鶏肉そっくりの味で食料危機を救うかもしれない謎の食べ物「マイコプロテイン」とは?
by jules
世界的な人口増加により、これまでの食事のあり方を見直す時期に来ていると言われています。新しい食事の手段として3Dプリンターで出力する方法のほか、完全栄養食「ソイレント」なども出現していますが、1980年代から開発されていた「マイコプロテイン」もその1つです。
What Is Mycoprotein?
http://www.quickanddirtytips.com/health-fitness/healthy-eating/know-your-nutrients/what-is-mycoprotein
マイコプロテインの「マイコ(myco)」は菌やキノコの意味ですが、マイコプロテインはキノコではなく「Fusarium venenatum」と呼ばれる糸状菌です。マイコプロテインは1980年代にイギリスで「将来的に世界規模の食糧危機が起こるのではないか」という懸念から、増加する人口を支えるタンパク源として開発されました。研究者らが試行錯誤を繰り返した結果、ブドウ糖やその他の栄養素を養分とすることで、パン生地ほどの生物量でタンパク質と食物繊維が豊富なマイコプロテインの開発に成功しています。その質感は鶏肉によく似ていて、しかしわずかにマッシュルームのような香りがあるとのこと。
現在商品として扱われているマイコプロテインはQuornによるものが有名。
Language Selector | Quorn
https://www.quorn.com/
基本的にQuornの製品には質感をよくするため卵や乳タンパクが使われていますが、ビーガンやグルテンを摂取できない人向けの製品も作られています。マイコプロテインを使った料理の一例はこんな感じ。
スライスされるとハムっぽい雰囲気です。
2011年に非営利組織の公益科学センター(CSPI)は「マイコプロテインを食べた消費者におう吐や下痢といった反応が報告された」としてその安全性について疑念を呈しています。CSPIはアメリカ食品医薬品局(FDA)に対してマイコプロテインに「潜在的危険性がある」というラベルを貼ることなどを義務づけるよう求めましたが、最終的にFDAはCSPIの申し出を却下しました。
マイコプロテインはキノコや菌類にアレルギーを持つ人や、大量の食物繊維を取るとお腹を壊す人であれば避けるべき食べ物ですが、ヨーロッパで数十年にわたって販売された歴史を持ち、しょうゆを含む食べ物に関して報告された問題よりも問題の報告は低い割合だとのことです。
含有するプロテイン量について言うと、3オンス(約85g)のマイコプロテイン肉に含まれるタンパク質は10~12g。これは同量の鶏肉に含まれるタンパク質量の半分ほどですが、卵や豆腐よりも高い割合でタンパク質を含んでいることを意味します。大豆などの植物性タンパク質は、動物性のタンパク質よりも含有するタンパク質の量が比較的少ないのですが、マイコプロテインは大豆食品よりもカロリーあたりのタンパク質量が多いのです。
一方で、タンパク質の量と共に重要なのが、タンパク質の質。これはアミノ酸スコアで評価されるところ、マイコプロテインは必須アミノ酸を9種類全て含んでいるとのこと。牛肉の半分ほど、豆腐の約2倍、卵と同程度の必須アミノ酸を含んでいます。
by Brina Blum
また、マイコプロテインの特徴としては、植物繊維が豊富であることが挙げられ、85グラムあたり5グラムの植物繊維を含んでいます。植物繊維はコレステロールを低くすることに役立つと考えられているため、マイコプロテインはコレストロール関連の研究者らからの注目も浴びているそうです。
もちろんタンパク質はさまざまな食べ物から取るべきではありますが、人口増加に伴いお肉の需要が増え動物性タンパク質が貴重になった将来、マイコプロテインが重要なタンパク質として活躍する日がくる可能性も否定できないわけです。
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