サイエンス

パワーが従来の2倍になるナノクリスタルを使ったリチウムイオンバッテリーが開発される


リチウムイオンバッテリーは比較的コンパクト・軽量サイズにも関わらず大量のエネルギーを蓄えることが可能なので、携帯電話から車まで、さまざまなものに使用されますが、チューリッヒ工科大学のMaksym Kovalenkoさん率いる研究チームはナノクリスタルを電極に使用し、これまでのほぼ2倍の量のパワーになるリチウムイオンバッテリーを開発しました。

Tin nanocrystals for the battery of the future
http://www.ethlife.ethz.ch/archive_articles/130408_li_ionen_fb/index_EN


リチウムイオンバッテリーは充電すると陽極の中のリチウムイオンが陰極の中に吸収され、放電された時に陰極から放出されます。放電時、マイナスの電気を帯びた電子は外部回路を通って陽極に移動するのですが、電荷のバランスを保つために、陽電気を帯びたリチウム原子はバッテリー内の電解物を通る、というのがリチウムイオンバッテリーの基本的な仕組みです。この時、市場に出回っているバッテリーのほとんどは、陽極をニッケルやコバルト・マンガンの酸化物から、陰極を黒鉛から作っています。

しかし同研究では電極をニッケルではなくスズの結晶で作成することで、電極に従来の2倍のエネルギーを蓄える仕組みを研究。スズは最小4つのリチウムイオン原子を吸収することが可能なのですが、吸収作用によって体積が4倍にまで大きくなり、放電が終わると縮むという性質を持っているため、研究者たちはこの問題を解決せねばなりませんでした。


そこで研究チームは極小の結晶を作成し、浸透性、伝導力のある炭素基盤に埋め込んだところ、大量のイオンを吸収し放出できる物質を作成することに成功したのです。この方法で作った電極はスポンジが水を吸収するようにリチウムイオンを吸収し、放電時にはイオンを放出します。もし電極が小さなスズだけで作られていたとしたら、このようなことは不可能だったとのこと。この時、スズの結晶はできるだけ小さなものを選び、後から成長させるという方法を採用することで、結晶の大きさをコントロールすることができそうです。


実験によって10ナノメートルの結晶が最も効率であることが判明し、最終的に均一なナノクリスタルと炭素・結着剤によって従来の2倍のエネルギーをバッテリー内に蓄えることが可能になりました。今後、生産コストを下げ、安定した供給を行えるようにするため、最も効率のよく作用する炭素基盤や結着剤などの発見が注目されるところです。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
スプレーのようにシュッと吹き付けるだけでなんでもリチウムイオンバッテリー化できる技術が開発される - GIGAZINE

バッテリーの形状に革命を起こす、自由自在に曲げて問題なく使えるケーブルタイプのリチウムイオンバッテリーとは? - GIGAZINE

デスクトップPCなどが連続30時間動く大型リチウムイオン蓄電池「パワーイレ」実機レビュー - GIGAZINE

なんと10倍のエネルギー量、世界初の「空気で充電できるバッテリー」が登場へ - GIGAZINE

充電時間が最大36分の1になる画期的なリチウムイオン充電池が登場 - GIGAZINE

in サイエンス, Posted by darkhorse_log

You can read the machine translated English article here.