「コーヒーカップのフタ」の世界にはこんなにも多様性とクリエイティビティが詰まっている

by Andrew Huff

デザイナーのLouise Harpman氏と建築家のScott Specht氏の共通点は「コーヒー通」であることですが、2人は単にコーヒーを飲むのが好き、というのではなく、コーヒーカップのフタの収集家であるというのがユニークな点。ついには「Coffee Lids: Peel, Pinch, Pucker, Puncture」というコーヒーカップのフタについての本を出版するまでになった2人が、コーヒーカップのフタの歴史と魅力について語っています。

Decoding the Design History of Your Coffee Cup Lid - Gastro Obscura
https://www.atlasobscura.com/articles/coffee-lids-design-history

ファストフードが人気を集め、ドライブインの仕組みができた20世紀中頃、熱々のドリンクを持ちかえる人々は1つの問題にぶちあたりました。熱い飲み物がこぼれないようにとカップにフタをしていると、飲み物が飲めないのです。困ったコーヒー愛好家たちが、やむを得ずポリスチレンのフタを一部カットしたことで「飲み口つきのフタ」が発明されました。

それからというもの、デザイナーたちは「飲み口つきのフタ」をさまざまなデザインで作り出してきました。

Harpman氏によると、そのまま飲み物が飲めるタイプのフタが北米で一般的に見られるようになったのは1980年代初頭、Harpman氏が大学生の頃でした。コーヒーショップによってフタの種類が違うことに気づいたHarpman氏は、新しいタイプのフタをお店で見つけると、コーヒーを注文するしないに関わらず持って帰るようになったとのこと。コーヒーのフタの魅力は、機能とデザインが密接に結び付いていることにあるといいます。

一方でSpecht氏は、当初、自分のことを「収集家」だとは思っていませんでした。「美しいな」と思ったフタを見つけると持って帰るという程度だったのですが、コーヒーのフタを通したさまざまな試みを見ているうちに「なぜこんなにも種類があるのだ?」ということが気になり、今ではベッドの下にコーヒーのフタで満たされた箱をしまい込むようになったそうです。

Specht氏は「1つのプロダクトやオブジェクトが短期間で進化し多様性が生まれる」ということに魅せられており、コーヒーカップのフタはまさにその1つの例だといいます。コーヒーカップのフタ以外には、持ち手の形や角度、ブラシ部分のサイズや使っている素材が多岐にわたる「歯ブラシ」も同様の歴史を持っています。

2人によると、コーヒーカップのフタのカテゴリは、「開発された順」に分けられるそうです。最初のカテゴリは、コーヒーを飲む人がDIYで穴を開けたフタで、2人はこれを「ピール(皮むき)」タイプとしています。このピールタイプのフタの中には穴がありませんが、「ここに穴を開けるといいよ」ということを示す部分が記されたものも存在します。


これもピールタイプの1つ。


フタのデザインが大きく改良されたのは1980年代に入ってからで、「ピンチ(つまみ)」タイプや「パンチャー(穴開け)」タイプといった、今では見ることが少なくなったさまざまなタイプが登場しました。現在は人間工学に基づいた以下のような「パッカー(しかめ顔)」タイプがアメリカでは多いとのこと。


別のパッカータイプのフタはこんな感じ。


マクドナルド・コーヒー事件の後には、フタに「注意 熱いので少しずつ飲んでください」という文字を刻むメーカーもあったそうです。


近年はホイップクリームやフォームミルクを山盛りにした飲み物が流行したことから、フタの下にスペースが余分にあるタイプが増えています。また、今後は生分解性プラスチックや、飲み物の熱さの影響で色が変わるプラスチックのような新素材がカップのフタとして使われていくことも考えられるとのこと。顔のようなデザインのフタも増えていることから、「飲み物を飲む」という体験にひと味加えるような試みが行われていくことが考えられます。

再利用可能な「KeepCup」のフタはこんな感じ。


真ん中に1つ穴を開けることで、コーヒーのアロマを集中させるデザインになっているフタも考案されています。


「お気に入りのフタはありますか?」と尋ねられたHarpman氏は「選べません!フタにはそれぞれの個性があります」と答えました。一方でSpecht氏は狂気を感じさせるものが好きとのことで、「穴を開けた時に中の液体が飛び散らないデザイン」を突き詰めて特許まで取得したPhilip Cupをお気に入りとして挙げました。

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in デザイン,   , Posted by logq_fa