJ20」が登場しました。


ジェイムズさんは、この20系がその後のトヨタの礎になったといいます。20系がなければ、その後の「スープラ」や……


「MR2」も誕生せず……


そして世界で人気の「ハチロク」こと「AE86」も生まれることはなかったかもしれません。


トヨタは1936年から自動車の生産を行ってきました。


戦後、アメリカ市場への参入を図ったトヨタでしたが、投入した「トヨタ・クラウン」は市場のニーズに合致しなかったこと、そして圧倒的な性能不足が原因で、ついには販売停止の状況に陥ります。


そんな時に北米トヨタ(現「TMS」)の売上を支えたのが、同時期に投入されていた「20系」ランドクルーザーだったというわけです。


その後、この「クラウン×ランドクルーザー」の組み合わせでの販路拡大が世界中で行われたとのこと。このようにして、トヨタは世界中でその存在感を確かなものにしてきました。


ここで、ランドクルーザーの型式に用いられている文字について解説。「F」は直列6気筒ガソリンエンジン・F型エンジンを搭載していることを意味します。


そして「B」は、直列4気筒ディーゼルエンジン・B型エンジン(初代)搭載の意味。


「H」は、直列6気筒ディーゼルエンジン・H型エンジンの搭載を意味します。


そして「J」は、トヨタで「ランドクルーザー」を意味する記号。ただしその起源は「ジープ」にあるともいわれています。


そして末尾の数字は、車体の長さを意味します。「40」から「42」は「ショートホイール型」の意味。


「43」「44」、一つ飛ばして「46」は、「ミディアムホイルベース型」


そして「45」と「47」は、「ロングホイールベース型」を意味しています。


この法則に従うと、「FJ44型」のランドクルーザーは、「直列6気筒ガソリンエンジンを搭載したミディアムホイルベース型のランドクルーザー」という性格を備えていることがわかるというわけです。


話をランドクルーザーの歴史に戻します。1960年、通称「ヨンマル」と呼ばれる「40系ランドクルーザーが」デビューします。このモデルは1984年まで24年間にわたって生産されたモデルで、「ランクルといえばヨンマル」という人も多いモデルです。


この頃になると車両生産の技術が大きく向上したことで、ヨンマルは20系に比べて品質がアップしました。


また、ギア比のセッティングを見直したことで、悪路での走破性も大きく向上しています。


40系の生産が続く中、1967年には「55系」ランドクルーザーが登場。それまでの路線とは大きく異なる、乗用車を強く意識したボディデザインが特徴的なモデルです。


ランクルシリーズ中、もっともかわいらしいルックスを持つ55系は、基本的に乗用車の一種である「ステーションワゴン」の使い勝手を狙って開発されたモデルとのこと。その特徴的なスタイルのため付けられたニックネームが……


「アイアンピッグ」(鉄の豚)だったそうです。


55系は、それまでの実用一辺倒だったランドクルーザーの流れを大きくシフトさせるきっかけになったモデルと言えます。


ランドクルーザーが現在につながる路線を歩み始めたのが、1980年に登場した「60系」ランドクルーザー、通称「ロクマル」です。


60系は、ランドクルーザーのDNAに含まれる「オフロード性能」を高く保ったままで、快適性能を大きく高めたという意味で画期的なモデルです。


インテリアのデザインも、完全にラグジュアリー寄りで乗用車としての快適性が高められており、「電動ムーンルーフ」と呼称されたサンルーフを装備するモデルも用意されました。


しかし、クロスカントリー車をベースにするランドクルーザーは、おのずと「乗用車」としての性能を追求する上において限界に直面する事になります。


その最も大きな部分を占めるのが、駆動系に「リジッドアクスル」と呼ばれる方式を用いていたことでした。これは、左右のタイヤが車軸でつながっている構造を指すものです。


リジッドアクスルは構造がシンプルなため、高い信頼性を確保でき、修理も容易です。また、悪路での走破性を高くすることができるために、クロスカントリー車としてのランドクルーザーとしてはピッタリの特徴を備えていたといえます。


