GoogleがHTCのスマホ開発チーム買収を完了、Appleを追い垂直統合モデルを推進中
GoogleがHTCのスマートフォン開発部門の部分的買収を完了したと発表しました。Googleスマートフォン「Pixel」シリーズを開発するチームを手中に収めたことで、Appleと同じくソフトウェア・ハードウェアの開発をすべて自社で手がける「垂直統合モデル」の構築に向かってさらに加速すると予想されます。
Welcoming new teammates from HTC to our hardware organization
https://www.blog.google/topics/hardware/welcoming-new-teammates-from-htc/
Google Bets a Billion Dollars More Brains Can Help Take On Apple - Bloomberg
https://www.bloomberg.com/news/articles/2018-01-30/google-is-designing-more-in-house-phone-chips-to-take-on-apple
Googleは2017年9月にHTCのスマートフォン開発部門の一部を買収することでHTCと合意に達したと発表しました。この「一部」とはGoogleの自社スマートフォン「Pixel」シリーズを開発するチーム。Googleはこれまで自社スマートフォンのPixelシリーズの製造をHTCに委託していましたが、Pixel開発チームをそのまま丸ごと買収することで、自社で開発を完結させるられるようになったというわけです。
GoogleがHTCのハードウェア部門を買収、スマホなどハードウェア強化が鮮明に - GIGAZINE
2018年1月30日、この買収が完了したことがGoogleから正式に発表されました。HTCの技術者約2000人がGoogleに移籍し、開発拠点は台湾に置かれます。
Pixelチームを正式にGoogleに受け入れたことについて、Googleのハードウェア部門上席副社長のリック・ロステロフ氏は、「Googleのハードウェア事業は3年目を迎えますが、引き続き長期的視点での組織構築と投資を継続していきます。新しいチームメイトとともに、GoogleのAI技術、ソフトウェア、ハードウェアを最良の形で融合させることで、世界中の人に役立つ革新的な体験の創造という使命を実現するために、進み始めます」と述べています。
Bloombergの取材に対して、ロステロフ氏は「顧客のために限界を超えるには、あるケースで垂直統合が必要となります」と述べ、ハードウェアとソフトウェアの設計・開発から生産までの工程をすべて自社で完結させる垂直統合モデルを長期的に構築するために投資を続ける計画を明らかにしています。
スマートフォンなどでの垂直統合モデルとして最も成功しているのはAppleであることは間違いありません。そのAppleは、すでにiPhone・iPadなどのApple製品専用のSoCを自社開発しており、今後はMacなどのPC製品向けの半導体をも自社製に切り替えていく方針であることが報じられています。
Appleが着々とチップ開発力を増強中、Intelは大口顧客を失う可能性大 - GIGAZINE
これまで本業の広告事業をベースに、ソフトウェア・クラウドサービスなどに進出してきたGoogleですが、HTCのPixelチーム買収によって、ハードウェア製品の主役ともいうべきスマートフォンの設計・製造ノウハウを得ることで、ハードウェア製品全般における垂直統合モデル構築へと事業を展開していくことが予想されています。その過程でAppleと同じく自社製SoCなどの専用チップ開発もGoogleが視野に入れているのは想像に難くありません。
とはいえ、iOSエコシステムのハードウェアを自社のみで提供するAppleと違い、GoogleはAndroidエコシステムでSamsungやHuaweiなどの他社と共存することでモバイル部門を成長させてきたという、根本的な違いもあります。GoogleがPixelシリーズを自社で製造・販売することは、他のAndroid端末を提供するメーカーにとって脅威になることは確実です。2016年に100万台だったPixelスマートフォンの販売台数は、2017年には150万台に増加しているとのこと。しかも、PixelシリーズはAppleのiPhoneに対抗する製品であり、最も収益性が高いプレミアムモデルであることから、Pixelシリーズに対する他メーカーの警戒心は想像以上に高そうです。
ロステロフ氏はBloombergに対して「中国には、とてつもなく魅力的なスマートフォン市場があるのは明らかです。将来的に中国に戻ることに関心があるのは確かです。ただし、Googleにとってあまりに複雑な問題でもあり、具体的な計画や議論があるわけではありません」と述べており、中国市場へのPixel進出の可能性を残しています。
スマートフォン市場で8割のシェアを持つAndroidの将来は、垂直統合モデルを加速させるGoogleの動向に大きく左右されるのは間違いなさそうです。
・関連記事
Googleが開発する謎の第三のOS「Fuchsia」、UIがどんなものか分かる画像&動画が公開される - GIGAZINE
Googleはモバイル端末に人工知能を組み込み「関係性」を理解できる専用チップ開発を計画している - GIGAZINE
GoogleがMotorolaを買収、端末メーカー獲得でAndroidの進化がさらに加速へ - GIGAZINE
Googleが「Motorola Mobility」のスマートフォン事業をレノボに売却 - GIGAZINE
自分の好きな機能のパーツを組み合わせてスマホを作るGoogleの「Project Ara」が開発中断 - GIGAZINE
Amazonのジェフ・ベゾスCEO入魂の「Fire Phone」はなぜ失敗したのか? - GIGAZINE
・関連コンテンツ