核廃棄物をロケットに載せて太陽に捨てるのがどれくらい難しいかわかるムービー「Hitting the Sun is HARD」
By betmari
放射性物質を取り扱う原子力発電所といった施設から発生する放射性廃棄物の処分は、多くの国で地中埋設処分という処分方法が採用されていますが、地中に埋める際に環境への影響が懸念されています。過去にはロケットで打ち上げて太陽の重力に引き寄せさせて処分させる方法が検討されましたが、不採用となりました。では核廃棄物をロケットに載せて太陽に捨てに行くのはどれくらい難しいのか、わかりやすく説明したムービー「Hitting the Sun is HARD」が公開されています。
Hitting the Sun is HARD - YouTube
地球上には向こう何千年にもわたる危険性を秘めた放射性廃棄物が大量に存在しますが、最良の処分方法というのはまだ見つかっていません。
「放射性廃棄物をロケットに載せて太陽に捨てればよいのでは?」というアイデアがありますが、これはとてつもなく難しい処分方法です。
そもそもロケットに放射性廃棄物を載せるという考え自体に危険性があります。ロケットは発射時に爆発する恐れがあり、もし放射性廃棄物を載せたロケットが爆発してしまった場合の地球に及ぼす影響というのは計り知れないものがあるからです。
しかし、実際のところは、太陽に行く行為そのものがものすごく難しいとのこと。
地球は太陽の重力により引っ張られているので、放射性廃棄物をロケットで太陽に撃ち込むのは簡単と考えるかもしれませんが、地球は太陽の周囲を一定の速度で公転しており、地球からまっすぐ太陽に向かってロケットを撃ち込んでも直撃することはありません。
地球からロケットを太陽に撃ち込むには公転速度を遅くする必要があるということになりますが、地球の公転速度を遅くする方法は存在せず。
地球の公転速度を落とせないなら、地球の公転とは逆向きにロケットを発射するという方法があります。地球の公転速度は秒速約30kmであり、ロケットを太陽に激突させるには地球の公転方向とは逆方向(逆向きのベクトル)に向かって秒速30kmでロケットを発射させる必要があります。
地球の公転方向とは逆方向に秒速30kmでロケットを発射すれば、速度が相殺されて太陽にまっすぐ飛んでいくはず。しかし、秒速30kmというのは時速10万8000kmというとてつもない速さです。
また、太陽との距離が近いほど重力は強くなります。例えば、水星は地球よりも太陽に近い位置にありますが、太陽の重力が強い分、公転速度も秒速48kmで地球よりも高速。そのため、水星からロケットを太陽に撃ち込もうと思うと秒速48kmという速度が必要であり、水星は地球より太陽に近い位置にあるのにも関わらず、ロケットを撃ち込むのは地球からよりも難しいということになります。
地球よりも太陽に遠い場所に位置する冥王星の公転速度は秒速4.7kmしかありません。つまり、ロケットの速度が遅くてもいいため、地球よりも太陽から離れた場所にある冥王星からロケットを発射する方が、難度は下がるというわけです。
もっと簡単にロケットを太陽に向かって撃ち込むには、公転速度がものすごく低くなる太陽系の外に一度出て、進行方向とは逆の方向に再噴出し軌道速度を遅くして、そのまま太陽に落とすという方法があります。
NASAは2005年の太陽調査で、地球から直接太陽に向かうのではなく一度木星にいってからスイングバイして減速し太陽に向かうという作戦を計画していました。
実際には木星ではなく金星に向かったのですが、その理由は燃料の節約にあったとのこと。
しかし、太陽にロケットを撃ち込むために、ロケットの発射速度を秒速30kmにしたり一度太陽系から出たりするということは、コストがかかりすぎるため不可能とされているそうです。そもそも、ロケットが爆発する可能性がある時点で、放射性廃棄物をロケットに載せるというのはリスクが高すぎます。
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