バッテリー密度2倍のグラフェン採用リチウムバッテリーの開発にSamsungが成功
スマートフォン、デジタルカメラ、電気自動車などの高性能化は、「リチウムイオンバッテリー」の進化に負うところが大きく、今後もより高性能なリチウムイオンバッテリーの開発が求められています。そんなリチウムイオンバッテリーのエネルギー密度を1.8倍にすることに成功したとSamsungが発表しています。この技術によって従来と同サイズで電池容量が2倍のバッテリーや、従来の半分のサイズながら電池容量は同じという小型バッテリーの実用化が期待されています。
Silicon carbide-free graphene growth on silicon for lithium-ion battery with high volumetric energy density - ncomms8393.pdf
(PDFファイル)http://www.nature.com/ncomms/2015/150625/ncomms8393/pdf/ncomms8393.pdf
More Energy: Samsung Develops Tech to Double Lithium Battery Capacity | BusinessKorea
http://www.businesskorea.co.kr/article/11188/more-energy-samsung-develops-tech-double-lithium-battery-capacity
Samsungのイン・ヒュンソン氏らの開発チームは、リチウムイオン電池のアノード材料を見直すことで、従来比で1.8倍のエネルギー密度を持つリチウムイオン電池を開発することに成功したと、科学誌Nature communicationsで発表しました。
従来のリチウムイオン電池のアノードには炭素が用いられていました。しかし、シリコンをアノード素材に置き換えることでより高いエネルギー密度を持たせられると考えられており、シリコンアノードの研究開発が行われていきましたが、シリコンアノードには充放電を繰り返すことですぐに劣化してしまうという欠点があったとのこと。
イン氏らはアノード材料に用いるシリコンの表面に、炭素1個分の厚みしか持たない世界最薄の素材「グラフェン」の被膜をコーティングすることでシリコンアノードの耐久性を大幅に高めることに成功。従来比2倍もの高エネルギー密度と耐久性を兼ね備えたリチウムイオン電池の製造に成功したそうです。
これはアノード材料に用いられるシリコンを透過型電子顕微鏡 で拡大したもの。
さらに拡大すると、グラフェン層がシリコン酸化物の表面を覆っている様子が確認できます。
イン氏らによると、グラフェン被膜シリコンアノードを使ったリチウムイオンバッテリーは従来のリチウムイオンバッテリー比で1.8倍高いエネルギー密度を持ち、200回の充放電を繰り返した後でも1.5倍のエネルギー密度を保つことが確認されたとのこと。
今回のSamsungが開発したリチウムイオンバッテリーの高エネルギー密度技術は2、3年以内の実用化が期待されており、これによってより大容量・コンパクトなバッテリーが登場する見込みです。
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