サイエンス

「ツングースカ大爆発」の原因となった隕石についての新研究

by John Fowler

1908年6月30日に中央シベリアのツングースカ川上流で発生した「ツングースカ大爆発」が隕石か彗星によるものだった、という点で多くの研究者の見解は一致していますが、では、なぜあのような大爆発が起きたのかという点についてはまだ謎が残されています。この点について、ツーソン惑星科学研究所の研究者が、新たな研究結果を発表しています。

From Tunguska to Chelyabinsk via Jupiter - Annual Review of Earth and Planetary Sciences, 44(1):37
http://www.annualreviews.org/doi/abs/10.1146/annurev-earth-060115-012218


BBC - Earth - In Siberia in 1908, a huge explosion came out of nowhere
http://www.bbc.com/earth/story/20160706-in-siberia-in-1908-a-huge-explosion-came-out-of-nowhere

論文はツーソン惑星科学研究所のNatalia Artemieva博士によるもので、「Earth and Planetary Sciences」第44号に掲載されます。

「ツングースカ大爆発」は日露戦争と第一次世界大戦の間、1908年にシベリアで発生しました。爆心地周辺、およそ2150平方キロメートルにわたって約8000万本の木がなぎ倒された様子はとても有名です。ちなみに、この面積は東京都に匹敵する大きさ。


幸い、人の住んでいない場所だったため犠牲者はいないとみられますが、爆発現場から1500km離れたイルクーツクでも衝撃による地震があり、立ち上ったキノコ雲は数百km先からでも確認できたとのこと。

最初の現地調査が行われたのは第一次世界大戦が終わり、ロシア革命とその後のロシア内戦の結果も落ち着いた1921年のこと。調査を担当した鉱物学者のレオニード・クーリックはこのあと4度にわたって現地調査を実施。


爆発から20年が経過しても、現地はまだ爆発時の突風の様子が明らかにわかるほどで、「ツングースカ・バタフライ」と呼ばれる、まるで蝶のような形が50kmにわたって広がっていたそうです。

クーリックは、現地調査で隕石のかけらを見つけることができず、クレーターがなかったことから、「ツングースカ大爆発」は大気圏外からやってきた彗星が大気中で爆発した可能性があると考えました。「隕石」であれば鉱物が残るのに対して、「彗星」であれば氷なので、爆発すると蒸発してしまうためです。

これはアリゾナ州にあるクレーター

by Deborah Lee Soltesz

しかし、証拠がなかったため、爆発の原因については数十年にわたって研究が続けられ、時にはSF作家から「核兵器の爆発があった」などというトンデモ意見が出てくることもありました。核爆発説は、現地調査において放射線が検出されなかったことから否定されています。

大爆発の原因が隕石であったと特定されたのは2013年、ウクライナ科学アカデミーのVictor Kvasnytsya氏が率いた研究チームが、1978年に収集した岩のサンプルから隕石由来の鉱物を発見。このサンプルが1908年の泥炭層から見つかったためです。これによって、「直径50~100mの隕石が大気中で5メガトン規模の爆発を起こした」のであろうというところまでわかってきました。

Artemieva博士が新たに発表したのは、この隕石についての情報です。通常、隕石は大気圏突入後、地表から数kmのところでバラバラになって細かい破片となり、地表に到達するまでに冷えます。

しかし、ツングースカ大爆発の原因となった隕石は、秒速15km~30kmほどの速度で大気圏に突入。もともともろい素材だったらしく、地表から8km~10kmのところで爆発してほぼ消え去ったと考えられます。このとき、細かいピースは気化し、それまで存在した運動エネルギーが熱に変換されて、化学の爆発プロセスに似たものが発生。衝撃波によって木がなぎ倒され、強い上昇気流は何百kmも離れたところからでも観測できるキノコ雲を生み出しました。

このため、Artemieva博士は、広大な面積の中からわずかな隕石を見つけ出すのは難しいものの、泥炭層の中からミリメートルサイズの隕石のかけらを見つけることが必要だ、と語っています。

ちなみに、このツングースカ大爆発のような事態を引き起こす隕石はかつては1000年に1度のもので、およそ数十mサイズの隕石が見える状態で降ってくることも100年に1度ほどだと考えられてきましたが、2013年2月にロシアのチェリャビンスクに直径約20mの隕石が落下する事件が発生。この、チェリャビンスクの隕石サイズはこれまで考えられてきた10倍は起きうると訂正され、ツングースカ級の隕石も100年~200年に1度のものと訂正されました。

まだ現時点では「彗星ではなかった」とも言い切れない「ツングースカ大爆発」の原因ですが、次に同じような爆発が起きる場所が、また人家のない場所とは限らないため、今後のためにもさらなる研究が求められます。

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in サイエンス, Posted by logc_nt

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