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Googleが2020年までに「ロボットの完成」を目指す、しかし開発組織は迷走気味の様相


Googleが数々のロボット企業を買収してロボット開発を手がけていることがすでに報じられており、買収した企業の数はおよそ10社にものぼっているといわれています。そんなGoogleは2020年までに一般向けの商用ロボットを発表して今後のロボット開発の礎としたいと考えているようですが、肝心の開発チームを率いていた人物が突如そのポジションを離れるなど、思い通りには進んでいない側面があることをBusiness Insiderが報じています。

What's going on with Google robotics - Business Insider
http://www.businessinsider.com/whats-going-on-with-google-robotics-2015-11

2013年ごろ、Googleはおよそ10社にのぼるロボット関連企業の買収を進め、社内に新たにロボティクス部門を設置したことを発表しました。社内的に「Replicant(レプリカント)」と呼ばれるこの部門は、2020年までにコンシューマ向けロボットを登場させることを狙って設置されたものだったのですが、2015年時点での現状は当初の思惑から外れて思い通りに物事が進んでいないという状況にあるようです。

レプリカントは、Googleの親会社である「アルファベット」に属する独立した組織として存在しています。しかし、2014年に組織の中心的存在だったアンディ・ルービン氏がその職を辞して以降はリーダー不在となっており、ルービン氏自身がうち立てた「フィジカルな世界と交流できるコンシューマー商品」の先駆けを作るという目標の達成方法を見つけられない状態が続いているとのこと。


ルービン氏はBusiness Insiderの質問に対し、レプリカントを去る時点で「戦略はすでに決まっていた」と、進むべき道が定められていたとのコメントを返していますが、現実には各ロボット企業はバラバラといえる状況になっているといいます。レプリカントに所属するメンバーの一人は「個々のロボット企業が持つ個別のテクノロジーは素晴らしいものですが、進むべき方向と集中すべきポイントを明確に定めてコミットすることがなによりも必要です」と、自分たちがおかれている状況を語っています。

ルービン氏が去ったあとのレプリカントに対し、Googleではルービン氏を引き継ぐリーダーの人選を進めてきましたが、豊かなロボット関連の知識と鋭いビジネス感覚を兼ね備えた人物を見つけるという作業には、かなりの困難が伴っている模様です。

◆ルービン氏が立ち上げた「レプリカント」
レプリカントの存在、そして今置かれている難しい状況は、ともにルービン氏の存在に密接に関わっているといいます。ルービン氏は2005年、自身が率いていた企業「Android」の買収とともにGoogleに加入し、それ以来は世界中に普及しているAndroidスマートフォン事業の中心人物としてビジネスに関わってきました。

そんなルービン氏でしたが、2013年12月にAndroidチームからの離脱を発表し、Googleのラリー・ペイジCEOの意向を受けてGoogleの新たなロボティクス部門を任せられることとなります。ペイジ氏はロボットに関心を持っていることで知られており、自身の誕生パーティーで参加者に渡すギフトとしてロボットアームを選んでいたこともあるほど。Googleが進めるべきロボット開発の方向性を示していたとのことですが、部門の運営は事実上ルービン氏に一任されている状態になっていたそうです。


ロボット部門の運営に際し、ルービン氏は数々の企業の買収を進めます。その中には日本のロボット開発企業である「SCHAFT(シャフト)」や4本脚ロボットの開発で知られる「Boston Dynamics(ボストン・ダイナミクス)」といった名だたる企業が含まれていました。ルービン氏がチームに宛てたといわれるメールの中でルービン氏は「2020年までに、一般消費者向けのロボットテクノロジーを開発し、発売すること」とゴールを設定していました。


◆ルービン氏の突然の辞任と、残されたチーム
しかしルービン氏は2014年10月、レプリカントを去って自身が立ち上げたハードウェア系スタートアップのインキュベーター(起業支援者)としての事業に専念することを発表。ペイジCEOはこの離脱について好意的なコメントを残していましたが、レプリカントの内部では大きな混乱が起こることとなりました。

ルービン氏の後を受け継いだのは、レプリカントの創業者の一人でもあるジェームズ・カフナー氏だったのですが、カフナー氏はクラウドベースのヒト型ロボティクスの専門家ではあるものの、ルービン氏のような商品開発の経験は持ち合わせていなかったとのこと。


また、ルービン氏が買収を進めた各企業からも混乱の声が挙がります。ルービン氏が示したビジョンに賛同する形でレプリカントに参加した経緯を考えると、生じた混乱は当然ともいえるもので、メンバーの一人は「この部門は大きな被害に遭った」とインパクトの大きさを語ります。ルービン氏は、自身が買収した企業にとってルービン氏の離脱劇は「おそらく大きな驚きだっただろう」と語っています。

ルービン氏が去ったレプリカントでは、それぞれの企業をまとめるだけの人材が不在の状態が続いたとのこと。ルービン氏は、目指すべきゴールは示していたのですが、チームにはそこに至るロードマップや全体を率いる先導役が見つからない状態が続きました。


カフナー氏はしばらくのあいだ組織を率いてきましたが、2015年初頭に辞任。その後はGoogleのジョナサン・ローゼンバーグ氏がその任を引き継ぐことになりました。ローゼンバーグ氏はGoogleの古株といえる人物で、Googleが買収していたモトローラ社を率い、当時のGoogle会長だったエリック・シュミット氏のマネジメントに関する書籍をまとめた人物でしたが、やはりレプリカントをまとめ上げるには至らず、ほどなくして辞任。Googleではその後も人選を進めているとのことですが、ルービン氏に代わる人物を据えることはかなりの困難を伴う仕事の様子。Googleでかつて高いポジションに就いていた人物はレプリカントをまとめ上げるポジションについて「絶対にやりたくない」と断言しているほどです。

◆続けられるロボット開発と今後の展望
それでもなお、ロボット開発は継続されています。その難しさについてBusiness Insiderは「コンピューターが『人類が開発した最も複雑なもの』であるとすれば、ロボットはそれをさらに上回る複雑なもの」としており、ソフトウェア・ハードウェアの両面で非常に精密な技術が求められる分野であることを語っています。

Googleでは数々の実験を繰り返しており、そこには製造の厳しい現場や家庭の中、物流の現場などで人の補助を行うロボットの開発が進められているとのこと。チーム内部の人物によると、Googleはこれから徐々に開発の成果を形にし始める段階に来ているようです。


また、Googleがロボット業界に与えた影響も決して小さくはないものとのこと。ロボット技術の開発には時間がかかるため、どうしても短期の成果を求める企業にとってはなかなか手の出せない分野といえます。しかし、Googleがかじを取ってロボット開発の分野を開拓することで、業界全体が活性化するという効果があったと内部の関係者は語っています。

しかし、本当の正念場といえるのはここから先の進み方といえるのかもしれません。かつてボストン・ダイナミクスに所属していた元スタッフは「レプリカントの上部にたつAlphabetがロボット事業の収益化に満足のいく成果を出せず、所属する企業が低迷し始めると、市場に対して悪いメッセージを送ることになります。うまく事が進むといいのですが」と、不安げな様子でコメントしています。

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in メモ,   ハードウェア, Posted by darkhorse_log

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