取材

約100年の歴史を終えつつある留萌本線を見に行ってきた【深川~留萌編】


「日本一の秘境駅」と呼ばれる小幌駅炙ったスルメをかじりながら流氷を見られる「流氷ノロッコ号」雪の湿原を蒸気機関車が走り抜ける「SL冬の湿原号」とJR北海道をいろいろと利用しているのですが、残念ながら経営状況は「芳しくない」という表現では足りない厳冬状況にあり、2016年11月18日に発表された「(PDF)当社単独では維持することが困難な線区について」によれば、JR北海道単独で維持可能な線区が11線区・1150.7kmだったのに対して、「維持することが困難」として挙げられたのが13線区・1237.2kmにも上ります。

この「維持困難な線区」の1つが、深川市と留萌(るもい)市・増毛(ましけ)町を結ぶ「留萌本線」です。留萌・増毛間は2016年12月4日をもって廃止されることがすでに決定済みで、残った深川・留萌間もバス等への転換が検討されることになっています。


今回、まだ深川・留萌間がこのようなことになるとは知らない段階で、増毛まで行く機会があって写真を撮ってきたので、留萌本線の姿を残すべくまとめてみることにしました。

留萌線(留萌・増毛間)の鉄道事業廃止届の提出について - JR北海道
(PDF)http://www.jrhokkaido.co.jp/press/2016/160428-3.pdf

当社単独では維持することが困難な線区について - JR北海道
(PDF)http://www.jrhokkaido.co.jp/press/2016/161118-3.pdf

今回は現地での撮影や移動の都合上、レンタカーを使うものの、できるだけ鉄道移動の雰囲気を味わうべく、増毛までは近いスケジュールで移動することにしました。

留萌方面行きの一番列車は深川駅を5時44分に出ます。札幌からこの時間に間に合う列車はないので、乗りたいなら深川市で一軒だけのビジネスホテルに泊まるか、旭川に泊まって5時18分発のスーパーカムイ2号に乗車することになります。ということで、早朝の旭川駅。本当はスーパーカムイの発車を見届けたいのですが、鉄道だと約20分のところを車だと約50分かかるということで、先に出発します。


◆深川駅
深川駅に先回り。


スーパーカムイに挟まれる増毛行き。


駅では廃止に合わせて、留萌本線の歩みがパネル展示され……


硬券入場券が販売されていました。


運賃表。札幌・深川間が2160円、深川・旭川間が640円、深川・留萌間が1070円、深川・増毛間だと1450円。


入場券を買って駅の中へ。すでに向かいのホームに増毛行きが待っていました。


跨線橋を渡って4番ホームへ。


発車を待つ増毛行きのキハ54形。


駅の発車時刻表を見ると朝から晩までおよそ1時間に3本の列車があるように見えますが、留萌方面は右端だけ。


一部の普通列車には、途中駅を通過するものも。


やがて、スーパーカムイ2号がやってきました。


5両編成で、この時間でも乗り込む人の姿がちらほら。さすがに下車する人はいませんでした。


ここから留萌本線は一路北西へ、留萌市を目指していきます。この列車は普通列車ながら通過駅の多い列車なので、遅れないように追走することにします。


◆深川留萌自動車道
道央道の深川JCTから分岐する形で、留萌方面まで「深川留萌自動車道」が作られています。最初のICである深川西ICまでは有料ですが、深川西ICから先は無料で国道233号バイパスとして利用できます。


車窓からちらっと見えた石狩沼田駅の手前あたりにある留萌本線の鉄橋。


深川留萌道は留萌ICまでが建設予定ですが、まだ最終区間は建設中なので、その1つ手前の留萌大和田ICで降ります。


◆大和田駅
留萌大和田ICからちょっとのところに大和田駅があるので、立ち寄ってみました。待合室は貨車を再利用したもの。


中はかなり老朽化していました。


大和田駅から留萌駅までは約6分かかります。車だと約12分(5.9km)。


ベンチに置かれた駅ノート。


プラットホームは駅敷地からそのまま区切りなく非舗装で続いていました。


深川方向はこんな感じ。写真右側に見える青い看板の下を国道が走っています。


待合室と留萌方面はこんな感じ。


なお、この大和田駅のあたりを過ぎてすぐ、深川留萌道の高架が見えます。


◆留萌駅
深川駅前から約1時間で留萌駅に到着です。


駅構内ではKAZUMOちゃんが待ち構えていました。


留萌は数の子が有名。


深川駅で離れた列車に再会。


留萌駅では、増毛方面から来た列車との行き違いが行われます。


増毛方面から来た列車には「快速」の表示が。


しかも2両編成でした。


しかし、前の車両には「普通」の表示。


跨線橋から見るとこんな感じ。


跨線橋内にあったのりば案内。おそらく、「増毛方面行きは1番線、深川行きは2番線」のように固定されていないので、列車が来るたびに点灯して知らせる方式なのだと思いますが、このときは両方停車しているにもかかわらず点灯はしていませんでした。すでに使われていないのかも。


駅舎内には深川駅と同様、留萌駅~増毛駅の歴史が展示されていました。


こちらはさらに詳しく、各駅の紹介も。


留萌本線ではNHK連続テレビ小説「すずらん」の撮影が行われたそうで、タイアップ企画として運行された「SLすずらん号」のエンブレムが飾られていました。


そして「さよなら『増毛線』」写真展も。


SLすずらん号のほか、春の風物詩だった「増毛ノロッコ号」の写真も。


こちらは留萌市教育委員会提供の「懐かしの留萌本線」。


留萌本線は1910年(明治43年)11月23日に深川・留萌間が開通、続いて1921年(大正10年)11月5日に留萌・増毛間が開通しました。その、今から約100年前の留萌の姿がこんな感じ。


留萌から増毛に向かう途中には断崖が嘴(くちばし)のように突き出た部分があり、鉄道は阿分隧道で崖を貫き、道路は桟道を設けて阿分の漁村の方へ回り込んだそうです。


終点の増毛駅。増毛はニシン漁で有名な町でした。


なんとなく現在と通じた雰囲気を感じる「留萌停車場」。


停車場全景はさすがに今とは異なります。


この広い停車場は、現在は大半が「船場公園」として整備されています。


もともとは留萌本線のほかに、留萌駅と宗谷本線・幌延駅を結ぶ羽幌線という路線がありましたが1987年3月30日に廃止となっています。


広大な公園。右手奥の緑色の建物が留萌駅。


公園に沿って新たな道路が作られていました。


ゆったりとしたカーブは廃線跡という感じがしますが、羽幌線の廃線跡は交差点の手前あたりからもうちょっと北側(写真右側)に曲がっていきます。


留萌市内で見かけた沿岸バスは、公共交通機関としての留萌本線の最大のライバル。特急はぼろ号は、高速道路経由のものが1日5往復。さらに、札幌から増毛経由で留萌・羽幌までを結ぶものが1往復で、運賃は留萌まで片道2370円です。


JR北海道ではこの区間が札沼線(北海道医療大学駅・新十津川駅間)、根室線(富良野駅・新得駅間)と合わせて営業係数(収入を100としたときの支出)が1000を越えた路線なので、バスなどへの転換を考えているとのこと。深川留萌自動車道が2019年には全通予定であり、一方で留萌本線を維持するためには通常経費のほかに老朽土木構造物の維持更新費用として今後20年間で30億円程度が必要だとのことなので、もはやこの流れを変えるのは難しそうです。


ここから先は、すでに廃止が決まった区間の留萌・増毛間です。

・つづき
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in 取材,   乗り物, Posted by logc_nt

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