あなたの家のどの部屋に最も多く虫がいるのか?
By Scott Webb
ノースカロライナ州立大学とカリフォルニア科学アカデミーの昆虫学者による研究チームが、自然科学と臨床科学のあらゆる領域を対象としたオープンアクセスの電子ジャーナルScientific Reports上で発表した論文によると、我々人間が暮らす家は、地下室に潜んでいたりキッチンの床を横切ったりカーペットに潜んだりしている虫にとって十分快適な環境であり、いかにきれいに整理整頓していようと、家の中の至る所にさまざまな種類の虫が生息しているそうです。
The Habitats Humans Provide: Factors affecting the diversity and composition of arthropods in houses | Scientific Reports
https://www.nature.com/articles/s41598-017-15584-2
Which room of your house has the most bugs? - The Verge
https://www.theverge.com/2017/11/12/16632320/bugs-insects-spiders-indoors-house-living-room-kitchen
研究では、ノースカロライナ州ローリーにある50軒の家から、生死に関わらず1万匹以上の虫が収集されました。収集された虫のうち、約47種類はセイヨウシミ・本シラミ・ミバエ・てんとう虫といった、多くの家で発見できる無害なものだったそうです。それに対して、南京虫・シロアリ・ノミといった害虫は珍しいものであることがわかったそうです。
以下の写真は調査の中で最も多く見つかった虫5種類のもの。
A:カツオブシムシ、B:ヒメグモ、C:クロバネキノコバエ、D:アリ、E:タマバエ
屋外にアクセスできるカーペットの敷かれたリビングルームには、他の部屋よりも多くの種類の虫が生息しているそうです。これにはいくつかの理由が考えられます。一般的に、リビングルームは共有のバスルームよりも大きくなる傾向があるため、虫が生息する空間が他よりも多く存在することとなります。そして、外とつながる扉や窓などが他の部屋よりも多く存在するため、より多様な虫が生息する空間になりがちであるとのこと。リビングルームに敷かれているカーペットは何とも説明しがたいもので、この中に多くの虫が生息しており、その表面の繊維にからまったまま死んでいる虫も多くいるそうです。
サンプルとなった50軒の家の住民は家の中に置いている植物や飼っているペットについての調査を受けており、この調査結果をもとに研究者は各家の汚れ具合を採点しているのですが、研究者によると「家の清潔さ」は「家の中で発見された虫の種類の数」に大きく関わっていないとのこと。それに対して、ペットを飼っていることは清潔さ以上に重要な要素であるようで、犬を飼っている家よりも猫を飼っている家の方が、家の中で収集される虫の種類が少なかったそうです。ただし、この結果については信頼できる結論を出すにはサンプル数が少なすぎるとのこと。
By tab2_dawa
今回の研究は同じ地域にある50軒の家をサンプルとした調査であったため、異なる地域や異なる季節でまた別の結果が出てくる可能性は大いにあります。そこで、研究チームは調査範囲を6つの大陸にまで拡大し、さらなる調査を進めている段階です。また、研究ではサンプルとして家の調査を許可した人たちが「研究者が調査のために家を訪れる」ことを知っていて、その前に家の中を軽く片付けた可能性もあるとしており、そういった行為が家の清潔さと発見された虫の種類の間にある関係性をゆがめてしまっている可能性がある、ともしています。
それでも調査結果が示す通り家の中には清潔・不潔に限らず多種多様な虫が生息していることは明らかで、今回の研究結果はそういった虫についてより理解を深めるための第一歩になるといえます。ただし、今回の調査は「家の中に生息する虫の種類」についての調査であり、「家の中に生息する虫の数」についてのものではない点には十分に注意が必要です。
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