外部動力を必要とせず半永久的に動き続ける高級置き時計「ATMOS(アトモス)」

一般的に時計を動かすには電源を用意したりゼンマイを巻き上げたりといった作業が必要ですが、そういった人の手助けを必要とせずに動き続けることができる時計が、高級時計マニュファクチュール「ジャガー・ルクルト」の「ATMOS(アトモス)」シリーズです。

The Value Proposition: The Amazing, Incredible, And Semi-Affordable, Atmos Clock From Jaeger-LeCoultre
https://www.hodinkee.com/articles/the-amazing-incredibly-affordable-atmos-clock-from-jaeger-lecoultre

人の手を介さずに動き続けることができるという、まさに「永久機関」とも言えそうな時計がアトモスです。代表的なアトモスの見た目は一般的な置き時計とよく似ていますが、盤面の下にぶら下がる円筒状のバランスホイール(「振り子」に相当する機構)が外見上の特長の1つ。また、盤面に隠れている部分にも独創的な機構が収められています。

装置を横から見るとこんな感じ。向かって左側が時計針のある盤面で、右にはカプセル状の大きな装置が配置されており、これがアトモスの動力を生みだす重要な機構となっています。

アトモスが動く仕組みは次のとおり。カプセル内には塩化エチレンガスが充填されており、周囲の気温の変化を受けてカプセルを膨張または収縮させます。カプセルの表面には短いチェーンが取り付けられており、カプセルの動きを上記写真の左下にある金色のメインスプリングに伝えて動力を蓄えるようになっています。このため、アトモスは別名「空気時計」とも呼ばれており、その名前は「気温」を意味する英語「Atmospheric Temperature」から付けられています。

このようにして蓄えられた動力をバランスホイールの回転でコントロールするというわけなのですが、その動きも非常に特徴的です。振り子式の置き時計といえば上からつり下げられたペンデュラム(振り子)が左右に揺れ、1秒で1往復するものがほとんどですが、アトモスの場合は回転式のバランスホイールがおよそ1分かけて左右に回転を繰り返すという仕組みになっています。そのためアトモスは秒針を持たず、分針と時針だけの表示となっています。

温度変化を動力源としているアトモスは、わずか1度の温度変化で48時間分のエネルギーを蓄えることが可能となっており、非常に高い省エネ性を備えた時計ということもできます。一方で、時間を刻む時計としての精度はあまり高くないようで、実際にアトモスを持っている人のページによると1日で10分程度の狂いが生じることもあるとのこと。あくまで、特徴的な機構と高度な職人の技術、美しい装飾やデザインを楽しむためのタイムピースとして所有することがアトモスの魅力といえそうです。

他にも、このようにキレイな青いガラスで作られたアトモスや、要望に応じて高度な装飾が施されたオーダー品を注文することも可能になっています。

実際にアトモスの機構を観察しているYouTube動画が公開されているので、機構をよく理解することができるかも。

How to Start Jaeger LeCoultre Atmos Clock - YouTube


以下の日本語ページでも、アトモスのカプセルとメインスプリングの動きなどが詳細に解説されています。

ATMOS（アトモス）っていう時計について少しだけ・・・ : TANAKA WATCH NEWS
http://blog.livedoor.jp/tanaka_watch_news/archives/3705614.html

ちなみに、ジャガー・ルクルトのサイトによるとアトモスの価格は日本円で80万4600円からとなっています。

アトモス | ジャガー・ルクルト