しかし、特に前輪のリジッドアクスルは乗り心地を良くしにくいという欠点がありました。この問題を解決するため、トヨタは柔らかいスプリングを採用したモデルを登場させます。これにより、悪路での走破性もアップしたとのこと。


1984年デビューの「70型」ランドクルーザー、通称「ナナマル」は、24年という長寿命を誇った「ヨンマル」の後継として登場したモデル。


クロスカントリー車として優れたヨンマルの性能をさらに磨き、車体パネルの肉厚を厚くするなど耐久性を高める改良が加えられ、「ランドクルーザー」の高い悪路走破性を受け継ぎ、その名に恥じない性能を備えたモデルとなっていました。


ランドクルーザーはその後、高級SUVとしての進化の道をたどることに。1989年にデビューした「80系」ランドクルーザーは、悪路での走破性を保ちつつ内外装を豪華にしたモデル。


当時のメインマーケットだったアメリカやオーストラリアからの要望を多く取り入れて開発されました。


悪路での走破性を考えて作られてきたランドクルーザーでしたが、実際のアメリカでは街乗り用に使う人がほとんどという実態がありました。車体が大きく使い勝手の良いランドクルーザーは、家族全員を乗せて移動するSUV的な用途に広く用いられていたというわけです。


しかし、本来のクロスカントリー車の性能が忘れられていたわけではありません。ランドクルーザーは1996年、世界で最も過酷といわれるパリ・ダカール・ラリーの市販車無改造クラスで優勝を収めます。


当時のラリーでは、アフリカの広大な大地をほとんど誰の助けもなく走り抜けることが求められ、そこには高い信頼性と耐久性が欠かせません。そんなレースに市販車無改造クラスで参戦し、優勝したことでランドクルーザーの性能の高さが改めて認識されることに。


ランドクルーザーは1996年の後も、1998から2003年と2005年から2011年にかけての6連覇を2度、2014から2017年までの4連覇を達成して圧倒的な強さを見せつけています。


1998年には、80系に替わる「100系」ランドクルーザーがデビュー。さらにラグジュアリー性を高めたモデルで、日本では「オフロード界のセルシオ」と呼ばれることも。


しかし、走破性能と信頼性、耐久性は依然として高いままで、国連が活動用車両として採用したのも、その性能の高さが評価されたものであるといえます。


快適性とハンドリングの良さを向上させるために、100系では前輪に独立懸架式サスペンションが用いられていました。しかし、依然として要望の多い悪路での走破性を高めるために、従来と同じリジッドアクスルを採用した派生モデル「105系」が登場していたのも、ランドクルーザーらしいエピソードといえます。


独立懸架式サスペンションの導入で走破性能が下がったかに見えたランドクルーザーでしたが、トヨタでは油圧式で車高を変化できるサスペンションや、4輪制御式のトラクションコントロール機能を投入することで、高い悪路走破性能を確保してきました。


2002年には、近赤外線による夜間の視界確保を目的とした「ナイトビュー」がオプション設定されるなどの改良も加えられています。


その後の2007年には、記事作成時点で現行型となる「200系」ランドクルーザーがデビュー。従来から受け継いできた走破性はそのままに、内外装をさらに豪華にレベルアップしたモデルです。


走破性アップのために、さまざまな電子制御デバイスが投入されているのも特徴の一つ。急坂路など微妙な速度調節が必要となる路面状況で、エンジンとブレーキを自動制御して極低速を維持して車両安定性を実現する「クロールコントロール」を世界で初めて搭載。


クロールコントロールは、4輪を個別に制御して最大限の駆動力を生み出すことが可能。そのため、砂地やぬかるんだ路面から抜け出す時にも威力を発揮します。


内外装の品質が高められた200系ランドクルーザーですが、そのオフロード性能はまだまだ高いところにあります。ランドクルーザーはその生い立ちから備わってきた本格的クロスカントリー車としての特徴を今なお残しつつ、都会でも使える高級SUVとして発展してきたというわけです。

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in 乗り物,   動画, Posted by darkhorse_log

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