ハードウェア

スマホが2倍長持ちするMIT発のバッテリーが2017年にも実用化へ


MITからスピンアウトしたスタートアップ「SolidEnergy」が、従来比でエネルギー密度が2倍のリチウムイオンバッテリーを開発しました。すでに、iPhoneのバッテリーの半分の大きさで同等以上の出力を持つ試作バッテリーを完成させており、量産化の道も開けていて2017年にスマートフォン市場に投入される予定です。

SolidEnergy Systems | Reinventing the Battery
http://www.solidenergysystems.com/

Doubling battery power of consumer electronics | MIT News
http://news.mit.edu/2016/lithium-metal-batteries-double-power-consumer-electronics-0817

MITでポスドクとして研究していたフー・チーチャオ氏により2012年に設立されたスタートアップ「SolidEnergy」が、同じ大きさで2倍の容量を持つ高エネルギー密度のリチウムイオンバッテリーの開発に成功し、投資家から1200万ドル(約12億円)の出資を受けて、新型バッテリーの量産化に入っています。

SolidEnergyのバッテリーは、アノード(負極)の部分に極薄のリチウム箔を用いることで、一般的なアノードに比べて5分の1の薄さを実現。これによってバッテリーの大きさを半分にすることに成功しました。当初は、80度という高温環境下でのみ機能していたこの新型バッテリーは、固体・液体のハイブリッド電解液を開発することで、常温環境下でも機能させることに成功したとのこと。なお、バッテリー寿命に関しては、従来のリチウムイオンバッテリーと同程度とのことなので、完全に大きさが半分になったリチウムイオンバッテリーということになりそうです。


iPhone 6の半分のサイズで作られた新型バッテリー(左)は、iPhone 6の1800mAhを上回る2000mAhのバッテリー容量を実現しています。


さらに、SolidEnergyの新型リチウムイオンバッテリーは、既存のリチウムイオンバッテリー製造プロセスを完全に流用して生産することが可能で、量産化の目途もたっているとのこと。

MITをスピンアウトしたスタートアップとしては、同じく高性能リチウムイオンバッテリーを開発していたA123 Systemsが知られていますが、A123 Systemsは開発するバッテリーの実用化に失敗して2012年に破産を申請。A123 Systemsの失敗によって、バッテリー開発スタートアップに対して投資家から冷ややかな目がそそがれるという悪環境の中でSolidEnergyは誕生しました。


幸いにもSolidEnergyはA123 Systemsを買収したWanxiang GroupからA123 Systemsの使っていたリチウムイオンバッテリー製造装置をそっくりそのまま貸借することに成功して、開発することができたとのこと。さらに、「既存のリチウムイオンバッテリー製造装置を使って新型バッテリーの開発を余儀なくされたことは、開発に成功した新型バッテリーが既存の設備で量産化できるという実用化にとって最終的には有利に働いた」と、フーCEOは述べています。

A123 Systemsの設備を間借りしていたSolidEnergyは、投資家からの出資金を得て、2015年にはA123 Systemsの10倍の規模の生産設備を導入。まずは2016年にドローン用のバッテリーを量産化して市場に投入することが決定しています。SolidEnergyによると新型バッテリーはスマートフォン用として2017年に実用化する予定。今後は、電気自動車への導入も視野に入れられています。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
スマホのバッテリーを20分でゼロから70%まで充電できる世界最速の充電規格「Pump Express 3.0」 - GIGAZINE

スマホのバッテリーが児童労働によって発掘されたコバルトで成り立っているという実態 - GIGAZINE

受けた電波で発電するのでバッテリー不要&ワイヤレスでプログラムの書き換えが可能なコンピューター「WISP」 - GIGAZINE

世界初の汎用ナトリウムイオン二次電池が登場、リチウム電池の代替なるか - GIGAZINE

ほぼ無限の寿命を持つバッテリーを作る方法が開発される - GIGAZINE

バッテリー密度2倍のグラフェン採用リチウムバッテリーの開発にSamsungが成功 - GIGAZINE

in モバイル,   ハードウェア, Posted by darkhorse_log

You can read the machine translated English article here.